『コロコロコミック』などの付録もココで!
nullこんにちは。今回は『ぺぱぷんたす』にとって、なくてはならない存在、「岡安紙工所」さんをご紹介します。
紙工所とは、印刷物の断裁や折りや抜き、箱などのパッケージなど、紙を加工する会社のこと。この岡安紙工所さんは、紙の加工の中でもペーパークラフト、つまり紙工作をメインにされている紙工所なんです。
紙工作といえば、『小学一年生』などの学年誌や『幼稚園』をはじめとする幼児誌、『コロコロコミック』などコミック誌の付録の定番。その付録の加工を一手に担われているのが岡安紙工所さんです。『小学館の図鑑NEO クラフトぶっく』なども手がけられています。
1枚の平面の紙に抜きや折り筋などの加工がされ、それを読者が、切ったり、折ったり、ツメを差し込んだりしていくと、立体の自動販売機やガシャポン、手足が動くロボットなど、魅力的な「紙のおもちゃ」ができあがるなんて、改めて考えるとすごいことだし、ワクワクしますよね。
「ぺぱぷんたす」の表紙加工も!
null『ぺぱぷんたす』も001号の「最初からやぶれた風」な表紙から綴じ込み付録や本誌、そして006号に至るまで、あらゆるところで岡安紙工所さんにお世話になっています。
お手元に『ぺぱぷんたす』がある方は、ぜひ見ていただきたいのですが、岡安紙工所さんが加工されたページの仕上がりの美しさは、長い年月積み重ねてこられた技術と経験のたまもの。
どうしたら美しく、そして製本や流通時の事故がなく(よれてしまったり、はずれてしまったり)読者に届けられるか。さらに、読者の「組み立てやすさ」や「遊びやすさ」、ものによっては「触り心地」まで考えて、加工してくださっています。
「ぺぱぷんたす」で加工をお願いするときは、細かくて難易度の高いものが多いので、デザインの段階からご相談させていただくことがほとんどです。編集部も001号から経験を重ねてきているので、ここ2〜3年は「この加工はできるな、これはできないな」というのが、だいぶわかってきました。
とはいえ、ただ紙を型で「抜く」だけではなく、製本、流通のことも考えて加工しなければならないので、加工所と製本所、同時に確認が必要です。 最初の頃は、「こうしたい」「これはできない」というようなやりとりが、編集、制作担当、加工所、製本所の間で、何度も何度も繰り返されました。
でも「経験値」が増したことと、「ぺぱぷんたすがやりたいことはこうだよね」という暗黙の了解&理解(ギリギリまで攻める!笑)と、信頼関係(無理なものは無理、という判断や修正をゆだねられる)ができあがっているため、今はやりとりも本当にスムーズ。
安心してお任せできる頼もしい存在です(製本の話はまた今度!)。
「岡安紙工所」の工場に行ってきた!
nullさて、7月のある日、そんな岡安紙工所さんにお邪魔してきました。案内と説明をしてくださったのは、岡安信幸さんです。ちょうど、ぺぱぷんたす006号の「表紙」と、「たっちコースター」が機械の上で加工されていました!
1枚の紙に3枚面付された「たっちコースター」がセットされ、1枚ずつ送り出されていきます。少しでも紙がずれると、抜き取った時に絵柄がずれてしまうので、精密にチェックされて運ばれていきます。
ヌキ型は、機械の上部に下向きにセットされていて、下部にはぶ厚い鉄板があります。その間に紙が入り、油圧で鉄板が押し上げられ、紙に「ヌキ」(切れ込み)や「スジ」(折り筋)が入ります。鉄板の動きが波打っているのは、真っ直ぐ押し上げると、真空状態になり、刃が倒れてしまうから。鉄板を上げる油圧は250トンになる時もあるほど強いそう。
加工が終わったら、不要な部分は職人の手によって取り外されます。この「むしり」という作業は、見ているだけで気持ちいい。
型には微細な凸凹や傾きがあるので、できる限り均一に圧力がかかるよう、型の裏側にはムラとり紙が細かく貼られています。職人の経験で、刃が均一に入っていない箇所(ムラ)を見極め、そこにムラとり紙を貼り付けて、高さを調整するのです。
このムラとり紙の厚みは0.1mmほどだそうで、場所によっては2枚、3枚重ねて貼ることも。どれだけの精密さで「抜き」がほどこされているかがよくわかります。
ムラを丁寧にとることで均一な美しい「ヌキ」ができあがります。一人の職人が責任を持ってこのムラとり作業を行い、機械で抜く何倍もの時間がかかるほど、大事な工程だそう。職人の技の見せ所です。
「パタパタ パッタン」は、こんなふうに!
