今回の展覧会は、まさに20年ぶりの“大回顧展”の言葉の通り、初期の写実的な絵画作品から、彫刻作品、晩年の切り絵の作品まで、マティスの人生をたどるように構成されています。
思わず「マティスって、こんな作品も作ってたの?」と、言いたくなるような作品もたくさん……!
では、今回の展覧会を楽しむためのヒントをご紹介します。
漫画でわかる、マティスってこんな人
nullまずは、マティスの人生をざっくりご紹介。
当時の画家としてはかなり遅咲きのマティスです。
技法もモチーフも試行錯誤の連続でした。
さらに、絵画だけに表現方法を限定せず、彫刻、衣装、切り絵、雑誌『ヴェルヴ』の表紙のデザイン、教会のデザインなど様々なことに挑戦しました。
表現方法は違えど、どの作品もマティスらしさが感じられるところが面白いです。
お次は、『マティス展』の注目作品3点と作品にまつわるお話をご紹介します。
注目作品その1:「豪奢、静寂、逸楽」(1904)
null南仏でポール・シニャック(新印象派で点描作品が有名)に点描の技法について聞き、すっかり感化されたマティスは、さっそく点描に挑戦!
こんなに鮮やかで、きらきらとした作品が誕生しました。
今回の展覧会の目玉のひとつのこの作品ですが、実物をよーく見ると、慣れない点描のせいか、点々のサイズがばらけていたり、下書きの線が見えているところも。
マティスが「点描やってみたけど、やっぱり違うかも……」と葛藤した気配も感じ取れます。
こんな細かなところまでじっくり眺められるのも、実物を観られる展覧会ならでは。
ちなみにこの作品、制作の5年前に一目惚れして購入したセザンヌの絵「3人の浴女たち」から構図などの影響を受けているという説も。
当時生活が厳しかったにもかかわらず、妻が結婚祝いにもらったエメラルドの指輪を質に入れてセザンヌの絵を買い、その後37年間アトリエに飾り続けたほど、大のお気に入りだったようです。
注目作品その2:「コリウールのフランス窓」(1914)
null第一次世界大戦が始まり、友人たちはどんどん徴兵され、息子2人も戦地へ……。
マティス自身も志願したものの、体の弱さゆえ叶わず、取り残されたような状態に。
不安と後ろめたさを抱きながら、マティスが描きはじめたのは窓の絵でした。
「こんなに黒いマティスあるの?」と思わず言いたくなるような作品ですが、吸い込まれてしまいそうなこの黒を眺めていると、描かれていないはずの風景やマティスの心情が浮き出して、流れ込んでくるようで、なんとも魅力的です。
実はこの作品は生前に発表されなかったもので、サインも無く、ポンピドゥー・センターは“未完である”と目録に記載しているそうです。
うーん、謎めいていますね。黒の上に何を描くつもりだったのか想像するのも良いですね。
ちなみに、戦地に行けなかったマティスですが、エッチング作品を制作し、売ったお金で敵軍にとらわれていた民間人に救援物資を送る支援もしていました。
注目作品その3:「オレンジのあるヌード」(1953)
nullマティスが亡くなる1年前、83歳の頃の作品。
体が衰弱してからもなお、新しい技法に挑戦し続けるスゴさ!
病気のせいで50年以上続けてきた油絵が描けなくなったら、そのままやる気を失ってしまいそうなところですが、ここがマティスのすごいところ、さらなる挑戦に挑みます。
そんな人生最大の逆境からたどり着いた切り絵という手法は、マティス本人も「第二の人生」と呼んだくらいの発見でした。
アシスタントが色を塗った画用紙をハサミで切って、画鋲で留めてレイアウトを決めていたそうで、今回展示されている作品のオレンジの葉の部分にも画鋲で刺したような穴が……!
マティスファミリー相関図
null作品にたびたび登場するマティス一家とモデルたちをざっくりご紹介します!
ここに載っている人物名を覚えておけば、マティス作品をもっと楽しめるかもしれません。
「読書する女性」は展覧会の最初に登場する作品です。
「白とバラ色の頭部」「夢」も本展覧会で観ることが出来ます。
他にも家族たちが登場する作品がありますので、ぜひ探してみてくださいね!
子どもも楽しめるプログラム
null「マティス展」では、高校生以下のお子さんへ来場時に「ジュニアガイド」が配布されます。
「マティス展」の見どころや切り絵にチャレンジできるページなど、小さいお子さんも楽しめそうな内容。
こちらからダウンロードも出来るので、展覧会へ行く前の予習にもおすすめです。
公式ガイドブックや関連本もチェック!
null「マティスのことをもっと知りたい」「美術作品についてもっと知りたい」と思った方は、公式ガイドブックや関連本もぜひチェックしてみてください。
『「マティス展」完全ガイドブック』(AERA BOOK/朝日新聞出版)
マティス展の予習におすすめ! 今回の展覧会の見どころやマティスの人柄に迫る特集なども必見。
『マティスを追いかけて』(アスペクト)
「マティスが暮らしたパリやニースに行ってみたいなぁ〜」と思った方におすすめ! マティスに魅せられた夫婦がマティスをたどる旅に出る紀行本。
『色の魔術師アンリ・マティスものがたり』(六曜社)
親子でマティス展に行く予定の方に特におすすめ! マティスの画家人生を紹介する絵本。絵が鮮やかで見ているだけでも楽しい本。
『図解はじめての絵画』(小学館)
人気の高い“小学館の図鑑NEO”の新シリーズ“図鑑NEOアート”。日本と世界の名画が約360点紹介されており、大人でも読み応えがあり、絵画の解説から画材の種類、技法まで、絵画にまつわる知識欲を満たしてくれる本。
マティスの様々な時代に作られた作品がここまでまとめて観られる展示は、なかなか無いので、ぜひこの機会に作品を直に鑑賞しに行ってみてくださいね。
マティス展は東京都美術館で2023年8月20日(日)まで開催中。
日時指定予約制なので、事前の予約が安心です。
『マティス展』
会期:2023年4月27日(木)~8月20日(日)
休室日:月曜日、7月18日(火)
※ただし7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開室
開室時間:9:30~17:30、 金曜日は20:00まで ※入室は閉室の30分前まで
会場:東京都美術館 企画展示室
観覧料:一般2,200 円、大学生・専門学校生1,300 円、65歳以上1,500 円、高校生以下 無料
※日時指定予約制
公式サイトはこちら https://matisse2023.exhibit.jp