kufura(クフラ) 仕事も家庭も、私らしく!を叶えるヒント

料理家・山脇りこさんが語る「料理上手になる」意外なコツ

はてなブックマーク facebook Twitter LINE

前回に引き続き、料理家・山脇りこさんによる野菜のお話です。
今回は、新刊『野菜のたのしみー私の野菜料理133ー』をベースにしつつ、本では書き切れなかった、ぜひ真似してみたい調味法、そして毎年仕込む“絶品ゆず胡椒”のことなどを紹介します。

旬を1年間楽しむためのゆず胡椒づくり

山脇さんは東京・代官山にあるRiko’s Kitchenで、【旬のクラス】【だしのクラス】とともに、こちらは仕込みの時期に合わせてですが【自家製のクラス】を主宰しています。

取材に伺った日は、ちょうどゆず胡椒を仕込んだばかり。

「ちょっと味見してみます?」

ほんの少し口に入れると……ゆずと青唐辛子の香りがツンと立ち、舌にのせるとぴりりとした辛みとともに、さわやかな青味が広がります。こんなに美味しいゆず胡椒があれば、野菜も肉も魚も味つけはいらない! 思わず「販売はしてないんですか?」と聞いてしまいました。

「気に入っていただいて、うれしいなぁ。簡単なのですが、手仕事で、なかなか販売までは手がまわりません」と笑う山脇さん。

「ゆず胡椒は大分県が発祥だそうですが、長崎でもよく食べます。実家が旅館をやっていたので、昔からゆず胡椒は“作るもの”でした。ちょうど10月の大祭、おくんちの頃が、黄色になる前の青柚子と赤くなる前の唐辛子が出会う唯一の時期。1年分を仕込んで瓶詰めし、冷凍保存します。3カ月後くらいから、馴染んでおいしくなり、1年しても香りは変わりません。青唐辛子の種をとったり、青柚子の皮を薄くむいたり、細かい仕事ですが、材料はこれと塩だけのシンプルなもの。これで1年間楽しむことができると思えば手もよく動きます」

このほか、48時間で完成する即席みそ作りのクラス(これをやると1年味噌もできるようになる)、生姜やらっきょうも。

また、だしのクラスやしょうゆなど調味料を学ぶクラスもあります。ただ、どれもすぐに満席になってしまうので、参加したい方はちょくちょく山脇さんのサイトをチェックした方がよさそうです。( http://rikoskitchen.com

「みなさんには、“コーヒーを1回我慢して、 美味しいおだしを引いたほうがいい”と言っています」

「究極のところ、野菜も調味料も素材の力にたどりつきます。そのままで美味しいものは、何をしても美味しい。それを助ける調味料も、せっかくならこだわりのあるものにしたくなりますよね」

山脇さんの料理クラスに参加される方は、家庭をもって仕事をしている方が多いといいます。

「忙しいからこそ、調味料を見直して自分が美味しいと思うものに変えたら、その日から腕はあがらなくても、料理が格段に美味しくなりますよ」

それに賛同し、多忙なスケジュールをやりくりして、しょうゆやみその蔵元を訪ねる旅にも積極的に参加する方もいらっしゃるのだそうです。

ちなみに、山脇さんが愛用しているしょうゆは、小豆島・ヤマロク醤油の『鶴醤』、和歌山・堀河屋野村の『三ッ星醤油』など(どちらも通販あり)。

「塩、酢、しょうゆ、みそ。良質のものは安くはありません。ものによっては価格が一桁違ってきたりします。例えばしょうゆは育った環境でも好きな味が違うし、蔵の作り方で、誰でもすぐ分かるほど味に違いがあります。でも、キャミソールを1枚新調するのをやめて、しょうゆやお酢にこだわってみてほしい。おだしも最高の昆布と鰹節で引くと1リットルで350円くらいかかりますけれど、街の某コーヒーを1回我慢したら、引けるってことですよ〜とうちに来てくれる皆さんには言っています」

山脇さんのお料理は旬の食材を生かし、足し算ではなく“引き算”をしたシンプルなものが多い。「おいしさ、うまみは食材から、調味料は最小限に」をモットーに、ひと手間かける下ごしらえを大事にしているといいます。

「料理の腕を上げる最良の方法」山脇さんの意外な答えは…

「今回の本でご紹介している筑前煮は、あえてだしを使わないで作っているんですが、野菜のうまみと鶏を合わせるだけでも十分美味しくなることを伝えたかったんです。

調味料を入れすぎず、野菜それぞれの味の美味しさを楽しむ筑前煮。また、下ごしらえにしても、野菜を見てちょっと考えるのが大事。たとえば、茎が硬い関東の春菊は葉と茎を別のものとして扱ってみる。葉は炒めものに、茎は刻んでドレッシングに入れたり、餃子の具にしたり。蒸しなすも、むいた皮はおみそで炊くと佃煮みたいになって美味しい……とか。

そういうことをやっているうちに、気づいたら野菜マスターになっていきますから(笑)」

『明日から、料理上手』(小学館)の著書もある山脇さんに、「料理の腕を上げる最良の方法はなんでしょうか?」と聞くと、「味見ですね」と間髪入れずに答えが返ってきました。

「ほら、シェフは途中で何度も何度も味見しますよね。あれです。ちゃんと味を見ているうちに、食材同士の相性も分かってきます。意外に味見しない人が多いようなんですが、レシピの数字は目安。調味料の味も素材の味もそれぞれの家で違いますから。味見して自分の好きな味を日々確認すると、新たな発見もありますよ」

 

レシピの数字は目安――。人気のレシピ本を何冊も出している山脇さんの回答に、料理の奥深さと共に、その楽しみ方も垣間見えた気がします。

山脇さんの「筑前炊き」レシピ

材料(作りやすい分量<4〜5人分>)

  • 鶏もも肉(唐揚げ用) 6切れ(約200g)
  • A(酒大さじ1、塩小さじ1/2)
  • きぬさや 10本
  • こんにゃく 1枚
  • にんじん・ごぼう 各1本
  • れんこん 200g
  • 植物油 小さじ1
  • B(だし<または水>200mL 粉末黒砂糖 小さじ2)
  • C(しょうゆ・みりん各大さじ1)

作り方

(1)鶏肉は食べやすい大きさに切り、Aをもみこんで10分置く。きぬさやは筋を取り、さっとゆでる。

(2)こんにゃくは、格子状に切り目を入れてから2cm角くらいにちぎる。鍋に入れて水をひたひたに加え、水からゆでてざるに上げる。

(3)にんじんはひと口大の乱切りに、れんこんは1cm厚さのいちょう切りにする。ごぼうはたわしなどでよく洗って、斜め薄切りにする。

(4)鍋に植物油をひき、鶏肉を漬け汁ごと入れて中火で炒める。鶏肉の表面の色が変わってきたら2と3を入れ、Bを入れる。沸いたら火を弱めてふたをし、6〜7分蒸し煮する。

(5)Cを加えて鍋をゆすり、全体にからめる。沸いたら火を止めてそのまま冷やす。器にきぬさやとともに盛る。

*冷たくしてもおいしいですが、食べるときに温めてもよい。

*粉末黒砂糖がない場合は、砂糖をやや少なめに使ってください。

写真(書籍より)/長谷川潤 撮影(山脇さん)/田中麻以(小学館)

 

【参考】

山脇りこ(2017)『野菜のたのしみー私の野菜料理133-』(小学館)

はてなブックマーク facebook Twitter LINE