しかし、そうしたインパクトのある言葉を覚えた子どもたちは、しばしば深く意味を考えずに気軽に口にして親をびっくりさせるケースもあるのではないでしょうか。かつて子育て世代が子どもだった頃、“新語”として登場した言葉を親との会話で使って戸惑わせたように……。
子育て中の皆さんは、子どもが“親ガチャ”という言葉を覚えてきて、何かの拍子に「親ガチャに外れた」と言ってきたら、どんなリアクションをすると思いますか?
今回は、子どもがいる20~50代の女性189人女性に、子どもに「親ガチャに外れた」と言われたときになんと返答するか、シミュレーションしてもらいました。
回答を分類すると、5つの反応がありました。
1:怒る・叱る
nullまず最初は“親ガチャ”という言葉を使うことをいさめるという声です。
「『そんなこと言うのは人としてどうかと思う』と言う。虐待やヤングケアラーなど言いたくなるような親もいるとは思うが、ちょっとした不満でそういう言い方をするのはいただけないから」(45歳・主婦)
「『よその家で育ててもらいな』と言う」(44歳・主婦)
「『自分が親になったとき、子どもから言われたら、どんだけ落ち込むか考えてみて。だから軽い気持ちで言わんといて。本気の本気で外れたと思ったときしか言わんといて』と言う。本気で言われたときはこっちに反省点もあるはず」(45歳・総務・人事・事務)
「なんでそう思うのか聞く。ふざけていっているのなら、悲しいのでそういったことは言っちゃダメとしかる。(私が『子どもガチャ外れたと言ったらどう思うか』と諭す)」(31歳・主婦)
「『他の家庭はいいなと思うのは仕方がないし、私もうらやましいと思ったこともある。でも、そういう言い方はどうかと思うよ。悲しいよ』という」(46歳・主婦)
言葉が新しければ新しいほど、個々がその言葉に抱くイメージはバラバラです。
ユニークな語感を気に入った子どもが軽い気持ちで使ったとしても、場合によっては一生懸命がんばっている親自身を、そして誰かを傷つける言葉であることを自覚させるという声がありました。
2:ジョークで返す
null「『違う意味で当たりだね。はずれに見事当たったということ』と返す」(48歳・営業・販売)
「『来世は、はずすなよー』という。ガチャをまわしてるのは自分だと自覚させる」(56歳・主婦)
「『まあ、そういう運命だと思って、自力でがんばって人生逆転してね』で、『自分の子どもに自分の思うような育て方をしてあげて』と言う」(49歳・主婦)
自分の子どもが本気で言いそうにないことを踏まえたうえで、軽く言われたから軽く返す……という感じでしょうか。ジョークをかぶせながらも、一枚上手な回答ぞろいです。
3:子どもを励ます・諭す
null「『自分の人生やから、自分でどうにでもできる』といいます。結局、親の人生でなく自分の人生を生きるのだから親は関係ない」(37歳・コンピュータ関連技術職)
「『よその家庭がよく見えるけど、実際はそうでないこともある。うちにはうちの良さがある』と伝える」(39歳・その他)
「『自分も親ガチャに外れたので、運だからしょうがない。親だろうと自分以外の人間に期待してもしょうがないので、自分で変えられるものを変えて、自分ができることをやって生きていくのが大事』と伝える。親ガチャにあたったからといって必ず幸せになって人生がうまくいくというわけでもないから」(44歳・主婦)
「『誰にでも良いところと悪いところがある。よその家の良いところしか見てないから、外れたと思うかもしれないけど、この親にはこの子と、決まっている』と説得する」(55歳・その他)
「『親に子ガチャに失敗したと言われたらどう思う? 人生なんて、ガチャみたいに選択肢の連続だわ』と、言う」(39歳・その他)
子どもがちょっとした不満から“親ガチャ”という言葉を使うケースもあるかもしれません。そんなとき、“ガチャ”で巡り会った自分の人生を受け入れ、好転させていくための心構えを説くという声が聞かれました。
4:軽く謝る
null「ごもっともな理由なら『ごめんね』と言う。ふざけた理由なら怒る」(35歳・ 主婦)
「ごめんね。あとは自分で努力してね」(45歳・主婦)
「『そっか、ごめん!』子どもにとってハズレと思うなら仕方ないので、開き直って明るく謝る!」(57歳・ その他)
ジョークのケースと同様に、過剰に反応せず「はいはい、ごめんね」という感じで流しています。
5:ショックを受ける
null「ショックすぎて何も言えないかも。とりあえず絶句して号泣します」(53歳・その他)
「悲しくて言葉が出ない」(32歳・営業・販売)
「とっても残念。育て方のなにが悪かったのか落ち込む」(47歳・総務・人事・事務)
「何も言えない。仕方ない。本当のことだし。自分も正直そう思うし。内心はこっちも子ども選べないと思うけど、口にはしてはいけないから言わない。ただ親ガチャとか言葉が悪いし、世にその話で話題になるのはよくない」(50歳・主婦)
先述したように新しい言葉ほど解釈の個人差・世代差が大きいため、“親ガチャ”という言葉の攻撃力は未知数。人によっては“親ガチャ”という言葉によって家庭を全否定されたような気持ちになるケースもあるのかもしれません。
以上、今回は子どもに「親ガチャで外れた」と言われたケースを仮定して、その返答内容を考えてもらいました。
子育ては、お金も労力も愛も時間も必要な長期間のプロジェクト。中には何かが著しく不足していて、子どもがひどく苦しい思いをしている家庭があり、不足しているものを家族の力だけでは補うことが難しくなっている現実もあります。
今回、“親ガチャ”という言葉に対するリアクションはさまざまでしたが、気軽に乱用されることで本当にサポートを必要とする子のSOSがカムフラージュされてしまうことは避けたいものです。