インパクト重視の時代から、日常で食べたい美味しさを求める流れに
nullクロワッサンというと定番のパンというイメージを持つ方も少なくないかと思います。クロワッサンの世界にも流行はあるのでしょうか?
「クロワッサンに限らずパン全体にいえることですが、以前はどこかのお店で新しいパンが流行ると、それが一気に広がっていくようなこともあったのですが、最近はそのような流れは少なく、それぞれのお店で個性を出していると感じます。
また、SNS映えするような派手な見た目のものが減り、日常で毎日食べられる美味しさ重視でパンを選ぶ人が増えているように感じます。地方では地産地消をうたい、パンに使う小麦や具材に地元産を使うお店が注目され始めています。
今後は職人さんたちの工夫や技術によって、それぞれのお店によってさらに個性のあるクロワッサンが出てくるのではないでしょうか。“サクサク”“ふわっと”“しっとり”など、さまざまな食感を楽しんでいただきたいです」(以下「」内、石臥さん)
ここからは、全国各地でパンを食べ歩いている石臥さんに「今気になるクロワッサン」や「これからトレンドになると予想されるクロワッサン」について伺っていきます。オーソドックスなものから、変わり種までバラエティ豊かで美味しいクロワッサンが登場します!
手土産にもおすすめ!カラフルなクロワッサン
null「2022年あたりからカラフルな生地を使ったバイカラーのクロワッサンをよく目にするようになりましたが、最近は多くのパン屋さんで定番アイテムになっています。
三重県伊勢市にある『 COQUELICOT ROUGE(コクリコルージュ)』はカラフルなクロワッサンがたくさん並ぶ人気店。ブルーやグリーン、ピンクなどこれだけの種類があるお店は珍しいので、どれにしようか迷ってしまいます。
もちろん、見た目だけではなく、中のクリームとクロワッサンとの相性も抜群で、生地の美味しさが引き立てられています。手土産にすると、とても喜ばれます」
三重県伊勢市御薗町王中島字垣溝766
新食感!手軽に食べられる「ざくざくクロワッサン」
null「以前にメディア出演した際紹介した、こちらの『ざくざくクロワッサン』。
クロワッサンをプレスしているので、食感はまさにざくざくです。シュガーバターとチーズの2種類で、チーズの方は甘くないのでおつまみにもなります。
最近韓国では薄型のクロワッサン『クルンジ』が流行していることもあり、近々日本でもブームがくるかもしれません。このようにクロワッサンをプレスしたり、具材を乗せたり挟んだり、別の形にしたり……色々な活用を楽しめるのも魅力の一つです」
愛知県:ゲートウォーク店、アスティ高蔵寺店、金山店、藤が丘店、ヨリマチFUSHIMI店、サカエチカ店
生地のしっとり感を楽しめる「クロワッサンサンドイッチ」
null「クロワッサンのサンドイッチも定番ではありますが、食べられるお店が増えていると感じます。キッチンカーで作りたてを提供してくれるお店もあります。サンドイッチに使うクロワッサンはしっとりしているので、同じお店のクロワッサンでも食感の違いを楽しめると思います。
食パンやバゲットを使ったサンドイッチとは違い、生地のコクを楽しめるのもクロワッサンサンドイッチの醍醐味。
写真は三重県の『あんぱん』というお店の『厚切りベーコンサンド』。このようにパンに負けないボリュームのある具材とも相性ばっちりで美味しいです。また、クリームやフルーツをサンドした、甘い系のクロワッサンサンドイッチを作るお店もあります」
三重県伊勢市御薗町新開725-7
期待度ナンバー1!動物性食品を使わない「ヴィーガンクロワッサン」
null「まだまだ食べられるお店は少ないですが、今後注目を集めると予想されるのがヴィーガンクロワッサン。ヴィーガンというと、パサパサなんじゃないか、物足りないんじゃないかと思われるかもしれません。そんな不安をさらりとかわしてくれるのが、東京・下北沢にある『UNIVERSAL BAKES AND CAFE』の『VEGANクロワッサン』。
