内面の葛藤を作品にぶつけ続けたムンク
null「ムンク展−共鳴する魂の叫び」 は、ノルウェー出身の画家 エドヴァルド・ムンク(1863〜1944)の約80年の生涯を総括する展覧会。
自身も病弱だったムンクは、少年時代に母と姉を相次いで病気で失い、“死”をつねに意識する環境に育ちました。それだけが理由ではありませんが、彼の作品は愛や絶望、孤独など、生きていく上で立ち向かわざるを得ない人間の内面をテーマとしたものが多くを占めています。
ムンクは自分の追うべきテーマを見つけると、何枚も何枚も同じモティーフで作品を描き続けました。下記写真に写る絵画は『接吻』をテーマにした作品群。
下記写真は『マドンナ』をテーマに描き続けた作品群です。
「何を考えているのかわからない」とも言われがちな芸術家やアーティスト。作品から興味・関心や意図を読み取ることが難しい場合もありますが、ムンクの場合は悩みや興味、関心ごと、精神状態がダイレクトに作品に現れています。
そのため非常にわかりやすく、展覧会場でしばらく鑑賞していると「あ、この頃のムンクは幸せだったんだろうな」とわかってくるほどです。
絵画に見てとれる激しい感情のブレとともに、人々の心を掴むのがその色彩。ムンクが愛した北欧の水辺の風景や月夜の風景は、コンパクトな版画作品であっても十分に人々の心を惹きつけるのです。
実は男は叫んでない! 名作「叫び」の真実
null今回の展覧会の目玉はもちろん、『叫び』。ムンクは同じモティーフで複数の作品を描いていると先ほどお伝えしましたが、『叫び』も数多く描かれています。それらの中で、今回展示されているムンク美術館所蔵のテンペラ・油彩画の『叫び』(1910?)は初来日。激しくも鮮やかな色彩の夕暮れが特徴的な作品です。
ちなみに、“テンペラ”とは卵の黄身などに顔料を溶いたもののこと。油絵の具が発明される以前は、絵画はテンペラで描かれるのが主流でした。
『叫び』という作品について、ムンクはかつて「凄まじく大きな叫び声が大地を貫くのを聴いた」ことがあり、その場面を描いたと語っています。
作品に登場している男は実は叫んでいるのではなく、うねりながら大きく叫んでいる大地の声を聞きたくなくて耳を塞いでいる状態ということ。たしかに、男の手は耳に当てられています。
まさか“叫んでいる”のは背景の“大地”だったなんて、驚いた方もいるのでは?
近くで筆致を、離れて全体の構図や色彩を鑑賞
nullこの『叫び』が展示されている場所は、じっくりと鑑賞できるように広めにスペースが取られています。混み具合にもよると思いますが、可能であれば近くで観るだけでなく、少し後ろに下がって作品を眺めてみてください。
絵の近くで観るときは、男の顔や背景のうねりなどに見られる筆の跡を観察し、どのように描いていたのかを想像してみると、よりムンクを身近に感じられるはず。
少し離れて観るときは、青やオレンジなどの強烈な色彩の組み合わせや、橋とうねる背景、そして男というシンプルな構図など、作品全体を意識して観てみましょう。
近づいたり離れたり、また斜めから観たりと、いろいろな位置や角度から鑑賞すると、インターネット上や画集ではわからない新しい発見があるはずですよ。
ポケモンも叫びポーズ! 大充実のコラボグッズ
null「ムンク展−共鳴する魂の叫び」は、グッズが充実しているのも特徴。
『ムンク スクリーム キャラメル』や『ムンク スクリーム ドーム』などのオリジナルグッズをはじめ、コラボグッズも大充実。
(株)ポケモンの『ポケットモンスター』の人気キャラクターグッズや、湖池屋のポテトチップス『カラムーチョ』とコラボした『ムーチョの叫び』などが販売されています。
すでに売り切れのものも多数あるそうですが、行かれた際はぜひチェックしてみてくださいね。
人間はいつの時代も葛藤し、悩みながら生きていくもの。絵画から感じるムンクの苦悩や内面を見つめる姿勢に共鳴するものがあるかもしれませんよ。世紀の名作を間近で観られるチャンス、この機会にお見逃しなく!
【開催情報】
会場:『東京都美術館』企画展示室 東京都台東区上野公園8-36
会期:2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)
開館時間:9:30~17:30(金曜は9:30〜20:00)
※ 入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜、12月25日(火)、1月1日(火・祝)、1月15日(火)
※ 12月10日(月)、24日(月・休)、1月14日(月・祝)は開室
最寄り駅:JR「上野駅」公園口よりすぐ