夏場の花器選び、花瓶?それとも吸水性スポンジ?
null花のいけ方と聞いて、ぱっと思い浮かぶのはやはり花瓶ですが「夏場には吸水性スポンジもおすすめです」と、松岡さん。
「吸水性スポンジは水の塊のようなものです。茎と水を含んだスポンジが密着するため、花も潤いやすい。また、茎の長さを短めにカットして挿してゆくので、水を吸う距離が短く余計な力を消耗せずにすむと言えます。
だから、アレンジメントはもちろん、夏場の花器としても適任なんです。ただし、吸水性スポンジが使えるのは一度限り。乾いたり茎を挿して穴があいたりすると、もう使えません。また、水の含ませすぎは雑菌が繁殖する原因にもなりますので、適量の水をつねに含ませておく必要があります」(以下「」内、松岡さん)
うーむ。そう聞くと、ちょっと難易度があがります……。「それならやはり、花瓶を選びましょう」。
花のプロが愛用する花瓶とは?
null今回は、松岡さんが愛用する花瓶から、おすすめのものを持ってきていただきました。
花の存在感がいきる「シンプルなクリアガラス」
「夏の花は大ぶりなものが多いので、茎が長い状態で大きくいけると存在感が出ます。だから、シンプルな、高さ20〜30cmくらいの透明なガラス製の花瓶にいけると映えます」
中でも、今回持ってきていただいた3種の特徴を教えていただきました(以下、左から)。
- 口がすぼまったタイプ:「口がすぼまっていることで花が散らばりにくく、花数が少なくてもいけやすいです。また、この花瓶は底面がブラウンなので、花瓶の中の様子が見えづらいというメリットも。クリアな花瓶は中の茎も美しくいけたほうがよいですが、ガラスに色がついているとそこまで気にせずともすみます」
- 円筒タイプ:「細長いので、スペースを取りません。他の花瓶と一緒に飾ったり、インテリアと組み合わせたりと、コーディネートする楽しみがあります」
- 口が広いタイプ:「花瓶の中では一般的な形で、メンテナンスのしやすさが魅力です」
初心者も取り入れやすい「個性的な一輪挿し」
「花をいけ慣れていないという方も、花瓶をまず1つ選ぶなら一輪挿しがおすすめ。花が1本で様になり、スペースを取りにくいという意味でも使いやすいです。また、個性的なデザインなら花が入っていなくてもインテリアとして完成しますし、しまい込む必要もありません。個性的な夏の花も映えますよ」
個性的なものを選ぶ際のポイントは「色」。
「カラフルな四季折々の花に合わせることを考えると、ガラス製の、空間にもなじみやすい、汎用性のきく色がよいでしょう。透明、白、ニュアンスカラーなどが使いやすいです」
あると一層映える「敷物」
花瓶の下に「敷物を敷く」のもテクニックの1つ。松岡さんは、専用の敷物以外に『無印良品』で購入したラタン製のランチョンマットも活用しているそうです。
「敷物があることで額縁のような役割を果たし、一層花のある空間が映えます。フェイクレザー、ラタン、布など、好みの素材や色でコーディネートしてみましょう」
花瓶のいけ方「基本の1・2・3」
nullでは、さっそくいけていきましょう。ここで、松岡さんからアドバイス。
「花瓶にいけるときに思い出していただきたいのが、花本来の、自然に咲く姿。おそらくどの花もグリーンも、ピンと直立していたり花の向きがすべて真正面だったりということはないはず。なるべく自然に近い印象で飾るのが、より素敵に見えるポイントです」
STEP1:まずは1本いけてみる
花瓶にたくさんの花をいけるのは憧れますが、まずは1本をシンプルにいけてみましょう。
「華やかな夏の花は、1本から空間をぱっと明るく彩ってくれます。中でもヒマワリのような、花自体が大きなものは1本いけるのにおすすめ」
1本だけいけるポイントは2つ。
- 花瓶の口に自然に沿わせること
- 花が上を向くよういけること
「花が上向きになるようにいけると、元気な印象に見えます。花瓶に斜めに花を入れ、口のフチを使って上を向くようにしてみてください」
STEP2:主役と脇役の関係をマスターする
2種、3種と、複数種類を一緒にいける場合は「主役1に対して、どう脇を固めていくか」が鍵です。
「主役級の花ばかりでは奥行きが出ず、ともするとケンカしてしまいます。主役の花を1つ決めたら『マス(主役)→フィラー(細かな脇役になる花やグリーン)→ラインもの(さらに細かな花やグリーン)』という順番で、脇をどう固めるかを考えてゆきます。
脇役となる花やグリーンは、色や形はもちろん、日持ちのよさで選ぶとよいでしょう。飾る中で、茎をカットしたり葉を落としたり、日に日に少しずつ変わってゆく様子もまた醍醐味ですよ」
2種のいけ方POINT
「ヒマワリを主役にする場合、葉がだめになりやすい花なので、全てとり、脇役にグリーンを入れるのもおすすめ。茎のゴツい印象も隠せます。今回は、葉の形も魅力的なローズゼラニウムと組み合わせてみました。脇役は、主役と花瓶との空間を埋めるようにいけます」
3種のいけ方POINT
「基本的には2種と同じで、脇役は主役と花瓶との空間を埋めるようにいけます。その上で、見た目や日持ちのしやすさなどで組み合わせてみてください。今回は、華やかなヒマワリを主役に、ゼラニウム、清涼感のあるデルフィニウムをプラスしてみました。スプレー状に小さな花がたくさんつくものは、名脇役として活躍してくれます」
STEP3:脇役を変えてみる
主役は同じでも、脇役が変われば印象はがらりと変わります。1本ずつ買い足してみたり、入れ替えてみたりして楽しむのも花瓶でいける醍醐味の一つ。
「デルフィニウムだと涼やかな印象だった組み合わせ(写真左)が、赤い実もののヒペリカムに変えるとちょっと可愛らしく、ポップな印象になります。こうした印象の違いの楽しみを知っておくと、花束をお願いするときにもオーダーしやすくなるでしょう」
花1本、花瓶1つから夏の花のある暮らしを!
null「花の命は短い」と言ったのは、誰でしょう。確かに人と比べればそうかもしれませんが、その美しさをまっとうする方法をきちんと知って、大切にすれば、私たちのこころまで明るい気持ちにさせてくれます。とりわけ、パッと輝くような夏の花は、なおのこと! まずは1本から、飾ってみませんか?
撮影/小倉雄一郎(小学館)
【取材協力】
フラワーコーディネーター 松岡陽子さん
花のアトリエ「Arianna(アリアンナ)」主宰。イギリス最古のフラワースクール「コンスタンス・スプライ」元校長であるゲイルデリック氏を始め、フランスのメートル・ダール(人間国宝)、マルセル・ルブラノ・ギエ氏に師事。ディプロマ取得。
現在は、個人、企業向けアレンジメントレッスンを中心に活動。舞台の装花や、ブライダルの花も手がけている。上品でシックな色使いを得意とし、その質の高いアレンジメントが女性を中心に人気を集める。著書に『プリザーブドフラワーレッスン』(浩気社)。
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote