「琴線に触れる」の意味とは?
null「琴線に触れる」(読み方:きんせんにふれる)は、胸の奥にある、物事に感動する心情に触れること。
人間の心の中の感じやすい部分を弦楽器の“琴”の糸に例え、素晴らしいものや言葉に触れて共鳴するような様子を表します。「その小説の一節が、心の琴線に触れた」という形で用います。
「琴線に触れる」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方
「琴線に触れる」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方「琴線に触れる」の使い方の注意点は2つあります。
(1)主語に注意
「琴線に触れる」を用いる場合、人を感動させた言葉や作品が文章の主語となります。自分が感動したときに「私が琴線に触れた」という言い方はしませんのでご注意を。
【NG例文】
その作品を読んで、私は心の琴線に触れた。
→心の琴線に触れたのは、“私”ではなく“その作品”。正しくは「その作品は、私の心の琴線に触れた」となる。
(2)「怒らせる」の意味はない
「逆鱗に触れる」と「琴線に触れる」を混同しやすいようです。
「逆鱗(げきりん)に触れる」の意味は、目上の人などを激しく怒らせること。字面は似ていますが、語源も意味も全く異なります。言い間違いに注意しましょう。
「琴線に触れる」の例文は?
「琴線に触れる」の例文は?「琴線に触れる」を用いた例文をご紹介します。
・その絵画は私の心の琴線に触れる素晴らしい作品でした。
・先輩の言葉が部員たちの琴線に触れました。
・そのセリフが心の琴線に触れて、涙があふれてきた。
「琴線に触れる」の言い換え表現や類語は?
null「琴線に触れる」の類似の表現をご紹介します。
(1)「感銘を受ける」
「感銘を受ける」は、忘れられないほど深く感動すること。
【例文】
・日本代表チームの団結力に感銘を受けました。
(2)「胸を打つ」
「胸を打つ」は、強く感動させること。「胸を打たれる」と受身形で使うこともあります。
【例文】
・迫真の演技が聴衆の胸を打つ。
・その歌声に胸を打たれた。
(3)「感に堪えない」
深く感動して、その感情がおもわずこぼれ出てしまうこと。
【例文】
・感に堪えないという様子で受賞スピーチを行った。
「琴線に触れる」の対義語は?
null「琴線に触れる」の対の意味を含む言葉をご紹介します。
(1)「興醒めする」
「興醒め(読み方:きょうざめ)する」は、興味を失うこと。興味がそがれること。
【例文】
・会見で自己弁護に徹する様子を見て、興醒めしてしまった。
(2)「鼻白む」
「鼻白む」(読み方:はなじろむ)は、興醒めするの意。
【例文】
・あれほど試作品を絶賛していたA社が、その後、他社にも見積依頼をしたと知り、鼻白んだ。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに「琴線に触れる」の意味や使い方について解説していただきました。
美しい表現なので、ぜひ正しい使い言葉を覚えておきましょう。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。