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「くにゃっと曲がる靴」「兄姉のおさがり」は避けたい理由!子ども靴の正しい選び方Q&A【靴のマイスターに聞く!#3】

どんどん足が大きくなり、頻繁に買い替える必要がある子ども靴。「どれくらいの頻度で買うべき?」「どういったものを選ぶといいの?」と悩んだことはないでしょうか。

医療靴の本場・ドイツで「整形外科靴マイスター」の資格を取得し、義肢装具士・靴職人として活躍する中井要介さんに、靴の履き方・選び方を教えていただくシリーズ【靴のマイスターに聞く!】第3回。今回は「子ども靴の買い方・選び方」について、Q&A形式でお届けします。

「子どもの足は成長の真っ只中。だからこそ、ポイントを押さえた靴選びをすることが、お子さんのこれからの足をつくる“未来への貯金”になります。お子さんが年をとってから困らないように、ぜひ今のうちから出来ることをしてあげてください」(以下「」内、中井さん)

Q1:「子ども靴は、どんなものを選んだらいいの?」

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こちらが本来の曲がり方。靴底全体ではなく、指の付け根部分だけが曲がります。
実際に歩いているときにも、足はこんな動きをしているんですね。

―まずは子ども靴の選び方のポイントについて教えてください。大人の靴の選び方については、前回の記事でうかがいましたね。

「子ども靴でも基本の考え方は同じです。足に合ったサイズで、かつ、ひもやマジックテープでしっかりホールドできるものを選びましょう。大人と同様、ひも靴がベストなことに変わりはありませんが、まだ小さくて自分で結べないうちはマジックテープ式で問題ありません。小学生くらいまでは、ほとんどの子がマジックテープ式ですよね」

―それ以外に、注意すべき点はありますか?

靴の選び方(画像提供:「マイスター靴工房 KAJIYA」)

「なかには、“力を加えると全体がくにゃっと曲がるような靴”もあるのですが、特に子どもが履く靴については、こういったやわらかいものは適していません。(大人が履く場合でも、推奨はできませんが……。)

それに対して、“靴底が足の指の付け根部分で曲がる靴”は歩くときの足の動きを適切にサポートしてくれます。

子どものうちは、足の骨格が形成されきっておらず、片足につき28個ある骨の多くがまだ軟骨なんです。それが硬い骨に変わっていくのは、中学生~高校生にかけて。

幼児期にやわらかい靴・サイズが合っていない靴を履くことで、足に負荷がかかってしまうと、本来の形で骨が形成できず、将来の足のトラブルに繋がってしまいます」

革はやわらかく、足への負担も少ないんだそう。こちらの靴はマジックテープが2つついているため、1つだけのものと比べて、よりしっかりホールドできます。

「また、キャラクターデザインのものなどに多い、ビニール製や合皮製の通気性が低い靴もできるだけ避けた方がいいでしょう。革製やメッシュ製と比べ蒸れやすく、水虫などの原因にもなります。

夏のレジャーなどでサンダルを履く場合には、足を固定するためのベルトがついた、かかとをしっかりホールドできるタイプを選ぶようにしてください」

Q2:「成長に合わせた、ベストな買い替え頻度は?」

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―子どもの場合、どんどん足が大きくなるので、どれくらいのペースで買い替えたらいいのか悩んでしまいます。

「小さい子どもは自分で“靴がきつくなった!”とは教えてくれません。そのため、大人が定期的にチェックしてあげる必要があります。できるだけ0.5cmごとに、新しいものを買うようにしてください。

本来、靴は何足か買って履き回す方が長持ちするのですが、子どもの場合はどちらにしてもサイズが小さくなっていってしまうので、そこまで気にする必要はありません」

インソールに足をのせ、かかとを合わせます。

「目安としては、取り出したインソール(中敷き)に足を重ねてかかとを合わせ、つま先部分が1~1.5cmほど余るのが適正サイズ。余りが0.5cm以下になっていたら買い替えどきです。ただし、子どもは無意識に足の指をぎゅっと曲げてしまっている場合があるのでご注意を。

しばらく履いた靴であれば、自然と足の形の跡がインソールにつくので、それを見て判断してもいいでしょう」

履いているとインソールに指の跡がつくので、それを見て判断することもできます。
なかには「指の先がこの線と線の間なら適正サイズだよ!」と教えてくれる親切なインソールも。

―サイズが合わない靴を履いていると、どんなリスクがあるのでしょうか。

「それぞれ、

・小さすぎる靴:“巻き爪”や“かがみ指”(足の指に負荷がかかるため)

・大きすぎる靴:“靴擦れ”や“扁平足”(適切な形で足を保持できないため)

といった症状に繋がります。

個人差はありますが、3才までは3カ月ごと、3才~小学生なら半年ごとを目安に、成長の様子を見ながら、0.5cmずつ大きい靴に買い替えていくとよいでしょう」

Q3:「兄姉のおさがりの靴を履かせるのはOK?」

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左が筆者の子どものファーストシューズ、右が3才のとき。びっくりするほど、すぐ小さくなっちゃうんですよね……。

―兄姉が履いていたがまだ綺麗な靴が残っている場合、おさがりとして弟や妹が履くのは問題ありませんか?

