基本の決め事なしでスタート!それが「ぺぱぷんたす」の本作り
null前回の連載では、2017 年に創刊した『ぺぱぷんたす』001号ができるまでの色々を、ご紹介しました。今回はさらに、001号の中身のお話です。
001号ではやりたいことがいっぱいありました。
通常、雑誌には“全部で何ページの本にするか”など、基本の仕組みがあり、それをもとに編集長が「台割(だいわり)」を作り、全ての企画をほぼフィックスしてからスタートします。「台割」というのは、本を作るときに、どこのページにどのような企画が入るのか、全体で何ページになるのかを、割りふった表のことです。
でも『ぺぱぷんたす』はゼロベース。アーティストの方と打ち合わせをしながら、必要なページや、紙や加工の有無を検討したり、進めていく中で仕様やページ数を変更したりするので、フレキシブルに対応できるよう、基本仕組みなし、台割なしの状態で進めていきました。
その企画にとっていちばんベストな、満足感のあるページに仕上げたいというこだわりからです。
そのため、一気に全ての企画をスタートするのではなく、ひとつひとつ、打ち合わせや取材を重ねていきました。手探りで進めていき、途中でバランスを考えて調整し、おおよそのパーツが集まったところで、パズルのように台割を作るので、台割ができあがるのは本当に製作の終盤という……なんとも特殊な作り方の本であります。
「せな けいこさん」に、登場してもらいたい!
null子どもの頃、せなけいこさんの『ねないこだれだ』(福音館書店)や『めがねうさぎ』(ポプラ社)が大好きだった私。おばけだからちょっぴりこわいのだけれど、なんだか友達みたいで、ついつい会いにいってしまう、そんな本(おばけ)でした。
今でも私が頭に思い描くおばけは、こわいだけじゃなくて、かわいいおばけ。間違いなく、せなけいこさんのおばけの影響だな、と思います。
そしてそれから何十年も経ち大人になった私は、再び『ねないこだれだ』を手に取り、自分の子どもを寝かしつけるために読んでいました。「こんな じかんに おきているのは だれだ?」「おばけの せかいへ とんでいけ〜」。
これが寝かしつけによく効いた!、と言いたいところですが、あれあれあれれ……。毎回声色を変えて読んでみるものの、逆にキャッキャと「おかーさんが、おばけになってとんでけ〜」なんて言ってはしゃぐ始末。結局寝かしつけ以外の時間に読むようになりました(笑)。
そんなふうに、子どもの頃からお世話になり、大人になってさらに思い入れ深くなったせなけいこさんの絵本は、よ〜くみると、「この柄、どこかで見たことがあるような?」「あ、この絵本のスカートと、この絵本のワンピース、おんなじ柄だ!」など色々な発見があります。
そう、せなけいこさんは紙を切って貼る手法で絵本を作られているのです。それも、身の回りの紙を使って!
ぜひとも、せなけいこさんにお会いして、子どもたちに、切り絵の作り方や身の回りの紙を使い何かを作る楽しさを教えていただきたいと思いました。
ご自宅へ伺ってみると…
nullその念願が叶い、2016年の冬、カメラマンの鍵岡龍門さんと、当時、ぺぱぷんたすの唯一の編集スタッフだったライターの柿本真希さんとドキドキしながらご自宅へ伺いました。
初めてお会いするせなけいこさんは、トレードマークのベレー帽をかぶって、緊張する私たちを優しく迎えてくださいました。「自由に見ていいですよ」と言われて上がった2階には、絵本制作に使うための紙が、驚くほどたくさんありました。
お菓子を包む紙、鯵の押し寿司の掛け紙、文房具や化粧品を入れた紙袋、そして封筒……。切り取られた後の紙もあり、この紙はどの絵本に使われたんだろう?と想像するだけでワクワク。中にはせなけいこさんの絵本でお馴染みの柄の紙もあって、「あ!これは『めがねうさぎ』の服の紙!」「あ、これは『ふうせんねこ』のワンピース!」と私たちは大興奮。
どの紙もレトロでたまらなく可愛らしく、今ではもう手に入らないような貴重な紙もたくさんありました。そうして、ひと通り撮影をさせていただいた後、お話を伺いました。