「貴殿」の読み方や意味とは?「あなた」との違いは?
null貴殿の読み方は“きでん”。“きどの”ではありませんのでご注意を。
“貴殿”は、尊敬の二人称の代名詞。書き言葉で用いる言葉です。同じく二人称の代名詞である“あなた”を文語的にした言葉と言ったらわかりやすいかもしれません。
「貴殿」はどんなシーンで使う?
null“貴殿”は文書で使われる言葉で、話し言葉で使われることはありません。
ビジネスシーンにおいては、型のある公的な書類の中で使うのが一般的です。例えば、社内での勤続の賞状や辞令の中でよく使われています。
メールの場合は通常のやりとりでは使うことはありませんが、辞令や個人宛の発注書など、定型文的な文章の中で使われることもあります。
“貴殿”は、かなり硬めの書き言葉ですので、私生活においては、ほとんど使われることはありません。
「貴殿」の例文は?
null続いて“貴殿”の例文を通じて使い方をイメージしてみましょう。
・(辞令)令和2年10月1日をもって、貴殿を営業一課課長に命じます。
・(賞状)貴殿は長年にわたり当社開発部の発展に尽力されました。
・(個人宛の書類の冒頭)貴殿におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
「貴殿」の使い方の注意点は?女性も使える?
null“貴殿”は“殿”がついていることからもおわかり頂けると思いますが、相手の男性を敬っていう語。かつては一定の身分以上の男性同士で使われていました。
とはいえ、近年では男女を問わず敬意を表すために氏名に“殿”をつけて“○○殿”という呼称が使用されています。“貴殿”もまた、男性だけでなく女性に対しても使われています。
男性的な表現ですので、組織から発行する書類やメールの中で“貴殿”を使うことはありますが、女性が個人の名で出す文章の中で“貴殿”を使うことはほとんどありません。
「貴殿」は目上に使っても大丈夫?
null“貴殿”は尊敬の二人称代名詞ではありますが、目上の相手に対して“貴殿”を使うことは避けたほうがよいでしょう。原則としては、お客様や取引先相手に対して使うことはありません。
日本では、目上の相手に対しては、肩書や役割、
ビジネスシーンではあまり使わない「二人称代名詞」
日本語には、二人称の代名詞が多くあります。“あなた”“おたく”“君”“お前”“貴殿”“貴台”など。
しかし、ビジネスシーンにおいて相手を呼ぶときには二人称代名詞を使わずに肩書や名前で呼ぶのが一般的です。
【例】
・鈴木部長
・鈴木さん
・鈴木様
・鈴木君
今回のテーマとなっている“貴殿”という言葉は、限られた場面で使う二人称代名詞といえるでしょう。
「貴殿」の言い換え表現は?
null先述したように、二人称の代名詞を使うシーンは限られていますが、言い換え表現があるとしたら、“あなた”と“先生”があげられます。
(1) 「あなた」
本来は対等または目上の相手に対して使われていましたが、現代日本語では同等以下の相手を指し示すときに用います。目上の相手に対しては使いません。
【例文】
・(後輩や部下に対して)あなたの電話応対すごくいいと思うよ。
(2) 「先生」
使う場面は限られていますが、ビジネスシーンではしばしば専門資格やスキルを持っている人を“先生”と呼ぶ風潮も見受けられます。組織の風土によっては、会社に関わっている医師・弁護士・会計士・社内研修の講師などに向かって“先生”と呼ぶことがあります。
【例文】
・先生のビジネス研修は、毎回学びが多くて充実しています。
今回は、国語講師の吉田裕子さんに“貴殿”の解説をしていただきました。
日常会話ではあまり使うことの少ない“貴殿”ですが、文章やメールの中で使われることがあるので覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。