3作品どれも、
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1:“OLあるある”דヤンキー漫画”の融合!?『地獄の花園』
null“OLあるあるな日常”と“過激な女ヤンキーもの”がなぜかナチュラルに融合したハイレベルにオリジナルな痛快作・『地獄の花園』! ドラマ『ブラッシュアップライフ』も絶好調だったバカリズムが遡って2021年に脚本を手掛けた作品で、監督は同じくバカリズム脚本のドラマ『ケンシロウによろしく』(→これまた傑作!)でもタッグを組んだ関和亮。
主人公の田中直子は、ごく平凡なOL。「ん~いいお天気」みたいな感じでバス通勤、こぎれいなオフィスで働き、ランチを何にするかに頭を悩ませる。そんなOLたちの女子らしいオチのない会話を楽しむ日々をぺらっと裏返すと、そこにはOLでもある女ヤンキーがしのぎを削ってトップを取ろうと血まみれの権力闘争を繰り広げる裏社会が。そこに北条蘭が、中途採用で直子の会社にやってきます。
映画の前半を引っ張るのは、北条蘭を演じる広瀬アリスです。幼い頃からケンカの強いことがアイデンティティ。グーのパンチを片手でバシッと受け止め、「っていうか、私がヤラれるわけないじゃん。誰だと思ってんの?」と鋭い眼差しでクールに言い切る。それが蘭。彼女が、「狂犬」「悪魔」「大怪獣」とそれぞれに大袈裟な異名を持つケンカ上等!なOLたちと、血で血を洗う大乱闘をド派手に繰り広げます。
そんな蘭の暴れっぷりを、直子役の永野芽郁が目をまん丸に見開いて驚きを持って見つめ、心の声がナレーションとなって流れます。直子は兄弟の影響で少年漫画好きでもあって、「これってヤンキー漫画の王道パターンじゃんっ」などとツッコミを入れたりして、映画にパロディ要素を加えます。バカリズムお得意のゆる~いOLあるあるネタがそこここに挿入され、演出はまさに緩急自在の様相です。
やがて物語は直子の会社の枠を超え、あんなヤンキーOL、こんなヤンキーOLが登場。ラスボス的伝説の女まで顔を出しますが、実は……という展開に向けて猛スパート。OL経験があってもなくても、ヤンキー漫画が苦手でも実はマニアでも、ぎゃははは!と笑えること請け合いです。
『地獄の花園』
脚本:バカリズム/監督:関和亮
出演:永野芽郁、広瀬アリス、菜々緒、川栄李奈、大島美幸、勝村政信、松尾諭、丸山智己、遠藤憲一、小池栄子 ほか
「Netflix」「Prime Video」「U-NEXT」他で配信中
(c)2021「地獄の花園」製作委員会
2:ミステリーの構造でぶっちぎりに笑いを取る!『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
null「昨夜は飲み過ぎちゃった……。どうやって家に帰った!?」、そんな経験がある人には身につまされるかも? 『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』はまさにそんな映画です。
結婚式を翌日に控えたダグと、その親友で教師のフィル、「ドクターだ」とアピールする歯医者のスチュ、そしてダグの義弟となるアラン。4人はラスベガスへ繰り出し、独身最後の大騒ぎ! ところが翌朝、二日酔いでヘロヘロのフィルが目覚めると、超豪華スイートルームはしっちゃかめっちゃか。昨夜、何が? フィルら3人は、姿を消した“花ムコ”・ダグを探します。結婚式は明日なのに!
