社会人経験は15年くらいになりましたが、女性だということが不利になったと思ったことは一度もありませんでした。記者時代も“のけ者”にされたこともないし(気づいてないからなのかもしれませんが 笑)、向いているかは別としてエンジニアとしても経営者としても、性別がすごくネックだということはなかったですね。
そもそも私自身が競争が苦手ということが影響しているかもしれません。今までを振り返ると、無意識のうちにほかの人と競争にならないようスキルをずらしてきているのかもしれません。
記者からエンジニアになった人は少ないし、起業した人も少ない。他にはないスキルセットを持っていれば、他人と比べられませんので、横並びから脱出できるのかもしれませんね。
私自身は、誰かにとって便利な物を作るのが好きだったので、それを突き詰めて今のキャリアに結びつきました。一人ひとりの趣味趣向や性格によって、ずらす方向を決めれば良いと思います。
-働く女性に向けて一言お願いします。
女性は結婚・出産などのライフイベントを通してキャリアプランを考える機会が多く、とくに出産は影響が大きくなりがちです。しかし、自分自身がそれを重く受け止めすぎてチャレンジできないというのは、もったいないのではと感じています。
私が2回目の転職をしたのは29歳ですでに結婚をしていましたし、会社を立ち上げたのは33歳の頃でした。しかし、周りの誰ひとりとして私がこの先、出産や育児に時間を取られる可能性があることを確認してきませんでした。
逆に心配になってしまい、ある方に質問してみたところ「もし子どもができて産休を取っても、あなたはすぐ復職するでしょ?」と言われました。私にとってはそう思ってもらえている方が気が楽で、自分自身が一番気にしてたんだな、と気づきました。
男性が育休をとる場合もあるでしょうし、結婚していなくても介護で休まざるを得ない場合もあると思います。誰しも何があるかは分からないんです。それゆえ、自分でブレーキをかけすぎない方が良いんじゃないかなと思っています。
もちろん自分は夫のサポートを得られやすかったり、時間も比較的融通が効いたりと恵まれた環境にいるのも分かっているので、誰しもが同じようにやれるとは言いづらいですが、少なくとも雇用側として社員の多様な働き方をサポートできるようにしていきたいと考えています。
【著者】閑歳孝子(かんさい・たかこ)
Zaim 代表取締役。日経BP社にて専門誌の記者に従事した後、Web業界に転職。その後個人で開発していた家計簿サービス『Zaim』を2012年に株式会社化。550万ダウンロードを超える日本最大級のサービスへと成長している。経済産業省主催「流通・物流分野における情報の利活用に関する研究会」委員、公益財団法人日本デザイン振興会主催グッドデザイン賞審査委員。
【撮影】
黒石あみ(本誌)
2016/9/1 BizLady掲載