育児中の女性が「母親に向いていないかもしれない」と思った理由は?
null『kufura』編集部は、20~50代の女性95人に出産後に「自分は母親に向いていないかもしれない」と思ったことはあるか聞いたところ、以下のような回答割合となりました。
【出産後「母親に向いていないかもしれない」と思った経験の有無】
ある・・・66.3%
ない・・・33.7%
3人に2人が「自分は母親に向いていないかもしれない」と思ったことが「ある」と回答しています。この割合について、現在の心境や置かれた環境によって共感を覚える人も違和感を覚える人もいらっしゃると思います。
「母親に向いていないかもしれない」と感じたことがある女性に、その理由について質問したところ、以下のような理由が寄せられました。
(1) 育児を「つらい」と感じたことがあるから
「子どもはかわいいけれども、それ以上に子どもの世話や責任の重さがつらく感じられたから」(27歳・主婦)
「育児で眠れないことが辛すぎた」(37歳・その他)
(2)子どもにイライラしてしまうから
「自分のペースで物ごとが進められないことにイライラしてしまうから」(31歳・事務職)
「つい怒ってしまう。無意識に子どもを自分の所有物のように考えているんだろうなと思う」(35歳・総務・人事)
「子どもはかわいいけど、ギャーギャー言って言う事をきかない時はイライラするし、うるさいな~と感じてしまう事もあるので」(47歳・主婦)
(3)子どもより自分を優先したくなるから
「子どもの世話を最低限にして、自分のやりたいこともやってしまうことがある」(40歳・事務職)
「自分中心に考えてしまう」(50歳・財務・経理)
「自分がしんどいときに、子ども第一にすると自分がくたばってしまうし、バランスが難しい」(49歳・自営業)
「自分中心で生活したいと思ったから」(32歳・その他)
(4)母親「らしい」ことをしてあげられないから
「子どもを病院へ連れて行けなかった時。旦那に頼ってしまって、母親らしいことが一時期できなかった」(36歳・パート・アルバイト)
「子どもはとってもかわいいが、エンドレスに続くごっこ遊びやお人形遊びなどつらく感じてしまい、誘われても断ってしまうことがある」(37歳・専門職)
(5)「家のこと」をするのが好きではないから
「仕事の方が好きな気がする」(33歳・総務・人事)
「そんなに料理や洗濯掃除が好きじゃないことに気がついた」(31歳・事務職)
皆さんの回答を見ていると、子どもや育児をめぐる雑事に対してネガティブな感情を抱いたり、育児よりも自分のことを優先したくなるときに、「母親に向いていないかもしれない」と感じることがあるようです。
上記の“母親に向いていない理由”を裏返すと「いつも情緒が安定している」「家事も育児も楽しむ」「何があろうとも育児を優先する」といったイメージが浮かび上がってきます。 実際には、このようなイメージを実現するのは、至難のワザではないでしょうか。“母親であること”が、たくさんの規範や意味を帯びていることがうかがえます。
「母性」は自然に、十分に生まれた?
null続いて、今回「母親に向いていないかもしれない」と感じた経験がある63人の女性に、“母性”について質問したところ、61.9%が「自分には、母性が十分に生まれたとは思わない」と回答しています。
1つの1つの回答を読み込んでいくと、個々がとらえている“母性”の定義や、母性の形成過程がじつに漠然としていることが見えてきます。
「母性が自然に生まれた」という声、「自然には生まれなかった」という声、「自分に母性があるかわからない」など、さまざまな声がありました。複数のケースに分類して、皆さんの回答をご紹介します。
◆ケース1:子どもができたら母性も自然と生まれた
まず「子どもの妊娠期・出産直後に母性が自然と生まれた」と感じている女性の声です。
「妊娠期から、生まれたときから、やはり我が子は無条件にかわいい」(37歳・専門職)
「産声を聞いた瞬間から“この子を守らなきゃ”という感情がありました」(31歳・事務職)
「自分のお腹から出てきた子は無条件にかわいい。母親を頼ってくる時期も無条件にかわいい。反抗期もまた違う意味でかわいい。説明できないが、大人になった今もやはりかわいい。子どもはとにかく特別な存在」(55歳・主婦)
このグループでは、妊娠期、産後直後から子どもを無条件にかわいいと感じたという声が多くなっています。純粋にかわいいと思う気持ち、守らなければならないと感じるような気持ちを“母性”ととらえている傾向がありました。
◆ケース2:「義務感」「責任感」で後から母性が形成されていった
続いて、子育てをしながら徐々に母性が形成された、という声です。
「母性がある、というよりは手一杯で努力していて今があると思っているから」(28歳・主婦)
「出産したら母性がわくかとも思いましたが、ただただ責任感だけです」(40歳・パート・アルバイト)
「初めての出産、子育てで右左分からず何もかもが初めてだったので母性に目覚めるというか“親になったんだから”と周りに言われていろいろ自分なりに努力してきたという感じです」(36歳・パート・アルバイト )
「出産してすぐは子どもがペットのような存在(ある日突然増えた生き物)みたいな感覚だったが、時が経つにつれて自分が面倒をみないといけないなという責任感が生まれてきた。他にも最初は嫌だなって思っていた泣き声や暴れ方も可愛いと許せるようになり、心の許容量が増えたと感じたから」(30歳・営業・販売)
子どもを育てる過程で“母性”が形成されていったと感じている人の声もありました。このグループでは、“努力”“責任”“義務”というキーワードが頻出しています。子育てをしながら、がんばって“母親”という“型”に自分をあてはめていくようなイメージかもしれません。
◆ケース3:今も自分の母性の有無に懐疑的
自分の中にある母性について「十分でない」「わからない」と感じている女性の声です。
「子どもはかわいくて大事にしたいと思えたけど、時々それを忘れたくなる」(39歳・主婦)
「いまだに子育ては大変だし投げだしたくなる」(51歳・総務・人事)
「今でも自分のことを我慢するということが辛いと感じる時があるから」(37歳・その他)
「自分の育てられかたなのか、“愛着”とか“愛情”とかわからない」(32歳・主婦)
「目に見えるものでもないし他人と比較できることでもないのでどうなのかよくわからない」(39歳・公務員・団体職員)
このグループでは、自分の中の母性に懐疑的な声が目立ちました。子育ての楽しさより大変さがまさっているという声も聞かれます。育児が大変、つらい、忘れたいといったネガティブな感情を抱く自分自身をネガティブにとらえているケースも見受けられました、
実際にはそうした感情は多くの母親が抱きうるもので、その原因を母性と関連づけることはできません。
まとめ
null以上、今回は「母親に向いていないかもしれない」と感じたことがある女性の声をご紹介しました。
近年、育児を取り巻く環境が変化し、親が担う役割は濃密になっています。現代社会で子どもを育て、複雑化する社会に送り出すためには、ヒトの本能だけで育児を完結させるのは不可能です。
しかし、今もなお、目に見えない“母性”という言葉は期待をもって使われており、その重圧を感じている人は少なくないようです。
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