006号が発売になりました!
nullこの記事がアップされている頃には、『ぺぱぷんたす』の最新号が書店に並んでいると思います。もしかしたら、お手元にお持ちの方もいらっしゃるかもしれません(ありがとうございます!)。
今号の表紙は、なんだかやけに白くて、ちょっと不思議な感じがしませんか? 実は……白いところには「ヌキ」が入っていて、プチプチと「トメ」(型で紙を抜くときに、完全に抜かれずに残っている部分)をはずして、立ち上げると、ぺぱぷんたすのキャラクターが「こんにちは!」と現れてくるという、ポップアップ表紙なのです。
そして、立ち上げることで、3ページめが現れて、白かった表紙が、一転、カラフルな表紙に生まれ変わるという仕掛け。
「ぺぱぷんたす」は、001号から表紙で冒険を!
null実はぺぱぷんたすの表紙は、001号からかなり凝っていて、必ず何らかの仕掛けがあるんです。
001号は破れた(加工の)表紙。最初から破ってあったら、子どもたちも本をちぎったり折ったりしやすいのでは?という意図から。 002号は、ぺぱぐるみ? 本を立てて少し広げて置いてみると、本なのにぬいぐるみのような親近感。目と口が抜かれている(穴があいている)ので、そこからのぞいて楽しむこともできます。
003号は「ぺぱマンション」。いろんなぺぱちゃんが窓から顔を出していて、 扉を開けたり閉めたりできる仕掛け(扉の開け閉めってワクワクしませんか?)。
004号は、ブラックライトの箱と一体型のカバーがついているのですが、カバーの方は、しわくちゃのぺぱちゃんをプチプチはずして、紙人形にして遊べる仕掛け。カバーを外すと、現れる本の表紙には、カバーのぺぱちゃんが、くしゃくしゃになって丸まった姿になっているという……(笑)。
005号は、ぺぱちゃんの口が抜かれていて、3ページ目の「ヌキ」の「トメ」をプチプチと外して、表紙の穴に後ろから差し込むと、ベロになる仕組み。アイスクリームをペロペロするぺぱぷんたすちゃんに。
「表紙の仕掛け」は流通のルールとの闘い?
null振り返ってみると、どの表紙も「ヌキ」加工が! 毎号技術的にできる、できない、製本的にできる、できない、流通的にできる、できない、と、すったもんだした記憶があります。
特に流通上の問題は大きく、「表紙サイズは、本誌の4/5以上とする」「本誌に打ち抜き加工(穴を開けること)をする場合は表紙面積の10%を基準とする」などの決まりがあり、まず、しょっぱなの001号でガツンと壁にぶち当たりました。
「大胆に破ってある表紙」というアイデアを実現するのは、とってもハードルが高かったのです。表紙にそんな明確なルールがあったとは……。恥ずかしながら全く知らなかった私は「えー、なんで??? 何が問題なの???」と戸惑い、意気消沈。
でも、ダメ出しされても全然めげず、妥協せず、嬉々として次のプランを考え出す祖父江慎さんの「うまくいかなさ」を喜ぶ姿や、なんとかしてそのアイデアを形にしようと一緒に知恵を絞ってくれる制作部の担当者、加工所の方、製本所の方の真摯な姿に触れ、本を作るということは、単なる「本作り」ではなく、職人さんたちと一緒に作る「ものづくり」であり、「ものづくり」の醍醐味はこういうところにあるのだなと改めて思ったのでした。
流通上のルールは、読者の皆さんに事故なく本を届けるために当たり前のものなんです。大量部数の雑誌を短時日に印刷、製本の作業を行うため、また取引会社から書店(小売店)までの流通段階における荷さばきや梱包などの人的作業を支障なく行うため、さらに返本処理(古紙流通まで)を効率的に行うためのもので。表紙だけでなく、特殊印刷(匂い印刷など)、現物見本や付録の材質や形式、表紙やバーコードの表示などについても、きちんと定められています。
これまで「毎号同じ形」の雑誌を作っていたときには、自分が担当するコンテンツに注力していて、こういう仕組みやルールにまでは気がついていませんでした。反省……。
006号の表紙は「びっくりするくらい白い表紙」がいい!
