「働く女性に増加中!溜めると怖い“睡眠負債”の返済法とは」でもお伝えした通り、理想の睡眠時間は、7時間半~8時間半といわれています。これはじつに1日の1/3にもなります。
「みなさんは、人生の1/3を寝具の上で過ごしています。そのため、快適な睡眠を得るために、寝具選びはとても大切」と、速水さんは話します。
寝具の種類は大きく分けて、“掛け布団”、“敷き布団”、“枕”の3つ。それぞれについて、選ぶポイントをお聞きしました。
ポイント1:「掛け布団」は室温に合わせて調節
nullはじめに伺ったのは、掛け布団について。
「掛け布団は、個人の体型に合わせて選ぶというよりも、季節によって使い分けるもの。洋服と一緒で布団も衣替えしましょう。
布団の中の理想的な温度・湿度は、年間を通して約33度・約50%と言われています。掛け布団は室温に合わせて、25度以上なら綿毛布やタオルケット、20度前後は羽毛の肌掛け布団、15度前後は羽毛の掛け布団、10度以下は羽毛の掛け布団+ウールやカシミヤの毛布など、室温に合わせて調節してください」(以下「」内、速水さん)
ポイント2:「敷き布団」は体へのフィット感を重視!
null自分の体に合っているかどうかで睡眠の質を大きく左右するのが、“敷き布団”と“枕”。この2つは自分に合ったものを選ぶ必要があります。
ではまず、良い敷き布団の条件とは?
(1)柔らかすぎない
立っている時の姿勢をそのまま横に倒した状態を保ってくれるのが、良い敷き布団。特に人の体は腰の部分が重く、腰とお尻を合わせた重さだけで全体の約44%の負荷がかかります。そのため柔らかすぎると、腰だけが沈んでしまい、キレイな寝姿勢を保てません。また寝返りも打ちづらく、睡眠の質を妨げる原因になることもあります。
(2)体圧が分散される
寝具に横になると、体の重みで、寝具から体に圧力がかかります。これを体圧といいます。
硬い床で眠ると体が痛くなりますよね。これは体の重い所にばかり圧力がかかり、体圧がうまく分散できていないからです。体の重みが分散されず、重い部分に圧力がかかってしまい、痛みやしびれに繋がります。また、腰部分などに隙間ができていると、その部分が支えられず、筋肉が緊張したままになります。
これではせっかく眠っているのに、余計疲れてしまいます。布団の上で寝ているのに、朝起きた時に体のどこかに痛みがある人は、うまく体圧が分散されていない可能性があります。
では、リラックスして眠るには、どのような敷き布団を選べばよいのでしょうか。
「人の体の凸凹に合わせて体圧を自然と分散させ、身体をしっかりと支えられる適度な硬さのマットレスがおすすめです。
柔らかくて体が沈み過ぎていないか、寝返りが打ちづらくないか、必ず店頭で試してみてください」
ポイント3:「枕」は“高さ”がいちばん大事!
null「寝具の中でもいちばん不満が大きいのが“枕”」と、速水さんは話します。なかなか自分に合った枕をみつけられず、“枕難民”になっている人も多いそう。
「枕選びでいちばん大事なのは“高さ”。枕が高すぎるとあごが下がって気道を塞いでしまいますし、首のしわの原因にもなります。逆に低すぎると口が開いて、いびきの原因に。
高すぎ低すぎ共に、首の後ろの筋肉が張った状態になって深く眠れず、肩こりや首こりを引き起こす可能性もあります」
では、選ぶ時のポイントは?
首の後ろの隙間がキレイに埋まる
仰向けに寝た時に、首の後ろの隙間をキレイに埋めてくれる高さがベスト。高すぎると首が持ち上がり、低すぎると首が反ってしまいます。この高さを自分で探すのは難しいので、店頭で頭〜首のラインを計測してもらうのがおすすめ。それに合わせて枕の高さを選ぶといいですね。
「背中に筋肉がついて肩周りががっしりしている男性は高めの枕、華奢な体型の女性や子供は低めの枕が合いやすいですね。きちんと計測をして、自分に合った枕をオーダーメイドすることもできますよ」
枕の高さが合っているかチェック!
nullまた、今使用している枕が合っているかどうかのチェック法を、速水さんが教えてくれました。
(1)枕の上で目線をチェック
寝たときに目線が下斜め45度くらいならOK! 目線がまっすぐ上の場合は、枕が低すぎる可能性が。
(2)枕と首の隙間をチェック
枕と首の間に手を入れて隙間が空いていないかどうかを確認。空いている場合は、枕が首にフィットしていません。
(3)翌朝起きた時の不快感をチェック
肩が痛い、首が痛いなどの痛みがある場合は、枕が合っていない可能性が。眠りが浅いなどの不快感がある人も枕の見直しが必要かもしれません。
寝具が睡眠を改善することは、科学的にも実証されている
null東京西川の研究機関・日本睡眠科学研究所と、筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史教授の共同研究によると、体圧分散性に優れた4層特殊立体構造マットレスと一般的なマットレスを比較したところ、前者のほうが体圧が分散されて肩や腰にかかる負担が軽減し、深い睡眠がより長く持続。睡眠の質が向上することを検証しました。
また、東京西川と同志社大学・アンチエイジングリサーチセンターの米井嘉一教授との共同研究では、眠りが浅いなど軽度睡眠障害を自覚している男女11名を対象に4層特殊立体構造マットレスを4週間使用したところ、成長ホルモン分泌量の増加、酸化ストレスの減少、善玉コレステロール値の上昇、睡眠の質改善などの効果が検証されています。
このように、科学的にも寝具によって睡眠の質が向上することが立証されています。早速、自分の寝具を見直して、ぐっすりと質の良い睡眠を手に入れてくださいね!
【取材協力】
東京西川(西川産業)
速水美智子・・・東京西川・日本睡眠科学研究所認定のスリープマスター。寝具選びのコンサルティング、快適な睡眠環境づくりのアドバイスを行う。眠りについての情報発信を行い、テレビ・雑誌・新聞などの取材対応を含む広報を担当する。
構成/kufura編集部