2011年の火災警報器設置義務化により、住宅火災の死者が減少している
null火災警報器は2006年よりすべての新築住宅への設置が義務付けられています。既存住宅も猶予期間を経て2011年以降は全市町村で設置が義務化されているので、原則すべての家に設置されているといっていいでしょう。
「2011年時点で住宅火災によって亡くなられた方は年間約1,100人いましたが、その後火災警報器の設置が進んだ結果、近々だと約900人まで減りました」
こう語るのはガス警報器メーカー『新コスモス電機』の開発営業部に所属する大和功さん。大和さんによると火災警報器は煙を感知して作動する「煙式」と熱を感知して作動する「熱式」の2種類あるそうで、寝室や階段に設置義務となっているのは煙式です(台所は熱式でも可)。
「死者が出た住宅火災の中で、一番多い着火元は今も昔もタバコ。着火先で一番多いのは寝具類で、しかも寝ている時間帯に発生することが多く、火災の発生に気付きにくい。だからこそ火災警報器が重要となるのです」(以下「」内、大和さん)
火災警報器の本体交換目安は10年!
nullしかし寝室に設置しているからといって安心というわけではありません。実は火災警報器には寿命があり、消防庁や業界団体は目安として設置後10年に交換することを推奨していることをご存じでしょうか。義務化がスタートした2006年に設置した人は17年、猶予期間が終了した2011年でも12年が経過していることになるので、戸建住宅の場合は知らないうちに交換対象となっているケースはかなりあるといいます。
「10年というのは火災警報器の電池寿命です。火災警報器の電池が切れた場合は音声やランプによってお知らせしてくれる仕組みになっていますが、それにも気が付かない場合も多いと推測されます。家の火災警報器が10年以上経過している場合は電子部品の寿命の恐れもあるので、電池交換ではなく本体の買い替えを検討してほしいです」
2022年に日本火災報知機工業会が発表した調査結果によると、火災警報器について「設置後 10 年を目安に交換することを消防庁が推奨している」ことを「知っていた」と回答した人は29.9%のみ。残りの70.1%は「知らなかった」と回答していました。
さらに中古物件を購入したケースなどでは、火災警報器がいつ設置されたのかが分からないというケースもあるのではないでしょうか?
「火災警報器の本体には製造年が記載されているので、いつ取付けしたかわからない場合は、それを確認するといいと思います」
設置10年未満でも…月に1度は火災警報器の日常点検を
nullでは火災警報器の設置が10年未満の場合は、何もしなくてもいいのでしょうか? 大和さんは「できれば月1回を目安に、日常点検をして欲しい」といいます。
「日常点検のやり方はすごく簡単で、火災警報器のひもを引っ張るかボタンを押すだけでできます。そこで警報音(「火事です」という音声、またはブザー音など)または点検音(「正常です」などの音声)が鳴れば異常なし。警報音が鳴らない場合は電池切れ、または機器本体の故障が考えられるため、電池や機器本体の交換が必要となります」
点検ボタンで確認した場合、音声やブザーは自動的に止まります。
さらに火災警報器はほこりが付くと火災を感知しにくくなったり誤作動するため、定期的に掃除を行うことも大切です。掃除の方法は取扱説明書に記載されています。蜘蛛の巣やほこりが付いている場合は、掃除機で吸い取ったりして取り除きましょう。ほかの汚れは、中性洗剤を浸して充分絞った布で汚れを拭き取ってください。なお、火災報知器の水洗いは厳禁! ベンジンやシンナーなどの有機溶剤も使用できません。気をつけましょう。
マンションの場合は、住宅用火災警報器の設置が免除となるケースも
一方、マンションに住んでいる場合は、やや事情が異なります。多くのマンションでは自動火災報知設備やスプリンクラー設備等がすでに設置されており、その場合は住宅用火災警報器の設置は免除となります。また、自動火災報知設備は建物の所有者など消防設備に対する権限を持っている人が点検する義務を担っているので、住民は点検や交換などの必要は原則的にはありません。
まだまだ暑い日が続いていますが、これから秋や冬になると暖房器具を使う機会も増え、空気も乾燥するので火災のリスクが高まります。ぜひ火災警報器の日常点検の実施と、設置から10年以上経過している人は本体の交換を検討してみてください。
新しく交換する際は、より安心できる機能を備えた住宅用火災警報器を!
null住宅用火災警報器の設置が義務化となったことで火災事故は減少しましたが、今でもまだ900名の尊い命が住宅火災により奪われています。その原因の一つと考えられるのが、一酸化炭素。死亡につながる火災で一番多い寝たばこのような火災の場合、炎も出ずに煙より先に一酸化炭素が発生します。そのような危険から身を守るために、煙センサーだけではなく一酸化炭素センサーを搭載した火災警報器が販売されているのです。
交換の際は、より安心できる機能を兼ね備えた火災警報器の設置も検討してみてください。
【取材協力】
新コスモス電機株式会社 リビング営業本部開発営業部 大和功(やまといさお)
2001年新コスモス電機入社。「世界中からガス事故をなくす」をミッションとする同社で、家庭用ガス警報器の営業を経験。現在では、火災から一人でも多くの命を救うために『PLUSCO(プラシオ)』の普及に取り組んでいる。
東京都出身、千葉県在住。短大の春休みより某編集部のライター見習いになり、気が付いたら2022年にフリーライター歴25年を迎えていた。現在は雑誌『DIME』(小学館)、『LDK』(晋遊舎)などで取材・執筆を行うほか、『kufura』などWEB媒体にも携わる。
執筆ジャンルは、アウトドアや子育てなどさまざま。フードコーディネーターの資格も持つ。