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働く女性に増加中!溜めると怖い「睡眠負債」の返済法とは

家事や育児、仕事に忙しい女性たちは、自分の睡眠時間を削りながら頑張っている人も多いはず。その結果、睡眠不足の状態を知らず知らずのうちに溜め込んでしまう“睡眠負債”に陥る人が増えているといいます。そこで、働く女性の“睡眠負債”を解消する方法を、『睡眠総合ケアクリニック代々木』の医師・柳原万里子先生に教えてもらいました。

64%が「睡眠不足」を実感!理想は8時間、現実は…

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『kufura』が20〜40代の既婚有職女性約200人に、「自分は睡眠不足だと感じるか」とアンケートをとったところ、64.4%の人が「睡眠不足だと感じる」と回答。実際の睡眠時間は「6時間」で、理想の睡眠時間は「8時間」がトップでした。

アンケート 睡眠不足
アンケート 睡眠時間
アンケート 睡眠時間 理想

さらに、睡眠不足の理由についての回答がこちら。

アンケート 睡眠不足

「あなたの睡眠不足の理由はなんですか?」と訊ねたところ、1位は「スマホ、パソコン、テレビなど」、2位は「趣味などを楽しむ時間をとるため」となりました。実は、忙しい中でも趣味の時間などを優先してしまい、夜更かしをしている人がたくさん!

こうした原因による睡眠不足を繰り返してしまうと、睡眠不足がどんどん溜まっていってしまい、慢性的な寝不足の状態、すなわち“睡眠負債”になってしまいます。

では、この“睡眠負債”はどのように解消したらよいのでしょうか?

6時間で大丈夫?女性の方が睡眠不足

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柳原先生は、「睡眠負債は自分で少しずつ返済するしかない」と話します。

「必要な睡眠時間には個人差がありますが、成人の場合、7時間半〜8時間半必要な人が約9割。5~6時間の睡眠時間で大丈夫なショートスリーパーはごく少数で、5%程度といわれています。大人にとっての理想の睡眠時間は8時間前後と考えましょう。

『NHK国民生活調査2015』によると、日本人の20代女性の平日の平均睡眠時間が7時間半近いのに対して、30代女性は約7時間、40代女性は約6時間半と短くなります。また20代女性の平日の平均睡眠時間が同年代の男性より10分ほど長いのに対して、30~40代女性では男性より10分ほど短くなっています。

20代女性と比べると、30~40代女性は睡眠時間が確保できておらず、さらに男性よりも睡眠不足になりやすいといえるでしょう」

理想の睡眠時間が8時間なのに対して、実際の睡眠時間は6時間ということは、そこには2時間分の“睡眠不足”があるということ。

その生活を続けていると、毎日2時間の睡眠不足が積み重なり、睡眠負債は雪だるま式に増えていくことに……。

寝不足だと肌はカサカサ、太りやすくなる!

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では、睡眠負債を抱えているとどのようなことが起こるのでしょうか?

「慢性的な睡眠不足の影響はメンタルに出やすく、鬱っぽくなることが知られています。また、免疫力が低下するため、よく風邪をひいたりお腹を壊したりするようになるなど、体調も悪くなりがちです。

睡眠には脳と身体を休めて修復する役割があります。睡眠中に多く分泌される成長ホルモンには新陳代謝を上げて傷ついた細胞を修復する作用があり、美肌にも関係しています。慢性的な睡眠不足でお肌が荒れた経験がある人も多いのではないでしょうか。

睡眠不足 肌荒れ 肥満

睡眠不足は肥満とも関係しています。食欲を抑えるホルモンが減り、食欲を増進するホルモンが増加します。加えて疲労感から運動量も減りがちで、起きている時間が長いと食べる機会も増えるため太りやすくなります。

他に、慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、心血管疾患などの生活習慣病とも関連しています。近年では癌や認知症との関連も明らかにされつつあります」

睡眠不足だとなんだか頭が働かなくて仕事が進まず、残業が続いてしまい、また睡眠時間が減ってしまう……という、負のスパイラルに陥りがち。仕事の効率も下がってしまう気が……。

「その通りです。慢性的な睡眠不足の状態では、本来はもっと効率よく仕事ができるはずなのに、睡眠不足の状態では自分の能力を十分に発揮できていない可能性があります。

睡眠時間を6時間に短縮して2週間過ごすと、1日徹夜をした翌日の昼間と同じくらい日中の判断能力や作業効率が落ちてしまうというデータがあります。しかも徹夜明けとは違って、自分ではその効率の低下や眠気を自覚しにくい。慢性的な睡眠不足を解消すると、想像以上に仕事がはかどるかもしれません」

“目覚まし時計をかけない日”を心がけよう

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睡眠不足 目覚まし時計

では、“睡眠負債”が溜まったら、どのように改善すればよいのでしょうか?

