”先般”という言葉について解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。
「先般」の意味とは?
null“先般”は“この前”“この間”という意味。現在に近い過去のある時点を指します。
「先般」はどんなシーンで使う?目上に使っても大丈夫?
null“先般”は、主に書き言葉で使われる言葉です。
やや硬い表現なので話し言葉ではほとんど使われておらず、ビジネスシーンにおいては書面やかしこまったメールの中で使われています。
プライベートにおいては、自治会など、
目上の相手にも使うことができる語ですが、一方で、
「先般」の例文は?
null“先般”を使った例文を通じて、使い方をイメージしていきましょう。
・先般の打ち合わせの決定事項をお知らせします。
・先般の会議の議事録を添付いたしますので、ご査収のほどお願い申し上げます。
・先般お知らせした通り、本件は本日をもって終了いたします。
・先般ご案内した会合の件、ご都合はいかがでしょうか?
「先般」の使い方の注意点は?「昨今」「今般」との違いや使い分けは?
null“先般”は、現在に近い過去の“ある時点”を指します。ある時点から現在に至るまでの“一定の期間”を示す言葉ではありません。“昨今”“近頃”“先日来”といった時間的な幅をもった言葉と混同している例が見られます。
【NG例文】
・先般、A社との良好な関係が続いている。
→“この頃”“昨今”と同様に使うことはできない。
また、“先般”に対して、“このたび”を意味する“今般”という単語もあります。混同しやすいので注意しておきましょう。“今般”は「今般、営業部に移動となりました」というように、書き言葉の中で使います。
「先般」を言い換えると?
null続いて“先般”の言い換え表現をご紹介します。
(1)「先日」
“先般”の類義語ですが、“先日”は話し言葉、書き言葉、いずれの場合も広く使われています。
【例文】
・先日ご相談いただいた件をご回答いたします。
(2)「過日」
“先般”と同様に“この間”という意味を持つ言葉。話し言葉ではほとんど使わず、手紙やメールの中で使われることの多い言葉です。
【例文】
・過日お知らせした通り、明日、オンライン会議を行います。
(3)「以前」
現在より前のことを指す言葉。“先般”や“過日”が現在に近い過去の一時点を指すのに対し、“以前”はかなり前のことを指すこともあります。幅広い場面で使われる言葉です。
【例文】
・以前お会いした際にお話しした通りです。
・じつは以前、御社の部長にお会いしたことがあります。
(4)「先だって」(せんだって・さきだって)
“先日”“この前”という意味。あまり耳慣れない言い方かもしれませんが、年配のかたなど“
【例文】
・先だってA社との会食で使った店の名前を聞いてもいいかな。
今回は国語講師の吉田裕子さんに“先般”という言葉について解説して頂きました。
書き言葉の中で“この前”というのがはばかられるときに、かしこまった印象のある“先般”という言葉を使ってみてはいかがでしょうか。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。