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日本人女性の11人に1人が患う「乳がん」。必要なのは周囲の理解と…【ピンクリボンデザイン大賞審査レポ】

今や日本人女性の11人に1人が患うといわれている、乳がん。怖いな……と感じた方も多いと思いますが、実は乳がんは、早期に発見すれば90%以上の人が治るといわれている病気でもあります。早期発見と定期的な検診、正しい知識が大事なのです。

そんな乳がん検診の大切さを伝える、「ピンクリボンフェスティバル(公益財団法人日本対がん協会ほか主催)」というイベントが毎年行われているのを知っていますか?

この「ピンクリボンフェスティバル」のイベントの一つとして行われているのが、乳がん検診の大切さを呼びかけるポスターとコピーを募集する「ピンクリボンデザイン大賞」。今年で15回目のイベントです。今回、乳がん患者の方々による審査の様子を見学できるということで、若年性乳がん体験者のための患者支援団体『Pink Ring』さんに、今回の審査の様子と、がん治療と家庭の両立についてうかがいました。

「ピンクリボンデザイン大賞」とは?

乳がんの正しい知識や早期発見の大切さを伝え、検診受診をよびかけることをテーマにしたポスターデザインとコピーを募集するイベントです。2005年から始まったこのイベントは、今年で15回目を迎えました。今年の応募総数は、18,805件。昨年より4,000件以上多くの作品が集まったとのことで、世間の関心の高さがうかがえます。

〈2018年のポスター部門グランプリ作品〉

〈2018年のコピー部門グランプリ作品〉

「女の勘は、誤診する。」

「がんの悩み」は多様で複雑化

日本対がん協会によると、乳がんに関する相談は、症状・副作用・後遺症や治療に関する悩みが多いことに加え、不安などの心の問題や、就労や経済面・人間関係など生活に根付いた相談、生き方や生きがいなど気の持ち方まで、多様で複雑化しています。

「がん相談ホットライン」に寄せられる乳がん相談データ(2019年1月~3月)

以前に比べ、症状や治療以外にも悩みが多様化・複雑化している要因について、日本対がん協会が、以下のように発表しています。

働きながらのがん治療が可能になり、職場・社会など広い人間関係の悩みが増加

乳がん罹患のピークは働き世代で、乳がん患者の約64%が就労を継続しているそうです(※)。

長期的な治療のために経済的にも治療と仕事を両立しなければならないケースも少なくありません。家族内から、職場・社会といった広い人間関係の悩みへ変化しているといえます。

※独立行政法人労働者健康福祉機構「がん罹患勤労者の就労に関する研究」

治療の長期化と、外見の変化のなさにより生じる悩み

死亡率が他のがんよりも低く、治療を終えてからの生活が長くなっています。ホルモン治療を510年継続する場合もあり、治療期間も長引く傾向にあります。

また、治療をしていても外見の変化がほとんど見られない場合もあり、まわりからは元気に見られてしまうこともあります。実際には更年期のような症状や目に見えない症状が出ていることもありますが、仕事を休むことやこまめに休憩を取ることがやる気のない人と思われるなど、心理的な苦痛もあるといいます。

職場や学校でがんを公表するか、という悩み

休職からの職場復帰、または新しい会社への就職の際に、がんを公表するかは必ず突き当たる問題です。公表したとしても同僚や上司にきちんと理解してもらえるか、偏見を持たれてしまうのではといった不安が付きまとうといいます。

さらに、お子さんがいる方は、通院時間の拘束があったり、体調が変化しても自分のペースで休みづらいなど負担が大きかったりするため、PTA役員などを断らざるを得ない場合もあります。その正当な理由として、がん治療をしていることを公表しなければならず、自分の子どもがいじめられないか心配といった悩みもあるそうです。

「乳がん体験者」が経験を活かして審査

このように乳がん患者には様々な悩みがあり、「言われるとショックなこと」「見て傷つくもの」など、体験者でないとわからない部分もあります。そこで、「ピンクリボンデザイン大賞」では、専門の審査員とは別に実際の患者さんの声を取り入れることによりネガティブチェックの審査が行われています。

