みなさん、はじめまして。弁護士の山口真由です。 今回から数回にわたって、これまで私が得てきた経験のなかから、働く女性のみなさんにお伝えしておきたい大切な気づきや、ちょっとしたコツなどをお伝えしていきたいと思います。
私が大学を卒業して財務省に入省したのは、2006年のことでした。すごく忙しいところとは聞いていましたが、実際の現場の忙しさは想像をはるかに超えるものでした。先輩たちは山のような仕事をかかえて働いていましたし、月間の残業だけで300時間を超えることはザラでした。すごいところに来てしまったというのが、最初の印象でした。
とはいえ、仕事が忙しいこと自体は、自分のがんばりでなんとか乗り越えられます。私にとって、それ以上にしんどかったのは“上司との関係”でした。
入省して半年後に移動してきた上司は、理屈を大事にし、何事にも細かくこだわりが強い、まさに“鬼上司”な方でした。英語の書類チェックもきびしく、定冠詞の使い分けひとつにも、理由を求められ、うまく答えられないと激怒されました。
それだけではありません。「小豆は赤いのに、こしあんはなぜ黒いか」を調べさせる。「コーラ買ってきて」と財布を投げてよこす……。私は、上司を満足させることができない。「自分はダメなのかもしれない……」と毎日毎日、深く悩む日々を送るうちに、人の顔色を異常に気にするようになっていく自分がいました。
当時の私は、上司から不合理なことを言われても「きっと何か意味があるんだろう」と必死に意味を考え続けました。「きっと、私のための教育的指導なんだろう」と思ったし、それに応えられないのは、私がダメだからだと思ったし、なんとか期待に応えようと陰ながらの努力を重ねました。
そうして耐え忍ぶこと半年、次第に自分の考え方に変化が出てきました。自分の置かれた状況を客観的にとらえることができるようになったのです。そうすると、私が無能だって思ってたけど、これはさすがに上司の要求が不合理なのかも、という冷静な判断ができるようになってきたのです。
こうして、すべてに“意味”を求めなくなったら、急に気持ちが楽になり、それまで破裂寸前にたまっていたストレスも、だんだん軽減していきました。
そして、「これもひとつの修行だから」「どうせなら、この不合理に思う存分つきあっちゃおう」と、思えるようになったのです。それまでは上司への反発もあったのですが、それ以降は、「あなたの宿題に、今、私、一生懸命取り組んでます!」という素直な姿勢を見せることができるようになりました。そして、これをきっかけに、上司の私に対する態度は、徐々に優しくなっていったのです。
努力が報われるためのコツ
「一生懸命努力しているのに、なかなか報われない」と悩んでいる人もいるかと思います。実は、これって思い込みの部分が大きいと思うのです。生真面目な人ほど、がんばらなきゃがんばらなきゃと、陰で努力を重ねてしまうもの。
しかし、努力が報われるためのコツは、実は「努力しているところをきちんと周囲に見せて、認めてもらうこと」だと思うのです。
つまり、“努力は見せなきゃ意味がない”とも言えます。もちろん結果は重要ですが、結果にたどり着くまでの過程も、また重要なのです。
努力を上手にアピールするには、いくつかのコツがあります。
たとえば、人の話をきくときは、興味がわかなくても、メモを取りながら、“重要なアドバイスを真剣に受けている”という姿勢を見せること。
そして、もし深夜まで資料作りの作業をしたなら、その夜のうちに仕上げた資料を上司に送り、いつまで作業していたかがわかるように、出退勤の記録やメール履歴などに残すこと。
“努力は水面下で行うもの”という日本人の美徳は、実はあまり得になりません。水面下の努力が報われるのは、“成果が出た場合”だけなのです。とはいえ、結果第一の上司であっても、部下の“がんばり”自体は認めざるを得ません。もちろん、こびへつらうのではなく、自分の努力をきちんとアピールしていきましょう。それはけっして恥ずかしいことではないのです。
せっかく努力をするなら、きちんと“水面上”でやりましょう!
【筆者】山口真由(やまぐち・まゆ)
1983年、札幌市生まれ。筑波大学附属高校進学を機に親元を離れ上京。2002年、東京大学入学。3年生時に司法試験、4年生時に国家公務員Ⅰ種に合格。成績は“オール優”で06年3月に法学部を首席で卒業。同年4月、財務省に入省し、おもに租税政策に従事する。08年退官、09年弁護士登録。15年8月からハーバード大学ロースクールに留学。著書に『東大首席弁護士が教える超速“7回読み”勉強法』、『東大首席弁護士が挫折を繰り返して見つけた努力が99%報われる25のヒント』などがある。
2015/7/30 BizLady掲載