nullさて、そんなこんなで006号。
「書店で並んでいるときに、びっくりするくらい白い表紙がいい」「ロゴと、ぺぱちゃんが、真ん中にちょこんといるだけ」「でも実はまわりに型抜きされたペパちゃんが潜んでいて、読者が抜きとると小さい紙人形のぺぱちゃんが生まれるなんていいんじゃない?」というアイデアからスタート。
100%ORANGEの及川さんから届いたラフは、白いペパちゃんが私の予想をはるかに超えてみっちり!それがものすごくかわいいくて悶えたところで我にかえりました。「ん、これ、加工や製本は可能なのだろうか……」と。
ヌキにもルールがあって、ヌキとヌキの間は5㎜は開けなければならない、表紙の背側(綴じられている側)には、表紙を開きやすくする折筋が入るので、そこは避けなければならない、小口側(背の反対側)も1㎝は開けなければならない、など。
製本も抜きが多ければ多いほどシビアになります。ちょっとでもトメが外れて機械に引っかかると、表紙がだめになるだけでなく、本誌もだめになってしまうから。
祖父江さんに相談してみたら……
さて、どうしたものか、と祖父江さんに相談メールを送ると、「シールみたいに抜きはゆったりさせて、裁ち落とし付近や“重なるかも”な子は、なしにするとかとか? ちょっと表紙のレイアウトしてから考えましょうか。イラストも、方針も、とってもすてきでバッチリだけど、できるかどうかですね」というお返事。
一旦祖父江さんにお任せして、ちょっぴりドキドキしながら、デザインラフが出てくるのを待ちました。そして出てきた表紙デザインは……。配置が変わっているものの、ぺぱちゃんたちは一人も欠けることなく表紙に収まっています。
でも……あれ? 逆さになってるではないですか。
そうです!祖父江さんは「ぺぱ人形のカタチをシールのように型抜きする」のではなく「一部分を表紙に残すことで立ち上げる、ポップアップ」に変更していたのです。
さらに、表紙のぺぱちゃんを立ち上げたときに、その下からカラフルなペパちゃんのシルエットが出てくるよう、3ページ目をデザイン。表紙では欠けているぺぱぷんたすの文字も、ぺぱちゃんを立ち上げることでぴったりつながるという……緻密に計算された表紙でした。
デザインも素敵な上に、ぺぱちゃん全部を抜きにしないことで(つまり表紙とくっついている部分を作ることで)強度を増し、製本でのリスクを減らしていたんです。すごいと思いませんか?
印刷・加工・製本…「チーム・ぺぱぷんたす」みなさんの力を結集!
null懸案事項だった、抜きや製本に関しては、加工所、製本所の方に検証をしてもらいました。
シール風のゆったりしたヌキでも致し方ないかな、と思っていましたが、かなりギリギリのところまで頑張ってくださり、ペパちゃんの形状にあった、繊細で美しいヌキ加工が実現(抜き型は、シール用の細い刃のものを使っています)。
そして、トメの位置や数を調整することで、製本にも耐えられるようにしてくださいました(この辺りは、全面的にお任せ!)。そんなこんなで、祖父江さんのデザインは、何の修正もなく、そっくりそのまま、今、私の手元にあるこの表紙が実現したのです!
001号の頃から考えると、すごい進歩です。毎号の経験を重ねてきて、だいぶいろいろなことがスムーズに行くようになりました。
印刷・加工・製本所の方が、クリエイターの希望をできるだけ叶えようと、ギリギリのところまでチャレンジしてくださることがわかっているので、私たちも安心してお任せすることができる。
そういった関係で本が作れること、「チーム・ぺぱぷんたす」の皆さまに、できあがった本を愛でながら、心から感謝しています。
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息子ふたり、猫二匹、ウーパールーパーとのドタバタ暮らし。余裕のある生活に憧れるもゆっくりできない性分。20年ほど女性誌を編集した後、幼児誌の編集に携さわり、2017年『ぺぱぷんたす』を立ち上げ。帰宅後10分でつくる料理のマンネリ化が、今最大の悩み。