「子どもの足は成長が早く、大人と比べて同じ靴を履ける期間が短いので、おさがりとして使いたくなる気持ちはよくわかります。

たまにしか履いていなかった、新品に近い靴であればそれほど問題はありませんが、何度も履いた靴のおさがりを別の人が履くのはおすすめできません。

靴は履いている人の足の癖に合わせて変化し、形が変わったり靴底が一部削れたりするもの。そのため、おさがりを履くことで、前の持ち主の足の癖も一緒に引き継いでしまうことになるんです」

―子ども靴の話からは逸れますが、大人が中古の靴を購入して履く……というケースはいかがでしょうか。

「そうですね。大人であっても、中古の靴を購入して履くのはやはり足のトラブルに繋がりうるので、できるだけ避けた方がいいでしょう」

Q4:「速く走れる靴、ってどんなもの?」

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―各社から販売されている“速く走れる靴”、親としては気になる存在です。

「子どもたちにもとても人気が高いですよね。これらは運動会などで速く走るために履く分にはもちろん問題ないのですが、日常生活でずっと履き続けるのには、少し注意が必要な場合もあります」

―例えば『瞬足』(アキレス株式会社)は、左回りのトラック競技で転倒しづらくするため、あえて左右非対称なつくりになっていますね。

「それによって子どもたちがより速く、楽しく走れるようになるというメリットはもちろんあるのですが、履き続けるなかで靴底が削れていくことなども考えると、普段履くものとしてもう1つ、通常の左右対称な靴を持っておくのもいいかもしれません。

走る日はこの靴、それ以外の日はこの靴……というように、使い分けるといいのではないでしょうか」

―同じ『瞬足』ブランドでも、左右対称な『瞬足 足育シリーズ』もあります。目的によって、いくつかの靴を使い分けることで、靴が長持ちすることにも繋がりそうですね。

Q5:「子どもの足の成長のため、やった方がいいことは?」

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―その他、子どもの成長のためにやっておいた方がいいことはありますか?

裸足での遊びも、ぜひ積極的に!

「足裏には、たくさんの感覚受容器があります。そのため、自宅のほか、時には芝生・砂浜などで裸足で遊ぶのも、子どもの足の感覚を育てる大事な体験になります。

もう1つ、今回は買い方・選び方が中心でしたが、次回の記事でご紹介する“正しい靴の履き方”についても、ぜひお子さんと一緒に練習してみてください。子どものうちから癖をつけておくことで、大人になっても正しい履き方が持続しやすくなるはずです」

 

全5回のシリーズも今回で折り返し! 第4回は、「長持ちする靴の履き方」や「大人の靴の買い替えどきの見分け方」についてうかがいます。

 

撮影/五十嵐 美弥(小学館)


【中井さんおすすめの本】

『ぼくのくつ くつをただしくはくえほん』作、編集:あらいひろあき 他/絵:ないとうくみこ(ほむぎ出版・税込み1,650円)

「お子さん向けに、ストーリーを通してわかりやすく靴の履き方を教えてくれる絵本で、お子さんが正しい知識を身につけるのにぴったりです。

“小さいうちから正しい靴の履き方を身につけることで、少しでも靴や足で悩む人を減らしたい”という想いのもと、同志社大学の学生有志と大阪の『こどもとかぞくのくつ工房sprout』が共同で製作しています」

【教えてくれた人】

中井要介(なかいようすけ)さん

医療靴先進国であるドイツで9年間修業し、ドイツ国の職人最高職位であるドイツ整形外科靴マイスターを取得。ドイツ整形外科靴マイスターと、日本国内の義肢装具士資格の両方を取得した初の医療技術者であり、2016年からは「マイスター靴工房 KAJIYA」の代表取締役を務める。

現在も、経営と並行して義肢装具士・靴職人としての靴づくりを勢力的におこなっており、「足に問題を抱える方の可能性をひろげるような靴を提供し、一人でも多くの人を笑顔にする」という理念のもと、日々奮闘している。

「マイスター靴工房 KAJIYA」
(東京都・東久留米市/兵庫県・神戸市灘区)

編集部・関口
編集部・関口

音楽&絵本&甘いものが大好きな、一児の父。文具や猫もとても好き。子育てをするなかで、新しいコトやモノに出会えるのが最近の楽しみ。少女まんがや幼児雑誌の編集を経て、2022年秋から『kufura』に。3歳の息子は、シルバニアファミリーとプラレールを溺愛中。

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