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「女の敵は女」を壊したい!作家・山内マリコが語る、女性同士の友情

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“女の敵は女”とは、よく聞く言葉です。女は陰湿、女同士の友情はもろい……そんなイメージもありますが、はたして本当にそうなのでしょうか? 現代女性のリアルな心情を描いてきた作家・山内マリコさんは、「そんな風潮はもう古い」と言い切ります。山内さんの新刊『あのこは貴族』(集英社)に登場する女性にも、その思いがあらわれています。主人公は、東京の上流階級で育った女性・華子。何不自由なく育ったものの、20代後半にして失恋し婚活をスタート、イケメン弁護士と出会います。もうひとりの主人公である美紀は地方出身。慶應大学を経済的な理由で中退し、夜の世界を経てIT企業へ。イケメン弁護士が美紀の“腐れ縁”の男友だちだったことから、育ちの違うふたりがめぐりあいます。結婚や恋愛についての葛藤、育ってきた街や“階級”への複雑な思いなどを丁寧に描き出す同作。あらすじだけ読むと、女性同士が対立するドロドロとしたストーリーを想像しますが、実際の読み心地は清々しくもあります。それは、山内さんが描き出す登場人物が、自分の足で立ち、懸命に前を向いているから。また、女性同士の関係性に心地よい“さっぱり”感があるためです。山内マリコさんへのインタビュー前編では、同作が生まれた経緯と、女同士の友情についてうかがいました。

“東京にしかいない人種”を描きたかった

――新刊『あのこは貴族』は、東京出身のお嬢様・華子と、地方出身のOL・美紀が主人公。“生活階級”の違いが描かれていますが、なぜこういったテーマを選ばれたのでしょうか?

山内マリコ(以下、山内):ずっと地方都市を舞台にした小説を書いてきたのですが、自分自身はもう10年も東京に住んでいて、そろそろ東京を描いてみたいと思うようになりました。でも、東京に住んでる地方出身者の話なら、今までと本質的には変わらない。東京ならではの、東京にしかいない人種みたいなものを書かなくちゃ意味がないなと思いました。

私は大学も関西だったし、東京に住んでるものの東京出身の人とはあまり縁がなくて。ただ大手出版社の編集者さんと仕事をしていると時々、明らかにお金持ちの人がいるな〜と気づいたんですよね。高給取りってことじゃなくて、実家が代々お金持ちの、すごい家系の人が。よく「裕福な家庭に生まれ育ったお嬢さま」って紋切型に使われるけど、具体的にどんな生活をしているのか、そこがどんな世界なのかはよく知らない。彼女たちの世界こそが東京にしかないものなのかもしれないと、取材を重ねていったんです。

“女の敵は女”という風潮はもう古い

――同作のあらすじだけ読むと、ドロドロした「東京女子VS地方女子」を想像させますが、実際に読んでみると、女性キャラクター同士の距離感がさっぱりとしていてリアルだと感じました。山内さんの作品は同作以外も、女性同士のドロドロが描かれていないように思います。これは意識されているのでしょうか?

山内:意識して書いていますね。私自身、現実世界でドロドロした人間関係に巻き込まれるのがすごく嫌いなんです。男をとりあってゴタつくとか、女同士で嫉妬し合うみたいな状態になるのも嫌で。

でも人間ってアクの強いものが好きだし、とくに女の世界は思いっきりドロドロに描いたものの方が人気もあるし評価もされる。それにそういう物語自体が、「女の世界はこういうものである」っていうイメージを拡散している部分もあって。だけど私は女同士が仲良くしてるのが好きだし、そういうものが読みたい。いつも、自分が好きだと思える、新しい物語を生み出したいという気持ちで書いています。

――でも女同士のつきあいって実際、これくらいの距離感だよなぁ……と、すごく共感できました。“女の敵は女”という風潮も根強く残っていますが、どう思われますか?

山内:私自身、昔はそういうものだと思っていたんです。女の子ってこわ〜い、みたいな。でも今考えると、そういう風潮を煽っていたのは男子の方だった気がしますね。中学生くらいの男子って、言わなくていいことをわざわざ言う。「◯◯さんの方がおまえよりかわいい。おまえ、◯◯さんに嫉妬してんだろ」みたいな。そんなこと言われたらどうしても意識しちゃうし、自分とその子を比べてしまう。そうやっていつの間にか、どんな女の子にも植え付けられてしまうものなのかなぁと。

でも本当に心を開ける女友達と出会ってからは、そういう考えからもだいぶ抜けられて、すごく楽になりました。ここ数年は、女性同士で結託したり連携したりすることは素晴らしいというストーリーが、世界的な潮流になってきたと思っています。女性同士は敵じゃないよというのは、もっと女性の側が声を上げて言っていかなきゃいけないのかなと。

“昔、仲がよかった女友だち”にいつか救われる日がくる

――女性はバイオリズムとかライフスタイルの変化で、“ちょっと気まずくなっちゃう瞬間”が男性よりは多いのかな、という気はします。だけど、そういう期間があるから、その友情が嘘というわけじゃないですよね。

山内:もちろん! そもそも男性の友情と女性の友情のあり方自体が、かなり別物ですしね。女性の友情の方がはるかにデリケートな気がします。学生時代が終わって、自分の人生を生きるとなると、友達とはどうしても離れる時が来る。ちょっと疎遠になっただけで「私たちはもう終わった……」みたいな深刻な気持ちになったり(笑)。でも、たとえ1回縁が切れたみたいな状態になっても、40歳、50歳、60歳……と年を重ねたら、その友達がいかに貴重な存在かに気づくはずなので、大事に寝かせておいた方がいい。一緒にいた時期ほど濃密に仲良く過ごせることはないかもしれないけど、その子がいるだけで救われるときがくると思います。

——作品のなかに、「結婚したら独身グループから離れていくだろう」という描写がありましたが、山内さんはライフステージが変わるたびに友情にも変化がありましたか?

山内:私はわりと特殊かもしれません。あまりグループ付き合いが好きではなくて、親友至上主義。基本、仲のいい友達はひとりなんです。だから、小学校、中学校、高校、大学、大学卒業後に住んでいた京都時代、その時々にひとりずつ仲のいい親友がいて、そういう子は今も残ってます。みんな忙しいので、頻繁に会うというわけではないですけどね。いまは夫が親友という感じです。

 

【書籍情報】

※ 山内マリコ(2016)『あのこは貴族』(集英社)

2017/1/25 BizLady掲載

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