“男性社会”の厚い壁を乗り切った信念
私は、航空業界に入る前は、音楽業界やファッション業界にいたため、ある程度女性がいましたが、男性社会ともいえる航空業界へ移籍したときは、ビジネス構造も大きく異なるので、とても大きな“男性の壁”を感じました。これまでの人生を振り返れば、ビジネス環境としてはいちばん困難な時期だったかもしれません。
しかし私には、業界や環境が変わっても、マーケティングの基本や業務の根本の部分は変わらないという強い信念がありました。その信念を突き通し、働くことで、困難を乗り越えることができたと思っています。
ビジネスにおいては、危機とはつねに隣り合わせです。そんな危機をチャンスに転換するために大切なのは、“聞くこと”です。もちろん自己解決することは重要なことですが、何もかも自分一人で解決しようとせず、時には周りに対して素直になり、相談することだと思います。
“他とは違う考え方”のスタイル
私はビジネスにおいて、つねに“Unconventional Wisdom(=常識にとらわれない生き方)”と、“Think out of box(=型破りに考えること)”という2つのフィロソフィーを大切にしています。
例えば、エアアジアがLCCとしてサービスを開始したときのことです。航空業界では珍しく、新規参入企業であることや、当時はまだLCCそのものが認知されていないということもあり、私はまずは自分たちのポジションを確立させていくことの重要性を感じていました。
そこで目をつけたのが“ブランディング”です。当時のエアラインの機体は、どの航空会社も、白地にロゴだけといったような、変わり映えの無いデザインのものでした。そこで私たちは、エアアジアブランドをより印象付けようと、殺風景だった機体を真っ赤に変えました。また、それに合わせて客室乗務員の制服も真っ赤かつ今時なデザインに変え、従来の航空会社とは違う、“革新的なサービス”であるというブランドイメージを浸透させることができました。
みなさんも、何かビジネス展開を考えるときは、私と同じフィロソフィーを胸に、“常識にとらわれず、型破りに考える”ことを意識していただければ、きっとうまくいきます!
【著者】キャスリーン・タン(Kathleen Tan)
エクスペディア アジア地域CEO。ワーナーミュージック シンガポール常務取締役、エアアジアグループ ヘッド・オブ・コマーシャルを経て、2013年2月より、世界最大の総合オンライン旅行会社エクスペディアの、エクスペディア アジア地域(本社:シンガポール)CEOとして、シンガポールを拠点に、アジア地域におけるエクスペディアブランドの発展及び運営の指揮をとっている。
過去には、トニー・フェルナンデス氏とともにエアアジアをアジア最大級の航空会社に成長させるなどの功績により、Web in Travelが発表した“旅行業界で最も影響力のある女性リーダートップ10”ならびに“マーケター・オブ・ザ・イヤー”に選ばれた他、2014年にも再びWeb In Travelを受賞するなどの活躍から、中国最大の検索エンジン『Baidu』では“航空業界の伝説的人物”と紹介されている。
※ 翻訳協力:エクスペディアジャパン
2015/5/7 BizLady掲載