バターを使わず、マカダミアナッツペーストとアーモンドパウダーでコクを出しているそう。こちらで出されるパンは100%ヴィーガンの素材を使っているのですが、とても美味しく満足感が高いです。今はパンの世界もどんどん健康志向になっていると思います。
やはり日常で食べたいのは、飽きのこない安心安全なパンですよね。とはいえストイックすぎるものは敷居が高いので、絶妙なバランスで美味しいパンを作っているこちらのお店は本当におすすめです!」
東京都世田谷区代田5丁目9-15
健康志向でバリエーションも豊富な「米粉クロワッサン」
null「輸入小麦が高騰していることや健康志向な人が増えている影響で、クロワッサンに限らず、これからは米粉を使ったパンもさらに増えていくと思います。米粉を使ったパンは、以前は小麦アレルギーの人が選ぶというイメージがあったかもしれませんが、今はアレルギー以外の人にも浸透してきていると感じます。
米粉の生地でクロワッサンを作るのはすごく大変だといわれていて、今回ご紹介している『Bakeshop SolSol』でも、試行錯誤されながら今の形になっているそうです。
お米の香りや甘みは小麦とはひと味違い、親しみやすい美味しさが感じられます」
愛知県碧南市三宅町1-82 サンレモン103
ブレイクの予感「パンスイス」
null「以前のように、大流行するパンが出てこないなかで、パン好きの人たちの間で話題となっていたのが『パンスイス』です。
海外で流行した、カスタードクリームとチョコチップをブリオッシュ生地で包んだ『ブリオッシュスイス』をベースにクロワッサン生地で作ったもので、すごく手間がかかっているパンです。
東京・自由が丘にある『MONT-NOM(モンノン)』では、パンスイスを看板商品にしていて、見た目にもきれいな様々な種類のパンスイスが並んでいます。クロワッサン生地の層の部分が表面に出ているので見た目はボーダーのようで、普通のクロワッサンよりもさらにパリパリ感が感じられるのが特徴。
これから、パンスイスを扱うパン屋さんも増えてくるかもしれませんね」
東京都目黒区自由が丘1丁目24-16
パンマニアがイチオシの絶品クロワッサン
null「私が今イチオシなのは、滋賀県にある『Pain du Marche(パン・ドゥ・マルシェ)』の『天然酵母のクロワッサン』。見た目はオーソドックスで王道のクロワッサンで、他のお店と比べると少し焼き色が濃いめなのが特徴です。
天然酵母を使った生地は外がパリッとした食感で中はふんわり。一口いただくと、バターの風味が口の中に広がっていきます。シンプルですが、贅沢な味わいでこのクロワッサンを買いにまた滋賀に行きたいほど!
超人気店なので行列・売り切れ必至ですが、皆さんにもぜひ食べていただきたい逸品です」
滋賀県草津市追分南6丁目19-8
冬はクロワッサンの旬!お気に入りを見つけてみて
null石臥さんによると、温度や湿度が安定する秋から冬にかけては、バターをたっぷり織り込んだ生地が美味しく食べられる、クロワッサンの「旬」だそう。
温かい飲み物と一緒にいただくのにもぴったりです。ぜひ、皆さんもお気に入りを見つけてみてください。
石臥博代(いしぶしひろよ) 一般社団法人パン好き協会代表
4才から50年以上ほぼ毎日3食パンを食べるほどのパン好き。 企画・プロデュースを手掛けるイベント「パンマルシェ」は出店数100店舗以上、来場者4万人と日本最大級のパンイベントとなっている。 『マツコの知らない世界』(TBS)『グッドモーニング』(テレビ朝日)『ストライク!』『大とくさん』(中京テレビ)『ゴゴスマ』(CBC)ほかテレビ・ラジオ出演実績多数。パンで人と人をつなげたいという思いで、FBグループ「パン大好きっ」メンバー2万人はじめ、パン好きコミュニティ運営中。
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大学卒業後、音楽系出版社に就職。20代の終わりに地元名古屋に戻り、実用書や人文書、コミックエッセイなどの編集者に。現在はフリーランスで書籍の編集をしながら、いくつかのwebメディアで記事を執筆中。プライベートでは「エコな暮らし」に興味あり。Instagram