子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

お米を「美味しく長持ち」させる保存法を、五ツ星お米マイスターが伝授!

新米の美味しい季節がやってきました。みなさんは新米を楽しんでいますか? 今年は8月に「令和の米騒動」が起こり、不安も多かったと思います。そしてついに来てしまった米まで値上げ……。

そこで、お米を少しでも長持ちさせて美味しく食べる方法を、五ツ星お米マイスターの西島豊造さんに聞いてきました!

精米したら「冬眠させる」が鉄則! 

null

今年8月に起きた「令和の米騒動」。お盆を過ぎた頃、スーパーの棚から米が消えた様子が連日報道され、国民の不安を掻き立てたのは、まだ記憶に新しいですね。

もうすぐ新米が出回ると分かってはいても、そして、食生活が豊かになり、パンや麺など代替できる食品は山ほどあるのに、日本人のDNAに組み込まれているのでしょうか?「米がないと不安」というこの気持ち……。

しかしながら、五ツ星お米マイスターの西島さんは「精米した米のまとめ買いは意味がない!」と熱く語ります。

「精米した米は、いわば服を脱いで丸裸の状態。つまり、精米した瞬間から味落ちが始まります。お米に賞味期限や消費期限はありませんが、美味しく食べると考えるなら、精米した米は常温で2週間が目安。美味しさを長くキープしたい人は、精米した米を買ってきたら、少しでも早く冷蔵庫に入れて! 米は温度が低いところで冬眠させれば長持ちするんです」(以下「」内、西島さん)

このように野菜室に敷き詰めて保存するのがベスト!

簡単な保存法としては、2合、3合など、各家庭で食べやすい量に合わせて、密閉できる食品用保存袋に小分けにし、冷蔵庫の野菜室に敷き詰めておくこと。米の袋には空気穴が空いているので、そこからニオイや湿気が入ってしまうため、必ず密閉できる食品用保存袋に移し替えるのがポイントです。

「冷蔵すれば1カ月半は美味しさをキープできます。今の住宅は冷暖房が効き過ぎているので、常温で保存できる場所がありません。常温で保存すると、水分が飛んだり、虫がわいたり、カビが生えたり、いろいろなトラブルが起きています。

つまり家庭で米が冬眠できる場所は、冷蔵庫だけ! 中でも野菜室が最適な温度で、開閉も少なく安定しています。野菜室に米を小分けにして敷き詰めておけば、米が芯まで冷えて保冷剤代わりにもなるし、野菜や果物がゴロゴロ転がるのを防げて、なかなか便利ですよ」

ちなみに、米は水分を持っているので、冷凍室に入れると膨張して、解凍した時に米粒がボロボロに割れてしまうそう。そのため、冷凍保存はNGです。

自家製「真空パック」で1年保存が可能に!

null

必ず穴を空けてから、布団圧縮袋などに入れ、掃除機で吸引を。

さらにもっともっと長持ちさせたい人は、「真空パック」がおすすめと西島さん。西島さんは実際にこの方法で古米を美味しく食べているそう。

「精米した米は、空気に触れることで劣化が進みます。つまり真空状態で保存すれば劣化する速度を抑えることができるんです」

まず、精米した米を2合、3合など使いやすい量に分けて薄いポリ袋に入れ、フォークで穴を空けます。それをさらに布団の圧縮袋に入れ、掃除機で空気を抜くと即席“真空パック”に。これで、常温で1年間は持つそう。使いたい分だけを抜いて、また掃除機で空気を抜けばOK。冷蔵庫に入らない分はそうしておくのがベスト!

「私が食べているのは3年前の真空パック。毎年、新米を食べなきゃいけないので、余った米はこの方法で保存して無駄なく食べています。さすがにツヤはなくなった気がするけど、全然普通に食べられますよ!」

3年前のお米まで長持ちするなんて驚きました! 家庭でも簡単にできる方法なので、ぜひお米がたくさん余っている人はチャレンジしてみてください。

玄米なら「常温で半年」保存できる

null
健康志向の高まりにより、玄米への注目度はますます高まっている。

以上は精米した米の保存法でしたが、実は精米する前の玄米なら、常温保存も可能とのこと。

「玄米はいわば服を着ている状態。精米した丸裸の米よりもガードが堅いので、生活環境にもよりますが、常温で半年は美味しく食べられます。これが玄米の力です。

いま玄米を買った人は、梅雨までは大丈夫だと思ってよし。梅雨から高温多湿になるので、カビたり、味が落ちたりする可能性が出てきますが、それまでは常温保存でOK。とはいえ、なるべく涼しい場所で保管してください。