「睡眠負債とは睡眠の借金のようなもの。睡眠の貯金はできませんが、睡眠の借金を返済することはできます。“来週は忙しくなるから、今週はいっぱい眠っておこう”と思っても、睡眠時間が充分に足りていると自然と目が覚めてしまうため、原則として“寝貯め”はできません。しかし、睡眠不足の場合にはその反動で長時間眠り続けられます。つまり、溜まってしまった睡眠不足の借金を後から返済することは可能です。

睡眠負債を溜め過ぎないために、普段からコツコツ返済する日を作るように意識することが大切です。

たとえば、週末が休みの人の場合は、土日のどちらかは目覚まし時計をかけずに長く眠っても大丈夫な日を作るなど、睡眠負債を返済するためのスケジュールを考えてみましょう。

加えて、週の半ばの水曜日あたりに睡眠を優先する日を決めて、その日は早く帰宅できるよう予定を調整するのもおすすめです。曜日を決めると習慣化しやすく、当日の家事を簡略化する際にも家族の協力を得られやすくなりますよ」

睡眠負債 返済方法

どれくらい眠ればよいのか、自分に合った睡眠時間を知ることはできますか?

「まず、現在の睡眠時間で大丈夫なのかを考えましょう。長時間眠っていても大丈夫な日に、普段の睡眠時間よりも2時間以上長く眠ることができる場合には、睡眠不足が強く疑われます。日中の眠気や起床困難、倦怠感など、睡眠不足を疑わせる症状がある場合には、症状が生じる前の睡眠時間を振り返って、目安にするとよいでしょう。

アラームをかけなくてもいつもと同じ時間に自然に“気持ちよく”目が覚めるようであれば、今の睡眠時間が合っているのかもしれません。

自分に合った睡眠時間を見つけたい場合の具体的な方法として、国際的な成人の平均睡眠時間である “8時間”を基準に睡眠時間を延ばしてみるのはいかがでしょうか。8時間の睡眠で充分な場合には、8時間より早く自然に目が覚めるようになります。不足している場合はさらに30分、睡眠時間を延長しましょう。

ただし、慢性的な睡眠不足の状態では、その反動で最初の1週間くらいは本来必要な睡眠時間よりも長く眠れます。慢性的な睡眠不足は、睡眠時間を数日間だけ延ばしたくらいでは解消されません。2週間くらいは様子をみるつもりで取り組みましょう。

睡眠時間を充分に延長しても眠気などの症状が改善しない場合には、睡眠不足以外の睡眠疾患が隠れている可能性があります。専門医の受診をおすすめします」

 

睡眠負債は、溜め込みすぎないことが大事。忙しいとついつい睡眠時間を削ってしまいがちですが、“睡眠”もスケジュールに組み込んで、計画的に“返済”していくのが最も効果的なようです。

あなたも睡眠負債を溜め込んでいませんか? もし自覚があるのなら、今からぜひ“返済”の予定を立ててみてくださいね。


 

【取材協力】

柳原万里子

医学博士、日本睡眠学会睡眠医療認定医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医。睡眠総合ケアクリニック代々木に勤務。東京医科大学睡眠学講座客員講師。睡眠時無呼吸症候群をはじめ、概日リズム睡眠障害、中枢性過眠症、不眠症、睡眠関連運動障害などの睡眠障害全般に関して幅広く診療や臨床研究に従事している。共著『睡眠呼吸障害診断治療ガイドブック』(医歯薬出版株式会社)、『診断と治療のABC睡眠時無呼吸症候群』(最新医学社)など。

 

構成/kufura編集部

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