子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

【脱都会!野ざらし荘だより#3】傷んでいたお家の改装が終わり、ようやく普通の暮らしが始まりました

30数年住んだ東京を離れ、神奈川県の横須賀へ移住を決めた私。連載第三回目の今回は、引っ越したものの所々傷んだ母屋の改装を終え、ようやく普通の暮らしが始まった野ざらし荘の改装後の暮らしぶりをお届けします。

連載第二回目はこちら

1カ月弱の改装が終わり、部屋の壁が取り払われ、土間が打たれた家は開放感のある風通しのよい家になりました。

天井を取っ払ってしまったので、夏は屋根に照りつける太陽が直に伝わってきて灼熱、冬はぴゅーぴゅーと隙間風が吹き抜けて極寒。風通しが良すぎるのが玉にきずですが、遊びにくる友だちが(半ば自己防衛のため)火鉢や布団、扇風機を持ってきてくれるおかげで、ほぼエアコンをつけずに、一年の暑さと寒さを凌げています。

強風が吹くとガラス窓が一斉にガタガタ唸り声…今ではそれも慣れっこに

null
ほとんど手を加えていない和室部分。昼には温かい光が差し込む

家を取り囲む建具は古く、強風が吹くと磨りガラスが一斉にガタガタとうなり声のような音を立てます。泊まりにきた人は家が吹っ飛んでしまうのではないかと本気で心配してくれるのですが、住んでいるとそれも慣れっこになってしまいました。

むしろ建具のガタガタとともに外から聞こえてくる様々な音が面白くって、ラジオ感覚で聞き耳を立てています。家の全方向から聞こえてくるのは高台にポツンと立つ家ならではなのでしょうか。

日常的にたくさんの音が聞こえてきます。海から風に乗って聞こえてくる夜の汽笛は船が行き交う横須賀ならではの旅情を誘う音。すぐ下にある中学校からは毎朝早くから吹奏楽の練習が聞こえてきて、最近の流行歌を知り、テニスをする女子たちのハイトーンボイスに元気づけられます。カラスがトタン屋根をバタバタ走り回るのは日常茶飯事で、ああ今日もカラスたちが喧嘩しているな、とカラスの会話に耳を傾けています。

古いものと新しいものが同居

null
玄関を開けたらすぐに土間が広がる。古い壁と土間がすんなりと馴染んでいる

何もなかった家に机が運び込まれ、棚に食器が並べられていくと、殺風景だった家が少しずつ活気づき、家が息を吹き返したように明るい印象になりました。庭に少しずつ花や実をつけるようになった植物を摘んで花瓶に生けるのも楽しみの一つになっています。

改装を手伝ってくれたみんなの汗水が入り混じった土間や、押入れの板材を利用したカウンター、保存瓶がずらりと並ぶ棚、どれも使えば使うほど味のある色に変化していき、日常の風景に溶け込んでいきます。

改装したてだというのに真新しさはなく、古い部分と新しく作り直した部分がすっかり馴染んでいます。

梅酒、金木犀シロップ…棚には手に入った季節の果実や野草で作った保存食がずらり

null
収納力抜群の吊り下げ棚

料理はしなくて良いならそれに越したことはない、という程度の関心の低さなのですが、ケチが高じてか保存食作りは別格で、常に季節の果実や野草に目を光らせ、手に入ると嬉々として仕込んでいます。幸い夫が料理が好きで、作ったものをこまめに使ってくれるので、私は罪悪感なく保存食作りに専念できます。

梅の季節になると梅干しに始まり、梅酒、梅ジュースと梅仕事に勤しみ、金木犀が香りだすと金木犀シロップや砂糖漬けを作ったりして、気づけば瓶詰めが溜まっているのが我が家の台所です。

季節の酵素シロップや自家製コーラは常備
何年ものだかわからない梅干しなども並ぶ

台所の天井にL字で組んでもらった収納棚は、思う存分瓶詰めを収納できる棚が欲しい、というわがままな要望を叶えてもらった特注品です。見上げれば作ったものが一目でわかるので飲み忘れも、食べ忘れもなく、とても重宝しています。季節の果実や瓶詰めが並ぶ姿は、見ているだけで幸せな光景です。

押入れの板材で作ったカウンター…今では居酒屋気分で使っています

null
カウンター部分と家を支える大黒柱

押入れの板ともらった廃材を再利用して作ったカウンターは、立っていてちょうど寄りかかりやすい高さに作りました。その際、カウンターの縁を1cm手前に出すか出さないか、モダンさを追求したい大工の友人と昭和な雰囲気を残したい私の意見がぶつかりましたが、結局、私の頑固さに折れて縁が出た形で作ってくれました。普通の人だったら大してこだわらないであろう部分であれやこれやと悩み、アイディアを凝らしてできた家だけに、愛着もひとしおです。

カウンターの裏側はカップの収納棚に
カウンター越しのキッチンには所狭しとものが置かれている

普段は畳やテーブルで食事をとっていますが、友達が来たり、遅い時間に軽く夕飯をとるときなどにちょっと気分を変えてカウンターを使います。カウンターからちょっとしたつまみが出てくるともう居酒屋気分。そのときに、「このカウンターの縁がね」なんて細かい話ができるのも自分で改装に関わったからならではの喜びです。

おまけ お気に入りのトイレ

null

ドアの位置を変え、和室から入るスタイルを土間から入れるようにしたトイレ。なんてことないトイレなのですが、小さな木枠の小窓が気に入って家の中でも一番落ち着く場所です。

春になると窓辺のキブシが満開になり、黄色い藤のような花が見事です。

トイレの木枠の小窓
カチンという音がどこか懐かしいトグルスイッチ

次回は、我が家の冬のレモンの楽しみ方をお届けします。


【著者】

清土奈々子

階段100段を登った高台の一軒家「野ざらし荘」に夫と2歳の子と暮らす。編集・ライター、ギャラリー「野ざらし荘」運営、子ども向けワークショップのコーディネーター、絵描きのtoiとともにユニット「村のバザール」を組みライブイベントの企画やウェディング装飾、デザインワークなど行う。ミュージックビデオなど映像制作も。

youtube| https://www.youtube.com/channel/UCkAE6Jcy6oSlJxD2nUIu32Q    

webshop| nozarashisou.handcrafted.jp/

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載