精米所で精米するなら1週間分、家庭用の精米器なら2〜3日分など、理想としてはこまめに精米して食べるのが一番美味しい」

精米時にとれる「ぬか」は、ぬか床作りに欠かせない。

さらに玄米ならではの嬉しい副産物が「ぬか」。昔の人はぬかまで多様に無駄なく使っていたと西島さんは教えてくれました。

「ぬか床や家庭菜園の肥料に使ったり、クッキーに入れたり。美肌効果があるので、お風呂に入れてもいい。昔の人は米ぬかを水に溶いて顔に塗っていましたよね。昔のタンスが黒光りしているのは、ぬかで磨いた証拠。木の隙間にぬかを埋め込むと黒光りするので、そのようにして一生ものの家具に仕上げていた。ぬかまで上手に無駄なく使っていたんです」

昔の人は米を全部食べ切って、ぬかまで余すところなく使い切り、まさにSDGsな暮らしをしていたのですね。スーパーで精米した米が売られるようになり、いつでも気軽に買えるようになった反面、昔ながらの知恵を私たちは忘れてしまったのかもしれません。

災害時は米よりも「ごはんパック」が有効

null

さらに、近年気になる災害時の備えについて。精米した米があれば備蓄できていると思いがちですが、生の米はいざという時に困る可能性も。

「災害時はどういう環境に陥っているか、想像する必要があります。精米した米は炊かなければならないので、キレイな水はあるのか、鍋や火は使えるのか、と考えるとリスクが高い。

一方、パックごはんなら温めることさえできればいい。海水や雨水も使えるし、水を選ばないのは大きいです。さらにアルファ米など、湯を沸かさなくても水を注ぐだけで食べられるごはんもあります。いつも保存しているお米は、あくまでも普段の生活用。緊急用に、災害時の備蓄用ごはんも用意しておくと安心です。

過去に、災害用にペットボトルに米を入れて保存する方法もありましたが、そちらも有効です。ペットボトルは丈夫なので、衝撃に耐えられ、ペットボトルごと引っ張り出すことができます。さらにお米を食べ終わった後、水を入れるなどして使えますよ」

確かに、米は「炊く」という調理が必要。いざという時に、炊くことができる環境にあるのか。そう考えると、パックごはんやアルファ米の用意も必須ですね。

水を注ぐだけで食べられる「アルファ米」は心強い。
レトルトの「ごはんパック」も備蓄しておくと安心。

炊き立てごはんが復活!美味しい冷凍保存法

null

最後に、炊いてしまったごはんの美味しい保存法を教えてもらいました。最近の西島さんのお気に入りは『ジップロック』のコンテナー「ごはん保存容器」。以前はラップで包んで保存していたそうですが、今はもう、この保存容器を手放せないとのこと。

「これは底が凸凹していて、レンジで温めた時に、この凸凹に水が溜まるからごはんがベチャッとしないんです。ムラなく加熱できて、ふたを開けてずらす角度で、自分好みの食感に仕上げることができます。ふたをずらす角度が大きいと水分が蒸発して硬めに、角度が狭いと水分がこもるからしっとり。

ラップだと下に置いたごはんが潰れてしまうので、3つ以上は重ねられませんでしたが、これはスタッキングできるし、薄型でスッキリ。冷凍庫の中で場所を取らないのもいいですね。もうこればっかり使っています!」

偶然、筆者も同じものを使っていますが、西島さんのおっしゃる通り、本当にごはんをふっくら美味しく炊き立ての状態に戻せるので、とても気に入っています。使い始めたら、ごはんの冷凍保存はこれ一択になりました。

炊き立てご飯は熱いうちにふんわりと。
粗熱を取ってから冷凍庫へ。
スタッキングできるのでスッキリ!

手順としては、冷えたごはんを冷凍保存すると、冷えたごはんの味になるため、炊き立てのごはんを熱々のうちに保存するのが良いとのこと。その際、ギュウギュウに詰め込まず、内側の線までふっくらと入れます。粗熱が逃げるまで1〜2分置き、湯気が出なくなったら、ふたをして冷凍庫へ。冷凍庫にアルミの皿など、急速冷凍コーナーがある人はその上で冷凍してください。食べたい時にふたをずらして電子レンジで加熱すればOKです!(1膳用なら600Wの電子レンジで約2分半が目安)

サイズ展開は、大盛用(約300g)、一膳用(約180g)、小盛用(約80g)の3種類。特に小盛用が女性や子どもに人気だそうです。

プロのお米の保存法、いかがでしたか? 今はまさに新米の季節、ぜひ無駄なく、美味しく、食べ切りましょう!

西島豊造さん。

西島豊造

五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しい米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。

岸綾香
岸綾香

ライター&エディター。『女性セブン』(小学館)で約 20年、料理、家事、美容、旅、タレント取材など、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。『kufura』では2017年のローンチより、料理やヨガなどを中心に動画記事を350本以上作成。好きなものは絵本、美術館、音楽フェス、自転車。週刊誌で鍛えられた体力&根性で 40代から子育て奮闘中。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載