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違いは国の審査の有無!「トクホ(特定保健用食品)」と「機能性表示食品」の違いを管理栄養士が解説します

健康食品やサプリメント、飲料などたくさんの製品に付けられている「機能性表示食品」の表示。似たものに「特定保健用食品(トクホ)」もありますが、この2つは似ているようで実は内容が大きく異なるんです。
それぞれの定義や違いについて、管理栄養士の宮崎 奈津季さんに教えてもらいました! 選ぶ際、買い物をする際の参考にしてくださいね。

機能性表示食品って?

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こんにちは、管理栄養士の宮崎 奈津季です。今年3月に大きな問題になった「紅麹」を含むサプリメントのニュースに関連して、機能性表示食品ってなんだっけ?と疑問に思われた人も多いのではないでしょうか。今回は、その内容について解説していきます。

機能性表示食品は消費者庁が表示を許可している

画像:消費者庁「機能性表示食品って何?」より

商品表示の例

「機能性表示食品」は、事業者側が食品の安全性と機能性に関するエビデンスなどの必要な事項を、販売前に消費者庁に届け出ることで機能性を表示できる食品です。

この制度ができる前は、機能性を表示することができたのは「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」のみでした。そこで機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者が自主的に正しい情報を得て選択できるようにという考えからはじまった制度です。

安全性のチェックはされているの?

機能性表示食品を販売するにあたり、事業者側は安全性の根拠を明確にしなければなりません

事業者は、以下のいずれかの方法で安全性をチェックしています。

・今まで広く食べられていたかどうかの食経験
・データベースの2次情報などを用いた情報収集
・最終製品または機能性に関与している成分において、動物や人を用いた安全性試験の実施

また、機能性に関与している成分と医薬品との相互作用の有無などについてもチェックしています。

機能性のチェックは?

機能性の根拠を明確にするには、以下のいずれかの方法で評価されています。

・最終製品を使った臨床試験の実施(トクホと同等の水準)
・最終製品または機能性に関与している成分に関する研究レビュー(システマティックレビュー)

※研究レビューとは、肯定的な結果だけではなく、否定的な結果も含めて評価する方法

これにより、「どのようなエビデンスに基づいて」「どんな人が」「どのように摂取すると」「どのような機能性があるのか」が明らかにされます。

さらに生産・製造、品質の管理や健康被害の情報収集の体制、適切な表示かどうかなどをまとめ消費者庁長官に届け出ます。その内容は消費者庁のウェブサイトで公開され、届出番号ごとに安全性や機能性の根拠などの情報を得ることが可能です。気になったものがあれば、チェックすると良いでしょう。届出番号はパッケージに表示されています。

特定保健用食品(トクホ)との違い

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国が許可した表示かどうか

機能性表示食品とよく間違えられるものの一つに、「特定保健用食品(トクホ)」があります。

共通しているのは、保健機能食品という分類に入っていること。両者とも機能性に関してはエビデンスがあります。しかし、異なっているのは、その認可の形態です。

商品の例

特定保健用食品(トクホ)は、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」などの表示が許可されている食品です。

安全性や有効性を消費者庁が個別に審査し、消費者庁長官の許可を得て表示ができます。一方、機能性表示食品は販売前に消費者庁長官の届け出を行って機能性を表示している食品であり、国では審査を行っていません。国の許可ではなく、事業者の責任において表示されているということです。

不足しがちな栄養を補給する「栄養機能食品」

商品の例

保健機能食品の中にはもう一つ「栄養機能食品」という種類があります。

栄養機能食品は、特定の栄養成分を補給するために利用される食品のことで、栄養成分の機能を表示しています。

現在、ビタミン13種類、ミネラル6種類、必須脂肪酸1種類の表示が認められています。条件としては、1日あたりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められている上限・下限値の範囲内であること、栄養成分の機能だけではなく注意喚起の表示が必要です。

この表示は事業者側の自己申告でできる表示となっており、個別の許可申請の必要はありません。また、「本品は、特定保健用食品(トクホ)とは異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」との表示が義務付けられています。

どう利用すればいい?気を付けたいこと

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機能性表示食品に限らず、健康食品はあくまで「食品」のひとつに過ぎません。医薬品とは異なるため、病気の治療や予防を目的として使うものではないということは十分に理解しておきましょう。

これらの健康食品だけをとっていれば、健康を維持できるわけではなく、あくまで重要なのは「バランスの取れた食事」「適度な運動」「十分な睡眠・休息」です。

機能性表示食品を手にとる前に、その商品や含まれている成分についてきちんと情報を収集し、自らが納得して使用することが大切です。機能性表示食品と上手に付き合っていきましょう。

【参考文献】

・消費者庁:「機能性表示食品について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/(閲覧日:2024年5月2日)

・消費者庁:「栄養機能食品について」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_nutrient_function_claims(閲覧日:2024年5月2日)

・消費者庁:「特定保健用食品について」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/(閲覧日:2024年5月2日)

・厚生労働省:「特保(特定保健用食品)とは?」e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-01-001.html(閲覧日:2024年5月2日)

・畝山千智子、大野智、千葉一敏:「健康食品・サプリメント 知りたいことガイドブック Q&Aでわかる正しい知識と選び方」、中央法規(2021)

宮崎 奈津季 
宮崎 奈津季 

管理栄養士・薬膳コーディネーター。介護食品メーカーで営業を2年間従事した後、フリーランスの管理栄養士に。料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。

HP:https://www.mnatsuki.com/

X:https://twitter.com/NatsukiMiyazak1

※「崎」は正式には立つ崎(たつさき)です

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