日本では40年近くに渡って輸入されているお菓子缶
null『ラ トリニテーヌ』は、ビスケット製造が盛んなブルターニュ地方で1955年に創業。現在人気のこの蝶番(ちょうつがい)缶は、1985年にギフト・土産もの用として誕生しました。1980年代は日本においても成田空港が開港して数年経ち、海外旅行が急拡大した時代。こうした背景もあって、海外からの旅行者向けのお土産用として、『ラ トリニテーヌ』の蝶番缶は生まれ、発展していきました。
80年代の日本のお菓子缶といえば、現在のように多様なお菓子缶のデザインはなく、贈答用のかしこまったお菓子缶と輸入もののお菓子缶がわずかにある時代。海外旅行先で、現地のガレットが入ってこんなかわいらしいお菓子缶があったら、買って帰らずにはいられないですよね(笑)! しかもこの蝶番缶、発売年の1985年から日本への輸入も開始。すでに丸37年も輸入されているのです。
2大人気の「フラワー」&「ロイヤルキャッツ」
null廃番となったデザインも含めると、約500種類以上のデザインを販売してきた『ラ トリニテーヌ』ですが、2009年より販売している「フラワー」と2016年から販売している「ロイヤルキャッツ」は(写真参照)、いまだ高い人気を誇ります。
現在、あまりの人気にネットなどでは値上がりしてしまっていますが、本来のお値段は2000円前後。スーパーマーケット『成城石井』や百貨店の地下にあるスーパーマーケットなどで取り扱っている場合も多いので、ぜひ正規のお値段で取り扱っているそちらで探してみてください。
マニアイチオシは、30年以上前からある「ブレトン缶」
null「フラワー」と「ロイヤルキャッツ」も素敵なのですが、お菓子缶研究家としてイチオシは「ブレトン缶」。こちら、現在輸入されている『ラ トリニテーヌ』の中ではいちばん歴史あるもので、30年以上前から細々と輸入されてきたものなのです。マニアの私ですら、この缶を売っているのを見たのは20年以上前に1度きり……でも、現在はオンラインショップなどで見つけることができるようになりました。
1930~1950年代にかけてブルターニュにおいて広く普及していたビスケットの広告をオマージュしたクラシカルなデザインが魅力の缶です。
フランスではよくある蝶番缶。他ブランドでもたくさん使用されています
null『ラ トリニテーヌ』の蝶番缶がなぜここまで人気になったのか。それは多分、それぞれのデザインのかわいさやおしゃれさもあるのですが、
・ふたが迷子にならない蝶番缶であること
・留め具がついていて、カチッと音がして閉まるため閉め忘れの心配がない
・深すぎず、浅すぎない7㎝というベストな深さ
・スタッキングできる
などがこの缶が支持される理由でしょうか。深さだけでなく、縦13×横20㎝という大きさもいいのでしょう。コロナ禍になり、ヨーロッパではこのお菓子缶をマスク入れに使用しているという話も聞いています。
しかし、この『ラ トリニテーヌ』の缶、ことフランスではよくあるタイプの蝶番缶であり、他ブランドでも使用されています。私が知るだけでも『ラ・キュール・グルマンド』『オンクル・アンシ』『アングルマン』『ル ブルターニュ』などでも同じ型の蝶番缶が使われています。
使い勝手のいいお菓子缶ですので、ぜひ『ラ トリニテーヌ』以外でも見つけてみてください。
編集者・フードジャーナリスト。多くの料理本や暮らしの本、キャンプ本を手がける。自著に子どものごはん作りの闘いを描いた『闘う!母ごはん』、『素晴らしきお菓子缶の世界』(共に光文社)がある。 プライベートでは猫2匹&犬1匹と小学生、大学生の女の子の母。ハワイじゃなくてグアムラバー/スターウォーズマニア/アダム・ドライバーファン。Instagram