この言葉に対してのリアクションはさまざまですが、社会の中の自分の立ち位置によっても、受け止め方はまるで違ってくると思います。
子どもは軽い気持ちで“親ガチャ”という言葉を使っていたとしても、親にとっては聞き流せなかったり、逆にSOSサインを発していても冗談と受け止められたり……と、あたらしい造語にありがちな“すれ違い”も生じやすくなっています。
今回『kufura』編集部は、父親の立場から“親ガチャ”という言葉の反応を探ります。
「子どもに親ガチャと言われたら、なんと答えますか?」という質問を投げかけてみました。
以前お届けした【母親編】では、さまざまなリアクションが寄せられましたが、今回は父親からのリアクションをご紹介します。
ご協力いただいたのは子どもがいる227人の男性です。皆さんの回答は6種類のリアクションに分類することができました。
1:ギャグで返す・ノリを合わせる
null父親からの回答は、母親よりも“親ガチャ”という言葉をライトに受け止める言葉が目立ちました。目立ったのは、以下のような反応です。
「『はい、残念でした』。どうしようもないことだから」(37歳・技術職)
「『子ガチャが当たった』と答えます」(44歳・総務・人事・事務)
「親は選べないので、この親でうまく対応しなさい」(56歳・研究・開発)
「『当たる方が珍しいのだ』と言う」(51歳・その他)
「『俺もだ。代々親ガチャに外れっぱなしだから気にするな』と言う」(47歳・研究・開発)
「あきらめてね、人生は自分で切り開いて!」(59歳・コンピュータ関連技術職)
子どもの“ノリ”に合わせていい塩梅に突き放している印象を受けます。ざっくばらんに本音を言い合える親子関係が垣間見えます。
2:応酬する
null今回のアンケートで意外と多く寄せられたのが「やられたらやり返す」のパターンです。
「『子ガチャに外れた』。やられたらやり返す」(50歳・営業・販売)
「『こっちも子ガチャ外れたわ!って言われたらどう思うねん』と言う」(51歳・営業・販売)
「『子ガチャを外した』と皮肉を言ってやる」(44歳・その他)
“子ガチャ”という言葉で言い返すという声が、13人から寄せられており、母親よりも割合が多くなっています。言い方によって、冗談にも本気にも聞こえそうです。
3:諭す
null子どもの言葉を本気で受け止めて、別の価値観や生き方を指南するという声です。
「『お前が俺を選んで生まれてきた。俺から学ぶことがあるはず。俺もお前から学ぶ』と言う」(51歳・その他)
「『外れがそのうち当たりに変わる』と言ってあげる」(49歳・その他)
「『外れてないよ、アタリだよ』。一生懸命育ててるから」(47歳・営業・販売)
「『当たりだってそのうち気づくよ』と言います」(41歳・その他)
「『違う親になったら、それはそれで苦労があるぞ』と言う」(40歳・コンピュータ関連技術職)
人生を“当たり”と“外れ”に分類することは簡単ですが、現実はそんなにシンプルではありません。
子どもに寄り添いながら、別の価値観があることを示すという回答も見受けられました。
4:叱る・怒る
null“親ガチャ”という言葉が“逆鱗”に触れるケースもありました。
「『親を馬鹿にするな』と注意する」(52歳・総務・人事・事務)
「じゃあ1人で全てやれ」(47歳・その他)
「『なら自分で当たりにしなさい』。親に頼ること自体がありえないから」(43歳・医師)
「『大切に生まれた命に何を言っているんだ!』と怒る」(49歳・その他)
一生懸命育ててきたのに“外れ”と言われたら、理不尽さから怒りの気持ちが生じるのも無理はありません。子どもにとっては「自分の親に言ってはいけないこと」を学ぶ良い機会になりそう。
5:認める・謝る
null子どもの言葉を否定せず、謝るという人も見受けられました。
「『その通りだ』と言うしかない。ガチャであることは間違いない。しかし、日本に生まれたということだけでも幸せだったと、いつか思えるように育ててる」(58歳・会社経営・役員)
「素直に認め謝る。親を選べない気持ちはわかる」(53歳・公務員)
「『ごめんね、もっとがんばるね』と言う」(41歳・その他)
「『頼りないお父さんでごめん』という」(54歳・金融関係)
思いのほかダメージを受けていそうな親の様子は、子どもの罪悪感を刺激しそうです。
6:質問で返す
null「『親ガチャって何?』と言ってどうでもよいことに気づかせます」(55歳・金融関係)
「『親ガチャって何』って聞く。意味が分からない」(58歳・その他)
「なんだ親ガチャって」(50歳・公務員)
端的ながら複雑なニュアンスを含む“親ガチャ”という言葉の具体的な意味を問われたら、子どもはゴニョゴニョと口ごもってしまいそう。
今回は子どものいる父親の“親ガチャ”という言葉の反応を探りました。
秋の初めに一気に注目を集めた“親ガチャ”という言葉は、一過性の流行で終わりそうな気配も漂っています。
この言葉が流行した背景には、家庭の経済力や家事・育児にかけられる時間・質の格差が広がっており、子ども自身の力で状況を変えることが難しくなっている閉塞感を表しているという意見もあります。
この先、仮に“親ガチャ”という言葉は消えても、状況が劇的に変わることはありません。今後も子どもたちの間に漂う空気感を大人の側が敏感に察知していく必要がありそうです。