審査では、引っかかるワードなどもあったようで、「乳がんになったからといって、幸せな生活が送れていないわけではない」「生きる、死ぬという目線で簡単に言ってほしくない」など、正直な意見を事務局側と交わす様子がみられました。

作品をじっくり見ながら考える皆さん。「若い方は検診よりセルフチェックが大事。みんながすぐ検診に行かなきゃ!と不安を煽らないものを」と言う声もありました。

作品にも「ピンクリボン運動」の広がりが反映され…

患者以外にも、家族や遺族など、いろいろな人の立場に立って、嫌な気持ちになったり傷ついたりしないような作品を選んでいるとのこと。体験者だから思うことを、審査にしっかり反映したいと答えてくださいました。

このコンテストがはじまった当初は、腐った果物の絵や胸が露わになった絵など、体験者の方が見たら悲しくなるような作品も多かったそうです。徐々にピンクリボン運動が広まり、応募する方も、乳がんという病気について事前に調べて作品を応募するようになったことで、作品にも変化が。

ピンクリボンフェスティバル運営事務局の里井愛さんは、「世の中の関心が高まった結果だと思う。デザイン大賞のグランプリ一つをとっても、毎年、意識的に前向きになれる作品を選んできたので、これからももっとその想いが伝わると嬉しい」と話します。「がんと共に生きていく世の中に。がんになっても自分らしく生きていける、そんな思いも届けたい」と、『Pink Ring』代表の御舩美絵さんも思いを語ってくださいました。

乳がん治療は、会社や家族の「協力とコミュニケーション」が大切

今回の審査に参加された『Pink Ring』の皆さんに、乳がん体験者だから話せる「仕事をしながらの乳がん治療と、家族」のお話をうかがいました。

「仕事しながらの治療」が心の支えになることも

先ほどにもあったように、乳がん罹患のピークは働き世代。仕事を続けるかどうかは、悩ましい問題だといえます。今回お話をうかがった方は、「会社に報告をして良かったと感じました。フレックスや時間有給の制度はありませんでしたが、治療中で体調が悪いときは少し遅くなってもいいよ、と言ってもらうなど、会社と仲間の理解と配慮のおかげでかなり助けられました」と体験談を語ってくださいました。

また、仕事をしながら治療できたことが心の支えになったとも。「家に一人でいると誰とも話せずに辛い時間を過ごすことになっていたと思いますが、働きながら、人とのつながりを感じながら治療できていることが心の支えになりました」と、周囲とのコミュニケーションが大事だと感じたと教えてくださいました。

大事な「家族とのコミュニケーション」

皆さん口をそろえて、「家族に大変だとちゃんと言うことが大事!」と言います。腕が上がりにくいから洗濯物の物干し竿の高さを変えてもらう、味が分からないときは料理を作ってもらう、買い物に行くのが辛いから食品宅配を頼んでOKにしてもらう、など。最初は辛い気持ちを家族に言っていいのかな?と考えていたそうですが、「辛いときに辛いという気持ちはちゃんと伝えたほうがいい。そうすれば手伝ってくれるし、助けてくれます」と、家族とのコミュニケーションの大切さを力強く語ってくださいました。

さらに、子育てしながら治療している方も多くいらっしゃいます。お子さんにも辛いことを伝えると分かってくれ、見守ってくれるそうです。今は、雑誌や本なども増えてきていますが、お子さんにお母さんはがんだということをどのように伝えるかということが、子育てしながらがん治療をする、最初の問題だといいます。

多様な悩みが発生している中、周囲の理解とコミュニケーションが重要な課題になっています。乳がんに関する正しい知識と、早期発見のための検診と定期的なセルフチェックで、乳がんを前向きに話題にしていくことが課題だとピンクリボンフェスティバル実行委員会は伝えています。

 

ピンクリボンフェスティバルでは、今年も9月~10月に、皆さんも参加できるイベントを実施します。正しい知識を学ぶことができ、ゲストや専門医のトークショーなども実施予定です。詳しくは、ピンクリボンフェスティバル2019公式サイトにてご確認ください。

 

【参考】

ピンクリボンフェスティバル2019公式サイト

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