教育現場や職場では「人を容姿で判断しないこと」「多様性を受け入れること」についての理解が進んでいると思います。ところが「どんな容姿を目指したいか」は、多様化するどころか、画一化が進んでいるのではないか、という問題を提起した本があります。
『美人までの階段1000段あってもう潰れそうだけどこのシートマスクを信じてる』(新潮社/エリース・ヒュー著)という本です。
多様化に逆行?画一化する「理想の美」を描いた一冊
nullどんな年代でも、理想の容姿に近づくために、何らかの努力をしたことがある人は多いと思います。しかし、今と昔の違うところは、SNSやさまざまなコンテンツを通じて、「これが美しさの正解だ」という、圧力がかつてなく高まっている点ではないでしょうか。

「美人」になるまでの階段は、果てしなく続く?
『美人までの階段1000段あってもう潰れそうだけどこのシートマスクを信じてる』の表紙より
さらに「医療技術と努力とお金によって、“理想の美しさ”を獲得できるかもしれない」「“理想の美しさ”を獲得すると、メリットがある」と駆り立てられる機会も増えています。
そうした状況は、日本だけでありません。お隣の韓国の若年層も、日本と類似の課題と、日本よりもさらに先鋭的な課題を抱えているようです。
アメリカのジャーナリスト、エリース・ヒュー氏の著書『美人までの階段1000段あってもうつぶれそうだけどこのシートマスクを信じてる』は、美容を起点に韓国の歴史や社会を掘り下げた一冊です。
「厳しい競争社会で勝つ手段」になっている美容
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著書のカバーのそでの部分より。韓国の美容意識にカルチャーショックを受けた場面。
著者のエリース・ヒュー氏から見た、若い女性を取り巻く韓国の美容事情の特徴は、「焦り」「不安」「義務感」を伴っているところです。
顏や体の欠点に気づいて「不安」を感じ、自分の容姿が理想の美しさから離れていることに「焦り」を覚え、欠点があるのなら修正しなければならないという「義務感」を駆り立てられる構造があります。
韓国の激しい競争社会を生き抜くため、自分を愛するため、良い仕事に就くため、異性との良縁を成就させるため……と、多方面から美容のメリットを喧伝され、多くの若い女性が「美しさを磨くことは、自己投資だ」というメッセージにさらされているとのことです。
個人同士の競争だけでなく、企業間の競争も激しい韓国。市場でサバイブするために、企業が消費者にコンプレックスを意識させ、次から次へと目新しい解決策を提示しながら、消費者の購買意欲を刺激しています。
「その“きれい”を目指す気持ちは、本当に自分の意志なのか?」を考える一冊
nullひるがえって日本においても、容姿のコンプレックスを刺激される機会に事欠くことはありません。
今回ご紹介した著書『美人までの階段1000段あってもうつぶれそうだけどこのシートマスクを信じてる』を通じて、周囲と同じような容姿を目指す同調圧力や、美容整形手術へのアクセスのしやすさなど、日本と韓国の類似点や相違点が見えてくると思います。
「美しさを“獲得”しなければならない」という気持ちは果たして自分の意志なのか、容姿のコンプレックスは自分の内面から生じたものなのか……。
そうした視点を取り入れることで、日常の美容に対する心構えは変わってくるのではないでしょうか。また、不安に煽られた美容や、競争に勝つための美容を脱し、自分や周囲の人たちの幸せについて再考するきっかけになるかもしれません。
育児中の方は、美容に関心が出てきた子どもと一緒に関心のある章を読んでみるのもおすすめです!

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