Q.怒らないと言うことをききません。本当は、優しいお母さんになりたいのに…
nullA.今からでも大丈夫。大人が間違っていたことを認めれば、子どもはいつでも許してくれます。
【実践フレーズ】「心配しすぎてガミガミ怒っちゃったけど、ママ(パパ)が間違ってたら言ってね」
「私の子育てを振り返っても反省するところなのですが、親ってね、子どもよりも偉い状態でいようと思って虚勢を張っているところがありますよね。
でも、“私も間抜けな人間のひとりで、親になることもあんまり慣れていません。まぁ、許してください”という気持ちで子どもと接していいと思います。
そうやって子どもと関わる中で、大人が間違えたことに気づいた時、“あなたのことが大好きだから、心配して言いすぎちゃったり、怒っちゃったり、あなたの気持ちを決めつけちゃってごめんね”と口に出して伝えるようしていると、子どもも“自分が間違えて悪かったな”と思った時に相手に伝えることができる人に育ちます。
子どもは、大人が何度間違えても許してくれる存在です。そのことに気づかないで、何度も子どもを怒ってしまう人が、意外と多いですね。実は、大人の方が子どもに甘えているということなんです。許してくれる子どもの存在に、謙虚に向き合えるといいですね」
育て急いでしまう理由は、親の育ち方が影響していることも
null「いまのお父さん、お母さんは、みんなと同じであることを良しとされ、さらに学歴が高いことが成功につながると思っている人が多いようです。
つまり、そういうお父さん、お母さんを育ててきたおじいちゃん、おばあちゃんが、“習い事をさせた方がいい”、“塾に行かせた方がいい”というようなことを言ったり、孫に厳しさを求める傾向にあるようですね。
お父さん、お母さんも、自分がされてきたように“早くいい子に育てなきゃ!”と思い込んでしまって、自分自身も、親としても、優等生でいないといけないと思ってしまう。そうやって、自分を追い詰めてしまいがちなので、我が子の出来栄えを周りと比べて、急いでしまうんですね。
また、便利でスピーディーな社会で生きてきたために、何でも早く解決したいと思ってしまう。子どものイヤイヤ、きょうだいや友達との喧嘩、公共の場でのマナーなど育児に困ると、“それ、正解!”といますぐ答えがほしくて、子どもの気持ちを聞く時間も、子どもに理由を話す時間も待てないんです」
生き物の育ちはみんな同じ。幼虫の時代を大切に
null「“ヤダ”とか“ダメ”とか、自分の思いを表現しながら育つ幼児期の子どもに、“ごめんね”とか“いいよ”を無理に言わせてしまうと、それは、“大人の期待通りにしなさい”ということになってしまいます。それでは、子ども自身が本当にわかったことにはなりません。
また、たくさんの間違いや失敗をしてもいい時期なのに、それをさせてもらえないと、自信を失ってたくましく生きていけなくなってしまいます。
表面的ないい子を育て急ごうとすることは、青虫を“いますぐ飛びなさい”と空に放り投げていることと同じです。球根に“いますぐ咲きなさい!”と言っても、咲かないことを大人は知っていますよね。
“周りよりも早く、いい子を育てなきゃ!”と思うことは、逆効果なんですよ」
目の前の我が子とのやりとりに精一杯で、いますぐなんとかしたい!と思って発する“叱り言葉”が、小さな心にヒビを入れていることも……。そんな時は“急がない、急がない”と自分に言い聞かせて、井桁さんの魔法のフレーズの出番です! 親子になってわずか数年、お互いにわからないことや間違うことだらけの幼虫時代だと思って、慌てず焦らず関わっていきたいですね。
次回は、人工知能が急成長するなか、どんな育て方をしたら未来で活躍できる人になれるのか伺います。
【取材協力】
井桁容子(いげた ようこ)・・・保育・子育てカウンセラー。東京家政大学短期大学部保育科を卒業後、同大学が併設する乳幼児の保育・研究を実践する保育施設に42年間勤務。2018年4月より保育の現場からステージを移すことになり、全国での講演のほか、『すくすく子育て』(NHK、Eテレ)への出演、『いないいないばぁっ!』(NHK Eテレ)の監修も行う。著書は、『保育でつむぐ子どもと親のいい関係』(小学館)など多数。男女の母でもある。
撮影(井桁さん)/黒石あみ(小学館)
取材・文/駿河真理子