つまりこれはバチェラー・パーティー(新郎が結婚前日の夜を友達と過ごすパーティーのこと)に浮かれた男子4人によるケタ外れの悪ノリと、破壊的な様相のスイートルームに残された痕跡のあれこれ、それが伏線となって失われた記憶をたどり、あの夜に何が起きたか?という謎を読み解くミステリーのような構造です。
でも“ミステリー”という言葉が持つ冷ややかな印象はゼロ。下品なギャグとか3人のバカさ加減にこちらの口はあんぐりで、「男子って結局、男同士で遊ぶのが好きだよね~」みたいな気分でゲラゲラ笑えます。
笑いの肝は、もじゃもじゃ頭にあごひげ、突き出た腹にサングラスという見た目も怪しいアラン。コメディアンであるザック・ガリフィアナキス演じるこのキャラの変人(変態?)ぶりが、映画をひっかき回します。またフィル役のブラッドリー・クーパーはこの映画で大ブレーク、いまや本気の演技派となって賞レースの常連で、監督としても高い評価を受けています。
仕事と子育てと家事とで手一杯。とにかく頭を空っぽにして笑いたい! そんなときに効き目抜群の一本です。
『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
監督:トッド・フィリップス
出演:ブラッドリー・クーパー、 エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、ヘザー・グラハム、ジャスティン・バーサ ほか
配給:ワーナー・ブラザース
「Netflix」「Prime Video」「U-NEXT」他で配信中
(c)2009 Warner Bros Entertainment Inc. All rights reserved.
3:「埼玉県人にはそのへんの草でも食わせておけ!」自虐ギャグ漫画がまさかの映画化『翔んで埼玉』
null埼玉県人は東京都民から強い迫害を受け、通行手形なしに東京へ行くことさえ出来ない……。「パタリロ!」の魔夜峰央によるギャグ漫画を『テルマエ・ロマエ』の武内英樹監督が実写映画化、世間を一大フィーバーに巻き込んだ『翔んで埼玉』。この映画、ただの“埼玉ディスリもの”ではありません!
舞台は東京。どれだけ都会的な環境で生活しているのかという“都会指数”でヒエラルキーが決まり、都知事の息子である壇ノ浦百美が生徒会長として君臨。埼玉県人が底辺として虐げられるという環境の超名門校。そこに海外帰りの美系男子、麻実麗が転校してきます。しかし、実は麗は埼玉県人で、手形制度撤廃を目指す埼玉解放戦線の主要メンバー……。
男である壇ノ浦百美に二階堂ふみ、麻実麗にGACKT。二人を主軸に据えたところに、この映画の成功は確約されたよう。たったひとつのキスで麗に心を奪われる百美を、面白演技は100%控えて大真面目に演じる二階堂と、いつものGACKTのままで、宝塚の“ベルばら”的世界観をひとりで構築するGACKT。二人の化学反応を、事前に想像できた人がいるでしょうか?と思うほどハマっています。
「“埼玉”なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!(ってどういうこと?)」「埼玉県人にはそのへんの草でも食わせておけ!(野草のことですか?)」と極端すぎて笑えるディスリ、埼玉県人にとっては自虐的あるあるに笑ううち、埼玉vs千葉解放戦線の戦いというクライマックスへ。
続けて昨年公開された第Ⅱ章『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』へなだれ込むのもアリ!
『翔んで埼玉』
監督:武内英樹/原作:魔夜峰央/脚本:徳永友一
キャスト:二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香、成田凌、中尾彬、間宮祥太朗、加藤諒、益若つばさ、武田久美子、麿赤兒、竹中直人、京本政樹 ほか
「Netflix」「Prime Video」「U-NEXT」他で配信中
(c)2019映画「翔んで埼玉」製作委員会
3本、全部を観たら、日常のモヤモヤや疲れは遠い彼方へ! 「エンタメっていい!」とあらためて感じて、きっと他の映画も観たくなりますよ。
映画ライター。映画配給会社勤務を経て、フリーランスに。二児の母。
『ビーパル』(小学館)、『田舎暮らしの本』(宝島社)などの雑誌、「シネマトゥデイ」などのWEB媒体で映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。
『バカ卒業 ~映画「釣りバカ日誌」のハマちゃん役を語ろう~』(小学館)、『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス)を担当。