夫の57.1%、妻の95%が「自分が半分以上の家事をやっている」と感じている
nullまず、夫と妻の“体感の家事分担率”がわかる調査結果をみていきましょう。
明治安田総合研究所が2023年6月に発表した「恋愛・結婚に関するアンケート調査」では、結婚経験がある男女に家事分担の割合を質問しています。
仕事の日には、男性の57.1%、 女性の95.0%が「自分が5割以上家事を行なっている」と感じています。
休みの日には「自分が5割以上家事を行なっている」と感じている男性の割合が68.3%で、女性は91.9%。
つまり、男女の多くが「自分が半分以上の家事をしている」と感じており、数字のつじつまが合わないのです。
個々の家事の分担率については「妻の分担率」が高い
null前出の調査の質問では、家事を何割していると“感じているか”という、漠然とした質問の方法ですが、個別の家事の実際の分担率に関する調査結果を見ていくと、全く異なる結果が見えてきます。
内閣府の委託調査『令和元年度 家事等と仕事のバランスに関する調査報告書』では、以下の家事の分担率を調査しており、以下のような結果となっています。
- 食材や日用品の在庫の把握(妻・どちらかというと妻81.9%/夫・どちらかというと夫5.6%/夫婦同程度10.6%)
- 食事の献立を考える(妻・どちらかというと妻85.4%/夫・どちらかというと夫4.4%/夫婦同程度8.2%)
- ごみを分別し、まとめる(妻・どちらかというと妻64.4%/夫・どちらかというと夫18.8%/夫婦同程度14.6%)
- 家族の予定を調整する(妻・どちらかというと妻58.0%/夫・どちらかというと夫11.6%/夫婦同程度26.6%)
- 家計管理・運営(妻・どちらかというと妻62.0%/夫・どちらかというと夫18.8%/夫婦同程度16.5%)
- 親や親族との付き合い(妻・どちらかというと妻46.5%/夫・どちらかというと夫12.4%/夫婦同程度36.8%)
- 育児・子どもの教育(妻・どちらかというと妻53.6%/夫・どちらかというと夫3.6%/夫婦同程度21.0%)
親や親族との付き合いを除いたすべての項目で「妻」「どちらかというと妻」の割合が5割を超えています。
特に、食材・日用品管理や献立管理については、妻が担当しているという回答が8割以上。食材や日用品の選択、意志決定、購入から献立決めを妻が一貫して担う家庭が多いことがうかがえます。
さらに、男女別の回答内容を見ると、どの項目でも「妻」「どちらかというと妻」の回答割合について、夫の回答のほうが低くなっています。
細かい家事分担においてもお互いが感じている分担率の感覚に違いが生じているケースもありそうですね。
日々変わっている家事量。「家事マネジメント側」の負担が大きくなる傾向?
nullこのように家事分担率を自己申告した場合に夫婦間で“体感分担率”の差が生じるのには、考えられる理由が2つあります。
1つめは夫と妻が認識している家事総量に食い違いがあることです。
(1)2人が認識している家事総量の食い違い
仮に1日の家事の数が100個だとします。1人が100個中50個担当しているとして、もう1人が50個の家事しか認識しておらず、25個の家事を担当して「過半数の家事を担当している」と感じているケースです。
さらに、もう1つの難題は「家事の総量は、日々流動的である」という点。
ゴミの日、2日分の洗濯物が乾いた日、外食の日、買い出しの日……などなど、家事の量と内容は、“あの日”と“この日”とで異なり、100個の日も150個の日もあるのです。その変化をつかめずに自分のタスクだけをこなして「5割以上の家事を担っている」と感じているケースもあるかもしれません。
1つ1つの家事にはマネジメント業務とそれに付随した細々とした雑務が発生します。前出の調査では、妻が“献立作り”や“日常品管理”などのマネジメント業務を担っている割合が高くなっており、家事の全体像を把握しているほうがより多くの家事を担う構造が生まれやすくなるのではないでしょうか。
(2)2人が求めている「家事のゴール」「かける時間」の違い
もう1つは、1つの家事のゴールのイメージや、かける“時間”と“労力”が夫婦間で異なっていること。
例えば「食事の後片付け」という1つの家事に対するイメージが、一方は「テーブルの上を片付けて、食器を洗う」だとして、もう一方は「ガスコンロを磨いて、排水溝の生ゴミを集めて、シンクをピカピカに磨き上げる」というところまでイメージしていたら、2人がイメージするタスクの家事の総量は異なります。
さらに、個々の手際や熟練度によっても、かかる時間や負担感が違います。
家事の分担率は、時間で測るのか、労力で測るのか、プロセスの数で測るのか。
流動的で、なおかつ各人の主観に委ねられるものだからこそ、家事の分担率を“正確に測る”のは難しいのです。
「あなたは家事の全貌を知らない」と言いたくなる気持ちも
nullここまで、夫と妻が自覚する家事分担率の食い違いの理由について考察してきました。
少し前に、とある女優の「あなた(夫)は家事の全貌を知らない」という言葉がインターネット上で話題となりました。
筆者は“家事の全貌”という言葉の妙に膝を打ち、彼女の過去の著作物を読んだところ、日々の家事の“マネジメント業”(管理)と“プレイヤー業”(実際に手を動かす)に追われる様子がリアルに描写されていました。
そもそも、私たちの身の回りにある多くの組織は各部門の担当者がキッチリ決まっている“縦割り”であるのに対し、家庭内の家事はとことん“横割り”で、横並びの家事同士が複雑に絡み合っています。そのため「ここからここまでが自分の領域」ときっちりボーダーラインを引くことができません。
必然的に、家事の全貌を見渡す“鳥の目”と、細かいところを見る“虫の目”を使い分け、家事を横断できるメンバーの家事分担率が高くなる傾向があります。
配偶者がそれを知らずに相手の分担量を過小評価することで「あなたはこれしかやっていない」「自分はこんなにやっている」のすれ違いが生じ、夫婦間で不満の蓄積を招くこともあるでしょう。
家事の量は日々変わり、1人1人の“体感”の負担感が異なるからこそ“フェアな家事分担”は難題です。1日の家事の総量を細かく可視化し、互いの分担率を事細かに管理しようと試みても、かえってストレスを抱えることさえあります。
家事は誰にとっても面倒なもの。快適に暮らすための仕事ですが、過重な負担は担い手を不快にさせ、疲弊させます。だからこそ、家事にかかる労力を軽視せず、夫婦間で役割を臨機応変にスイッチしながら、“面倒な家事”と向き合っていけたらいいですね。
【参考】
自治体HP、プレスリリース、コラム、広告制作な