石田ニコルさんと蛭田亜紗子さんが語る、下着にまつわる悲喜こもごも
null『フィッターXの異常な愛情』(小学館文庫)
あらすじ
広告代理店勤務の國枝颯子(32才)はうっかりノーブラで出勤してしまったある日、慌てて駆け込んだランジェリーショップ「Toujours Ensemble(トゥジュール アンサンブル)」で男性のフィッター・伊佐治耀に出会う。訝しがる颯子だったが、伊佐治はフィッティングしながら「脚を組むくせがある」「生理不順」「主食はラーメンとビール」など、颯子の生活習慣をズバズバ言い当てていく。それまで下着は「ネット通販で買った上下セット3,500円」という“枯れ気味”だった颯子が、伊佐治のランジェリーの魔法にかかり、自分自身を見つめ直すようになって……。
小説では、主人公の颯子はもちろん、酒に溺れたスキャンダル女優・本城夕妃、出産後の体型変化からセックスレスになった同期の美鈴など、颯子をとりまく人々もまた伊佐治のランジェリーの魔法によって、胸にしまいこんでいた“問題”に向き合う勇気を得ていきます。
人気読書サイトでは「すべての世代の女性が読むべき!」と圧倒的支持を得ているこの作品。ランジェリー好きを公言している石田ニコルさんもまた、この本の虜になったひとりです。
石田:生活習慣や日常の過ごし方は、怖いけどやっぱり体に全部出ちゃう。モデルという職業柄、それはとても実感しています。颯子が伊佐治に指摘されるシーンは、その通りだけど、もう少し優しく言って欲しいと思いました(笑い)。
蛭田:伊佐治はずけずけいう人なんですよね。もともと私自身は、颯子タイプというか、失敗をたくさんしてきてまして(苦笑)。高い矯正下着を買ったもののタンスの肥やしになってるとか、一目惚れして買ったインポートものの着心地が悪くてつけられないとか(苦笑)。人に見えない場所だから、手を抜いてしまう気持ちもよくわかるんです。
石田:私はミュージカル『RENT』(’12年)でストリッパー役を演じてからランジェリーの魅力にはまりました。旅先でもランジェリーショップを見つけると入って、必ずフィッティングしてから買うようにしています。だいたい100着くらいはありますね。
下着って、自分の肌にいちばん近い衣装。気合を入れたい時にはあえて見せブラにするとか、リラックスしたい時にはノンワイヤーのレースブラにするとか、その時の私を後押ししてくれる“お守り”みたいな存在なんです。
蛭田:さすが上級者(笑い)。
小説を書く前は、女性にとって下着って、なんとなく自分を締め付けるものというイメージがあって。それに加えて、女性は社会的なものや自分の思い込みで“こうでなければならない”という呪縛にかかっているとも感じていて。
だからこそこの作品では、その象徴ともいえる下着で、実は自分を解放できるということを伝えたかったんです。
石田:そうですよね。私にはあの色は似合わないとか、こんなデザインは好きじゃないとか、勝手に思い込んで年齢とともに臆病になるなんてもったいない。ランジェリーは見せる必要がないからこそ、誰にも気兼ねせず愉しめる。いちばん自分らしさが出せるアイテムだと思います。
「たまに、あえてワイヤー入りの“盛れるブラ”をつけると、背筋もシャキンとする」
null——トークショーの最中、参加者の質問に答えるコーナーも設けられました。なかでもkufura世代の女性から『2 人目を出産後、もっぱらノンワイヤーで横着していたら、体型はくずれ、20代のころより10kg太ってしまいました。女から遠ざかった気がする私でも、ランジェリーから自分磨きはできるの?』という質問には、おふたりからこんなアドバイスが。
石田:私もノンワイヤーは大好き。シルクとかレースのナチュラルな素材で癒されることも多いです。でもたまに、あえてワイヤー入りの盛れるブラをつけると、背筋もシャキンとするんですよね。視界も明るくなります。ポジティブで強い気持ちにさせてくれるランジェリーを1枚持っておくことは損にならないと思いますよ。
蛭田:そうですね。でもまず、今の自分の肉体を直視してから、自分の好きな体になろうと奮起するのもありかもしれません。ランジェリーショップのフィッティングルームの鏡で自分の裸を見るのって、結構ヘビーな衝撃ですから(笑い)。フィッターさんに相談して、自分に合った1枚を見つけられたら、颯子みたいに変わっていけるんじゃないかなと思います。
いくつになっても、人は自由に愉しんでいい。そんな元気をもらえたトークショー。ランジェリーとの付き合い方を少し見直していたら、想像以上の効果があるかもしれませんね。
取材・文/辻本幸路 撮影/浅野剛