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「豆板醤」と「コチュジャン」違いを知れば、おいしく使い分けられる!

【食べ物の違い豆知識】を紹介するこのシリーズ。36回目は、料理に辛みとコクをプラスしてくれる2つの調味料について。料理研究家・時吉真由美さんにうかがいました。

まずは「豆板醤」と「コチュジャン」について調べてみると…

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豆板醤

トウガラシ味噌(みそ)。ソラマメ・トウガラシ・塩を発酵させた辛い味噌で、中国の代表的な調味料。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

コチュジャン

糯米{もちごめ}飯と大豆みそをあわせたものに麦芽粉もしくは米麹を加え、粉とうがらしを混ぜて、壺などの容器で熟成させてつくる朝鮮半島固有の複合調味料。

【出典】日本大百科全書(ニッポニカ)小学館

つまり「豆板醤」と「コチュジャン」の違いって?

どちらも似たようなピリ辛調味料ですが、豆板醤は中国、コチュジャンは朝鮮半島生まれ

国が違えば原料も違い、豆板醤はソラマメ・唐辛子・塩。コチュジャンはもち米・大豆みそ・麦芽粉または米麹・唐辛子とありました。

どちらも発酵させたもので、日本でいうお味噌のようなものなんですね。

言われてみると確かに…使い方や味わいの違いに納得!

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えっ、豆板醤って本当は辛くないの!?

日本では辛い調味料として認識されている豆板醤。本場中国では豆板辣醤(トウバンラージャン)が正式な呼び名。

料理研究家・時吉さんによると……

「豆板醤とコチュジャンは産地、そして原料に違いがありますね。辞書ではどちらも唐辛子が使われると書かれていましたが……じつは豆板醤の発祥地・中国の四川地方では、豆板醤というと唐辛子が入っていないものを指すんですよ。

唐辛子を入れたものは、豆板辣醤(トウバンラージャン)と辣の字が入るのが本来で、区別されるようです」(以下「」内、時吉さん)

日本では、豆板醤=辛い調味料という認識ですが、本場での正式な呼び名は“豆板辣醤”なんですね!

「“違い”という視点では、使い方も異なると言えるかもしれません。コチュジャンは鍋物や炒め物のほか、サムギョプサルにつけたり、ビビンバに添えてあったりします。火を通さない料理にも使える、まさしくお味噌的な扱いですね。

コチュジャンは火を通さない料理にも使える。
豆板醤は炒めて風味や香りを楽しむ使い方が一般的。

一方の豆板醤は、基本的には豆板醤を炒めてから具材を投入し、風味や香りを楽しむ……という使い方がメジャー。冷菜のタレなどに使われることもあるようですが、コチュジャンのようにお料理に添えてあるのはあまり見かけませんよね」

言われてみると、確かに豆板醤を料理に添えて出されたことはないかも……。

「色もペースト状な質感も似てはいますが、味わいは別物。豆板醤は強い辛み、コチュジャンはまろやかな辛みなのが特徴です。使い方と味わいが異なるので、お料理でそれぞれを代用し合うというのは難しいかもしれません」

豆板醤は中華料理に、コチュジャンは韓国料理に使うのが間違いなさそうですね。

あの陳建一さんに教えてもらった“黒い豆板醤”とは?

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「豆板醤というと赤色を連想されるかと思いますが、黒い豆板醤があるのをご存じですか?

郫県豆板醤(ピーシェントウバンジャン)”と言うんですが、これが本当においしくって、私は麻婆豆腐を作る時に豆板醤と混ぜて入れています」

ピーシェントウバンジャン……初めて聞きました。どういったものなんですか?

「原料は豆板醤と同じものですが、熟成期間が異なります。通常、豆板醤の熟成期間は数カ月ほどなのに対して、郫県豆板醤は3~5年も寝かされるんです。長期熟成された分、マイルドでありながら深みある味わいに。色が黒いのは何年も寝かせたからなんですよ。

お料理好きなkufura編集長も「郫県豆板醤」を愛用していました!
横浜中華街にある中華食材店「源豊行本店」から購入しているそう。

じつはわたくし、陳建一さんに四川料理を習いに行っていたことがありまして、その時に郫県豆板醤を教えていただいたのがこの調味料と出合ったきっかけ。それからというもの、四川飯店や中華街の中華専門店などに買いに行っては使っているほどお気に入りなんです。

今は、調味料メーカーのユウキ食品などからも出ていますし、通販などで手に入りやすくなりました」

おおっ!すごい方に習ってらしたんですね!! 話を戻しまして……郫県豆板醤は四川料理には欠かせない本場の調味料なんですね。

「日本で麻婆豆腐といえば、豆板醤を使った赤色のものが主流ですが、本場は黒みがかっているそうです。麻婆豆腐はもちろん、例えば市販の素を使って回鍋肉などを作る時も、ほんの少し加えて炒めるだけでおいしさがワンランクアップしますよ」

そんなお話を聞いたら試さずにはいられません!

本場の豆板醤と謳われていた「山城牌」の郫県豆板醤を購入。
市販の豆板醤と比べると郫県豆板醤は黒褐色。粘り気も強め。

ということで、早速ネットで検索。いくつか種類がある中で、家庭用サイズのものを購入してみました。

まず家にあった豆板醤と香りを嗅ぎ比べてみたところ、豆板醤はやや酸味があるのに対して、郫県豆板醤は角のないまろやかな感じ。

郫県豆板醤を使って麻婆豆腐を作ってみると、少量加えただけなのにこれまでにない深い味わいの一皿となって本当にびっくり!

ただし、辛さはいつもよりかなりマイルドな印象に。辛いのがお好きな方は、時吉さんのおっしゃる通り、豆板醤(=辛み)と混ぜていいとこどりするといいかもしれません。

これをスープに混ぜたお鍋も絶対においしいはずっ。気になる方はぜひお試しを!

味わいと同じく、なんとも奥深いピリ辛発酵調味料のお話でした。

 

構成/kufura編集部

時吉真由美
時吉真由美

料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表

土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。

Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。

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