前回は、子どもが困ったときこそが親の出番、そして子どもへの困り事の聞き出しかたも教わりました。今回は、いざ親の出番が来たときや、保育園の対応に疑問を持ったときに、上手に先生とコミュニケーションがとれる方法を聞きました。
Q.先生が忙しそうでお話する機会をいつも逃してしまいます。
nullA.即答を求めず、連絡帳を使って冷静に相談しましょう。
「最近の保育園は、預かりが長時間化して先生も時間交代制のところが多いので、保護者の方おひとりおひとりの思いに十分対応できていないのが現実だと思います。
“先生の対応が悪いんじゃないかな”と思いながらずーっと過ごしていると、だんだん思いが固まってこじれてしまいます。それに、個人的な問題だったはずがお母さん同士の噂話に広まっていくのも良くないですね。
面談の時間を取ってらう方法もありますが、まずは“長いですが、心配していることを書きました。お時間あるときに読んでただけるとありがたいです”と連絡帳に書くといいですね。『今日、即答でなくてもかまわない』という形で相談すれば、先生も対応しやすいです。
お母さんも、送り迎えの時にその場の雰囲気で気を遣いながら話すよりは、冷静に自分の思いを伝えられますよね。
保育園全体に関することは、園長先生や主任の先生に交渉しても大丈夫です。そういうことをフランクにお話できる状態にしておくことが、園長先生達の仕事ですから。担任の先生には、“先生はお忙しいでしょうから、園長先生にお話ししてみますね”とひとこと言っておくといいですね」
先生がシフト制で働いると、朝に預けたときにはいても、夜に迎えに行ったときにはいなくて、なかなか話せないこともありますよね。
送り迎えの短時間で話すだけでは、いまいち意図が伝わらなかったり、先生に簡単なお返事しかもらえずモヤモヤすることも……。先生も親も忙しい保育園生活を送る上では、直接話すことにこだわらず、時間をかけた連絡帳のやりとりが、良い関係の構築に役立ちそうです!
Q.親が保育園に言い過ぎると、クレーマーと思われませんか?
nullA.子どもが困っていることについては、クレームとはいわないので大丈夫!
「子どもが困っていることを一緒に相談して、子どもが楽しく暮らせるようにすることは保育園の義務ですし、それがプロの保育士の役割なので、クレームではありません。
例えば、お子さんが、
“ごはんを食べるとき、保育園の先生が『頑張れ』って言うの。私のことを心配して言ってくれてると思うんだけど、心配しないで大丈夫だから、『頑張れ』って言わないでって先生に頼んで”
と親に話してきたとします。その時は、子どもに頼まれたんですから、親は先生に言っていいんです。そうすると、先生は”無理に食べさせていたんだな”ということに気づいてくれます。
大事なことは、お子さんが我慢して自分の思いを言えない状況にあることです。保育者は、“ご飯を無理に食べさせられたくない”ということや、どんなことも子どもの思いに耳を傾けないといけません。
子どもが自分の思いを表現できないような状況にあるときは、親が言ってあげていいので、それはクレームではありません。
理由もなく“うちの子は赤組じゃなくて白組にしてください!”という保護者をクレーマーというんです(笑い)。他には、我が子には根拠が無いのに、お母さんが気に入らないというだけで“あの子と一緒に過ごさせるのはどうかと思う”、とかね」
親が保育園にあれこれ言うとクレーマーと思われて、子どもが先生によく思われないのでは……と黙っていたい気持ちにもなりますが、子どもが困っているときは遠慮なく言っていい、むしろ言うべき!ということですね。
次回は、親が見ていないところで起こるだけにハラハラする、保育園でのお友達との喧嘩について聞きました。
【取材協力】
井桁容子(いげた ようこ)
2018年3月まで保育士として東京家政大学ナースリールムに42年間勤務。現在は、乳幼児教育実践研究家として、全国での講演のほか、『すくすく子育て』(NHK、Eテレ)への出演、『いないいないばあっ!』(NHK、Eテレ)の監修も行う。また、2018年6月に立ち上げた“子供から学び、豊かに生きる”をテーマにした非営利団体『コドモノミカタ』の代表理事を勤めワークショップを開催するなど、保育士からステージを移した後も精力的に活動している。小中学生が職業を学ぶために出版された各ジャンルのスペシャリストが集う『個性ハッケン! 50人が語る長所・短所』(ポプラ社)に、元保育士として登場。
撮影(井桁さんインタビューカット)/黒石あみ(小学館)