生活習慣病って?
null「生活習慣病」の範囲
こんにちは。管理栄養士の宮崎奈津季です。2月は「全国生活習慣病予防月間」。kufura世代の女性にはまだあまり実感はないかもしれませんが、油断は禁物です。この機会に、生活習慣病について学んでおきましょう。
「生活習慣病」とは、食事や運動、睡眠を含む休養、飲酒、喫煙などの生活習慣と深くかかわっており、それらが引き金となって発症する疾患の総称です。日本における死因の50%を占めるがんや心疾患、脳血管疾患は生活習慣病に含まれます。
生活習慣病の範囲や定義ははっきりと定められていませんが、健康増進法では「がん及び循環器病」、健康日本21では「がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等」と位置づけられています。
生活習慣病の範囲については、以下のような生活習慣と疾病の関連が明らかになっているものが含まれるとされています。生活習慣病を予防するためには、普段の生活習慣に気を付けることはもちろん、定期的に健康診断を受けることが大切です。
複数の要素からなる「メタボリックシンドローム」
生活習慣病の発症に大きく影響しているのが、「内臓脂肪型肥満」、別名「メタボリックシンドローム」です。
メタボリックシンドロームの診断基準は、内臓脂肪の蓄積に加えて、(1)高血圧、(2)脂質異常、(3)高血糖のうち、いずれか2つ以上が当てはまっている状態です。
生活習慣病には女性ホルモンの影響も
女性ホルモンであるエストロゲンは、動脈硬化や脂質異常、内臓脂肪の蓄積など生活習慣病の原因となる要素を抑制する働きがあり、健康維持に必要不可欠です。
40代以降の女性では閉経により女性ホルモンが大きく減少し、内臓脂肪の増加によってメタボリックシンドロームや生活習慣病へのリスクが高まることが知られています。特に、LDLコレステロールは女性ホルモンが減少により増加しやすくなり、動脈硬化性疾患のリスクが大きくなるとされています。
女性ホルモンの変化に伴う骨粗しょう症にも注意
エストロゲンは、骨の形成を促進し、古い骨を壊す作用を抑制します。40代以降ではエストロゲンの分泌が減少し、骨密度が低下して骨がもろくなってしまい、骨折のリスクが高まります。
女性は男性に比べて骨量が少なく、加齢とエストロゲンの減少が重なることで、50代以降は骨粗しょう症になりやすいといわれています。骨密度は、病院や自治体などで測定できることがあるので、定期的にチェックできると良いでしょう。
生活習慣病の予防と改善のポイント
nullまずは体重管理!
生活習慣病を予防するためには、適正体重の維持が重要です。
適正体重は、BMI(Body Mass Index)でチェックすることができ、以下の式で求めることができます。
【体重(kg)】÷【身長(m)の2乗】
例:身長155cm、体重50kgの場合・・・50÷(1.55×1.55)=約20.8
日本肥満学会の基準では、BMIが18.5未満だと「やせ」、18.5以上25未満だと「普通体重」、25以上だと「肥満」となります。25を超えると、生活習慣病のリスクが高まるため、注意しましょう。
急激な体重減少は健康リスクをもたらすため、無理のない範囲で減量し、リバウンドを防ぐことが大切です。目標として、3カ月で今の体重の3%程度を目安にすると良いでしょう。
定期的に体重を測定することで、体重のコントロールもしやすくなります。こまめに測定するといいですね。
食生活を見直そう!
生活習慣病の予防のためには、バランスの整った食事が必要不可欠です。
しかし、栄養バランスを自分で整えようとするとなかなか難しいですよね。やり方はいろいろありますが、おすすめは「一汁三菜」の考え方です。
主食:ごはん、パン、めん類など炭水化物が多いもの
主菜:魚介や肉、卵、大豆製品などたんぱく質が多いもの
副菜:野菜、きのこ、海藻などビタミンやミネラルが多いもの
汁物:みそ汁やスープを塩分に注意して1日1~2回程度。代わりに副菜1品でも良い
一汁三菜は和食の献立の基本ですが、洋食でも適応させることが可能です。メインのおかずの「主菜」、サブのおかずの「副菜」を2品、「主食」と「汁物」を組み合わせると、自然とバランスの整った献立になります。
また、朝食を抜いてしまうと、昼食や夕食で食べる量が増えがちになり、食後の血糖値が高くなりやすくなります。結果的に肥満や糖尿病などのリスクが高まってしまうのです。
さらに最近の研究では、朝食をとることはエネルギー代謝に関係することも分かっており、朝食を抜くとエネルギー消費量が減るといわれています。なるべく朝食をとるように生活習慣を整えていきましょう。
運動も忘れずに!
運動は、肥満を予防するのに有効な手段のひとつです。しかし、運動した方が良いと分かっていても時間がなかったり、習慣にできなかったりして挫折してしまう方も多いかもしれません。
まずは、今の生活習慣からプラス10分、体を動かす時間を作ってみましょう。電車で通勤されている方なら、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使うようにする。在宅勤務の方なら、休憩中にストレッチをする時間を作る。歯を磨きながらスクワットをしてみる。ちょっとしたことから始めてみればOKです。
しっかり運動したい方は、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。1日30分以上を目安にしてみてくださいね。
生活習慣病は自覚症状がほとんどありません。そのため、定期的に健康診断を受けて、今の自分の状態をチェックしておくことが大切です。日々の食事や運動、体重管理も含めて自分の体をきちんと整えていきましょう。
【参考文献】
・一般社団法人日本生活習慣病予防協会:毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」。https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2024/010748.php(閲覧日:2024年2月8日)
・厚生労働省 e-ヘルスネット:生活習慣病とは?
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-001.html(閲覧日:2024年2月8日)
・厚生労働省 e-ヘルスネット:メタボリックシンドロームの診断基準
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html(閲覧日:2024年2月8日)
・厚生労働省:生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性についてhttps://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/0812/1217-4.html(閲覧日:2024年2月8日)
・厚生労働省 働く女性の心とカラダの応援サイト:女性ホルモンとライフステージ
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/lifestage.html(閲覧日:2024年2月8日)
・厚生労働省 e-ヘルスネット:メタボリックシンドローム改善のための基本戦略
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・厚生労働省 e-ヘルスネット:BMI
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html(閲覧日:2024年2月14日)
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https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/policy/p-001.html(閲覧日:2024年2月14日)
・一般社団法人日本動脈硬化学会「動脈硬化性予防ガイドライン2022年版」:「第8章 女性」p184、2022年7月4日
・一般社団法人日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」:「第5章 肥満症の治療と管理」p51、2022年12月2日
・一般社団法人日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」:「第10章 肥満・肥満症の予防,保健指導」p158、2022年12月2日
・飯田薫子、寺本あい著「一生役立つ きちんとわかる栄養学」西東社(2019)
管理栄養士・薬膳コーディネーター。介護食品メーカーで営業を2年間従事した後、フリーランスの管理栄養士に。料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。
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※「崎」は正式には立つ崎(たつさき)です