ユニークな作品で知られる現代美術家トム・サックス
nullトム・サックスは、ニューヨークを拠点に活動する現代美術アーティスト。手製のシャネルのロゴつきのチェーンソーや、エルメスやプラダのロゴを手描きした包装紙で包んだマクドナルドのバリューセットなど、様々なイメージや価値観をミックスさせ、皮肉をきかせた作品で一躍有名になりました。
茶道に興味を持ったトム・サックスは、2012年から本格的に茶道を学び始めます。そして茶道具や茶室を工業用の素材や日用品を使って自作し、独自の“茶の湯”の世界を構築するようになりました。
今回の「トム・サックス ティーセレモニー」展は、日本の美術館では初めての個展。トム・サックスならではの視点と解釈で作り上げた“ティーセレモニー”を堪能しましょう。
トム・サックス流の茶の湯「ティーセレモニー」
nullまず、会場に入ってすぐに通されるのは、NASAのロゴ入りのチェア『NASA Folding Chairs』(2012)がずらりと並ぶ空間。この部屋で13分の映像作品『Tea Ceremony』(2017)をじっくりと観ることから展覧会はスタートします。
トム・サックスがきちんと路地を掃除し、客人をお招きしてお茶を振る舞う−−。茶事の一連がダイジェスト的に記録されている映像は、茶道具や茶室が彼の手作りであることを除けば、全く普通のこと。茶道を少しでもかじったことのある方なら、彼がものすごく真面目にお茶に取り組んでいることがわかります。
だからこそでしょうか、観ているとちょっと不思議な感覚に陥ります。
さて、この映像を見終わってからが展覧会の本番。次に進むと、映像の中に登場した茶室や茶道具が空間を埋め尽くしているのです。
茶道具の他に、茶の湯の席に関わりのある日本庭園にみられるモチーフも作品にしています。手作りの石灯籠や、うねる松の盆栽、本物の鯉が泳ぐ池など、基本的なコードは決して踏み外さない。なのに、どこかかわいらしい作品の数々を見ていると、トム・サックスが日本の様式文化と茶の世界を徹底的に研究していることがわかります。
筆者は最低限の茶道の知識しか持ち合わせていないのですが、お茶に詳しい人が映像や作品を観たら、ディティールの細かさにきっと驚くはず。自分もきちんとたしなんでおけばよかった……、と軽く後悔しました。
難しく考えずに作品を観るだけでも楽しめる
null全て手作りで、一見するとかわいらしさも感じさせるトム・サックスの作品は、子どもたちにも親しみやすいものばかり。池で泳ぐ鯉を眺めるだけでも楽しいですよ!
こちらはトム自作のNASAのロゴ入り茶碗。宇宙に傾倒しているからNASAのロゴなのでしょうか。かっこいい。
作品を観るうちに、茶道について、またトム・サックスの表現について興味や疑問を持つお子さんもいることでしょう。
お茶について少しでも知識のある方は、茶道とはどんな道具を組み合わせて成り立つものなのか、茶室や茶道具にどのような意味があるのか、一緒に話しながら鑑賞するのもいいですね。
日本の重要な文化のひとつである茶道。なぜ茶の湯なのか、自由でクラフト感溢れるトム・サックスの作品を通してみることで、これまで持っていたイメージとはまた違った角度で考え感じることができるかもしれません。もちろん、茶道についてあまり考えずに作品そのものを楽しむのもOK!
展覧会は6月23日まで。興味を持たれた方は、ぜひ『東京オペラシティ アートギャラリー』へ!
【展覧会情報】
会場:『東京オペラシティ アートギャラリー』
東京都新宿区西新宿3-20-2
会期:2019年4月20日(土)~6月23日(日)
開館時間:11:00〜19:00、金曜・土曜~20:00(30分前最終入館)
休館日:月曜
最寄り駅:京王新線「初台駅」徒歩3分
問い合わせ:03-5777-8600 (ハローダイヤル)