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息子(10歳)に、自分の意見をぶつけてくれる大人たち、最高だ!【ママはキミと一緒にオトナになる#43】

コラムニスト・ライターとして活躍する佐藤友美(さとゆみ)さんが、10歳の息子との会話を通して見えてきた新しい景色、新たな気づきなどを伝えてくれる連載エッセイの第43回。

どれを選ぶかは、彼が決めればいい

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もうだいぶ前のことになるけれど、留守を頼んで息子を見てもらっていた母親に、我が家の教育方針を聞かれたことがある。

細かい内容は忘れたけれど、
「今日、息子氏からこういう質問されたんだけど、どういうふうに答えればいい?」
と聞かれたので、
「え? 別に、お母さんが思った通りに言ってくれればいいよ」
と答えた。

母は不思議そうな顔をした。
「でも、あなたたち(両親)と意見が違ったことを言ったら、困らない?」
と聞いてくる。
「全然、困らない。家族であったとしても、意見が違うことがあるのは、当たり前だと思ってるから」
そう伝えると、母はふーん、と言った。

「だいたい、社会に出たら課長と部長の意見が違って困るなんてこと、しょっちゅうあるじゃん」
「まあね」
「彼のことを大事に思っている人の助言なら、別に、全員違うこと言ってくれていい。どれを選ぶかは、彼が決めればいい」
「なるほど……よくわかった。じゃあ、そうするね」

母は最初、驚いたみたいだったけれど(そういえば、我が家は父と母の意見が常に一致している家、というか一致させている家だった)、すんなり納得してくれたみたいで、それ以来、母は母なりのやり方で息子に接してくれているようだ。

いろんな人の価値観に触れて、時には混乱しながら、大きくなってくれたらいいなと思う。

息子にいろんな意見を伝えてくれるのは、家族だけではない。

「そんなの、お金払えばすむ話じゃん」

私の家は、友人がよく遊びにくる。
そういう時、息子はだいたいゲームをしながら、その場にいるともなしにいるのだけれど、時々大人の会話に口を出してくることもある。

先日、ちょっと席を外した間に、息子が何やら私の男友達と言い合いをしていることがあった。

「そんなの、お金払えばすむ話じゃん」
と言う息子に、
「なんでもお金で解決できると思うなよ。まずは、相手の気持ちを考えるのが大事だろう」
と、友人が応戦してる。
何について揉めているのかわからなかったけれど、お互い真剣だ。

「すぐにお金の話をするのも、品がないぞ」
と、指摘をした友人に、
「どうして? お金の話をするのは汚いことじゃないよ」
と、息子もゆずらない。

相変わらず、何の話をしているのかわからないけれど、お互いに一生懸命主張をしていて、とっても素敵だなあとほくほくしながら見守っていたら、
「ママだって、お金の話は大事なことだから、隠すことじゃないって、いつも言っているよ!」
と、急に矛先がこっちに向かってきたから、あわわわわとなった。

急に息子と友人からの視線をあびた私は
「うん、でもお金のことって、いろんな考え方があるよね。息子氏も、そう言われると不快な気持ちになる人がいるってことは、知れてよかったじゃん」
みたいな優等生発言をして、その場は終わった。

それにしても、いろんな人がいろんな意見を、しかも真剣に、息子に語ってくれるのは、ありがたい。
友人にも、教育的指導をありがとうと伝える。

「ぜったい感動するから、お前も読めよ」

よくご飯を食べにいく屋台で、店主のおにいちゃんが、息子にぐいぐい漫画をオススメしてきたこともあった。
「オレ、あの漫画を読んでから人生観が変わったんだよ。すげーいい話なんだよ。お前も読めよ。ぜったい感動するから。ほら、貸してやるよ」
と、漫画を押し付ける。

「いや、別にいい」
と、その場ではクールに答えていた息子だけれど、家に帰ってきてから
「ねえ、さっきのおにーさんが言っていた漫画、やっぱり読んでみたい」
と、言い出した。

1巻だけkindleでダウンロードしてあげたら、どハマりしたらしく、全巻買ってというので、紙の漫画を大人買いした。
彼は毎日こつこつ、それを読んでいたようです。

その後、息子とまたそのお店に行った時のこと。
おすすめされた漫画を、息子が読み始めたことに喜んだお兄さんは、鼻息も荒く「どのエピソードが好きか」だの「どのキャラが一番いいか」など矢継ぎ早に質問し、「早く13巻まで読み終わってよ」と、圧をかけていた。
テンションが高いお兄さんの反応に対して、息子は相変わらずちょっと引き気味に、でもちゃんと相槌をうちながら聞いている。

もう、最高だ、こういうの。

親ではない大人が、本気の本気で自分の好きなものを押し付けてくるのって、めちゃくちゃ最高だと思う。
こんな大人たちに(大人じゃなくてもいい)、もみくちゃにされて育てばいいと思う。

彼の周りに、愛情たっぷりの大人たちが入れ替わり立ち替わり現れてくれることに、私はいつも心から感謝している。

 

画・中田いくみ タイトルデザイン・安達茉莉

◼︎連載・第44回5月15日(日)に公開予定です


佐藤友美(さとゆみ)

ライター・コラムニスト。1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経てファッション誌でヘアスタイル専門ライターとして活動したのち、書籍ライターに転向。現在は、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆する。 著書に8万部を突破した『女の運命は髪で変わる』など。理想の男性は冴羽獠。理想の母親はムーミンのママ。小学5年生の息子と暮らすシングルマザー。

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