006号の「パタパタ パッタン」。細かい切り抜き線をめくっていくと、下から鮮やかな色が現れて、立体感あふれるページが出来上がる、というもの。
「丁寧に、大切に扱うほどいいものができる」
null加工所の中では大きな音を立てて、機械が稼働しています。
「わ〜! 表紙だ!」「お〜! たっちコースター!」と 私も興奮。時間をかけてデザイナーや作家さんと膨らませてきたものが、ここまで辿り着いた。なんだか子どもの行事を見守り、応援する母親の気分です。 ひととおり、説明をしていただき、岡安信幸さんにインタビューしました。
加工の面白いところは?
「手をかければかけたほど、丁寧に大切に扱えば扱うほど、いいもの、綺麗なものができるところですかね。適当にやったら適当なものしか出てこない、そういう気持ちで取り組んでいます」(岡安さん。以下「」内同)
大事にしていることはなんですか。
「まずは編集担当の方や製本所さんが、“何をしたいのかな、何を求めているのかな”ということをいちばんに考えます。
たとえば、角が丸いトランプをヌキでやりましょうと言う時。製本所さんは“ここは跳ねてほしくない(製本するときに外れてほしくない)から、角丸の中心に『トメ(つなぎめ)』を打ってください”という。
でも、そうすると、はずした時に角の丸い部分にひっかかりができて使いにくいし、見た目も触り心地も良くない。それだったら角丸にする意味がない。
角丸がはねるのが嫌だったら、角丸が終わったところ数ミリの両側に『トメ』を打てば跳ねないのでは?と提案する。そのような、せめぎ合いには気を使っているつもりですね」
『ぺぱぷんたす』について、どう思われていますか。
「すごいことを考える人がいっぱいいるんだな、というイメージです。毎回“こういうことができるんだ”と唸ります。例えば005号の、空中に放るとくるくる回って落ちてくる『ぺパセイジン』とか、すごいなーって感心しました。
002号の、本を開くと蛍光色の紙が扇状に広がる『いろのハープ』も綺麗でしたね! そして、これを本にすることができるんだという驚きもあります。
紙を扱っている職業ですが、まだまだ自分が知らないことがあるなと思いますし、こんな可能性があるんだ!という楽しさを毎回感じさせてもらっています。
それに1冊にこれだけの種類の紙を使っている本なんてないと思いますからね、間違いなく」
毎回無理難題を言ってしまって申し訳ないっていう気持ちもあるのですが。
「でもね、やってみないとわからない部分もあるし。やってもダメなものもあるかもしれないんですけど(笑)、でも、やってみないとね!っていう感覚ですよね。
僕なんか面白い!と感じてもらえればいいわけで、それが励みになりますから。そのために最善を尽くすという感じで、楽しみながらやらせていただきたいなと思っています」
インタビューをさせていただいて、そして加工の現場を拝見させていただいて、改めて、この1冊の本に、どれだけたくさんの人の「手」や「思い」「時間」「知恵」……(まだまだある!)が込められているかを想像し、胸が熱くなりました。
『ぺぱぷんたす』の熱量が可視化できたら、それはそれはとてつもないものなのではないか!と。
改めて関わってくださる全ての方に感謝するとともに、読者の方にその熱が、ほんわかでも伝わるといいなと思っています。
「ぺぱぷんたす006号」(2,300円 税込)。
最新号の006号も、切ったり、折ったり、くしゃくしゃしたり、紙の楽しさを存分味わえる企画が盛り沢山。身の回りのもので遊びをぐんぐん広げられるページもあります。
おうち時間にぜひ!
息子ふたり、猫二匹、ウーパールーパーとのドタバタ暮らし。余裕のある生活に憧れるもゆっくりできない性分。20年ほど女性誌を編集した後、幼児誌の編集に携さわり、2017年『ぺぱぷんたす』を立ち上げ。帰宅後10分でつくる料理のマンネリ化が、今最大の悩み。