Q.AIが急成長している現代。どんな育て方をすれば、これからの社会で通用する人になれますか?
nullA.我が子の感情を理解した声掛けを積み重ねましょう
【実践フレーズ】「どんなふうに感じた?」「何か困ったことがあった?」
「大人の指示に従順に従うことが“いい子”と思っている大人がとても多いのですが、言われたことを言われた通りにするということは、人間の特性を奪ってロボットになるということになります。
AIを積極的に使おうとするメリットの中に“文句を言わない”“嫌と言わない”“疲れたと言わない”などが挙げられていました。
言われた通りにするだけなら、AIのほうがよほどすぐれていることになってしまいます。
人間じゃないとできないことは、相手の感情やその時の雰囲気を察して、しなやかに対応できること。このような力は、幼いころから自分の気持ちをわかってもらえたり、自分の思いを表現できる機会を積み重ねることから理解していく体験が大事なのです。
子どもが泣いたり騒いだりするときに、“ダメ!”と一方的に怒ってやめさせるのではなく、理由を尋ねながらていねいなやり取りをしていくと、やがてのびのびと自分らしさを発揮し、他の人の気持ちにもなれるようになります。そういう人が世界で通用する時代です」
子どもと楽しさを共有すれば、豊かに育つ!
null「のびのびと育てるには、お父さん、お母さんも子どもと一緒に楽しそうにしていることがイチバン!
“これって面白そうだね”、“本当にいい匂いだね”、“それ、カッコイイ形だね”とか、その子が思っていそうなことを言葉にして、“お父さんもお母さんも、同じように感じているよ!”と表現してあげましょう。
大人の方から“あそんであげる”という気持ちで関わることよりも、お子さんがやりたがっていることに心を添わせてあげることが大切です」
そこで、絵本の読み聞かせのときに子どもの心に寄り添う読み方を教えていただきました。
「ちゃんと聞きなさい!」よりも…
【実践フレーズ】「ドキドキするね」「おいしそう」「だいじょうぶかなあ」
「大人も一緒に感じながら読めばいいんです。
“静かに聞きなさい”“まだ読み終わってないでしょ”と、お行儀よく見るということだけにとらわれると、我慢の時間になってしまい、面白さがなくなってしまいます。
そのような強制的なしつけで育った子どもは、“わかった、鬼が島に行って、鬼をやっつけたんでしょ?”と、結論だけが大切と捉えるようになり想像力が育たないので、最後まで楽しんで集中できなくなり、語彙も増えません。そうすると、自分の気持ちを表現することも下手になってしまいます。
大人がいろいろなことを一緒に楽しんでくれて、自由な時間の中で思いを巡らせる機会を与えられた子どもの方が、その後の学習能力や語彙力が圧倒的に高くなるといわれています」
みんなと同じでなくて大丈夫!個性を応援するのが親の仕事
null「社会は、将棋で例えるなら“歩”や“角”、“飛車”など、様々な動きをする人で成り立っています。“歩”だけでは成り立たないので、自分の子どもが将来どういう動きをするのか、生まれもった気質や特性を見抜いて幼いころから応援していくのが親の役割です。
そのためには、親の思い通りの動きではなかったとしても、いまどんな気持ちでいるのかを言葉にしてあげて、理解していることを伝えなければいけません。
子どもは“わかってもらえた!”と思うだけで、“あれ、やってみる!”という意欲が湧いてきます。それが、AIには無い、人間の心の不思議なんですね。
バラはバラ。チューリップはチューリップです。おじいちゃんやおばあちゃん、お父さん、お母さんの思い通りの花に咲かせることはできません。
その子がもともと持っているものをしおらせないで、いちばん美しい形で咲いていられるように、力強く応援し続けてあげられるといいですね」
取材の最後に、「自分の思い通りに子どもを育てようとするのは、心の無いロボットを育てていることと同じですよ。それでは、何のために子育てしているの?ということになってしまいます。子どもと一緒に自分の心も育って、人間として成熟できることが子育ての醍醐味なんですよ」と子育ての神髄を思わせる言葉で励ましてくれた井桁さん。
子育てに困って、悩んで、迷って自信が無くなってしまうとき、温かく勇気づけてくれるお話やフレーズをたくさんいただきました!
最終回は、筆者と、読者から寄せられた“井桁さんの魔法のフレーズ&メソッドを実践した結果”を紹介します。親も子も“心が育ってる!”と実感するエピソードが満載です!
【取材協力】
井桁容子(いげた ようこ)・・・保育・子育てカウンセラー。東京家政大学短期大学部保育科を卒業後、同大学が併設する乳幼児の保育・研究を実践する保育施設に42年間勤務。2018年4月より保育の現場からステージを移すことになり、全国での講演のほか、『すくすく子育て』(NHK、Eテレ)への出演、『いないいないばぁっ!』(NHK Eテレ)の監修も行う。著書は、『保育でつむぐ子どもと親のいい関係』(小学館)など多数。男女の母でもある。
撮影(井桁さん)/黒石あみ
取材・文/駿河真理子