「できそうなこと」から始めて、できたら自分にごほうびを!
「達成感を得るためには、行動科学の本質でもある、3つのことを身につけていただきたいです。それは“スモールステップ”“スモールゴール”“ごほうび設定”です」と冨山さん。
ステップにゴールにごほうび? 何やら楽しそうだけど……?
「まずは、なりたい自分を思い描くことが必要です。次に、なりたい自分になるためにどうしたらいいか、“スモールステップ”で行動を区切ってみましょう。
自分ができそうなことから始めてもらうのが、すごく大事なことです。完璧な主婦になれないからやめた、両立ができないからやめた、のではなく、自分ができそうなことをまず設定してみるのが“スモールステップ“の考え方です」
うんうん、主婦業は、もうやめたいと思ったところで、なかなかやめられないし!
「例えば、本当はいつも子どもや旦那さんに手料理を作ってあげたいけれど、時間がないからスーパーでお弁当を買って夕食を済ませている。そのことに罪悪感を感じながら働いている方もいるかと思います。
まずは、寝る前にご飯を炊いておくだけでOKです。その習慣に慣れてしまえば、次のステップとして、日曜の夕刻にほうれん草のごまあえを一品だけ作り置きします。
それにも慣れれば、翌週は二品作り置きします。そのように、自分ができそうなことから始めることが大切です」
そう、完璧な食事は用意できないけど、それなら私にもできる! それが“スモールステップ”の考え方なんだ。
「1カ月続けられたら、“スモールゴール”として、日曜の午前中に美味しいブランチを食べに行く。それが“ごほうび設定”の考え方ですね。
ごほうびはなんでもいいのです。仕事の帰りにスーパーでプレミアムスイーツを買ってもいいし、お酒が好きな人はビールを買ってもいいでしょう。
子どもや部下を褒めることが上手でも、“自分を褒められる”女性は思いのほか少ないです。がんばった自分をねぎらうということが大事ですね」
たしかに、できない自分をけなすことはあっても、褒めることはめったにないかも。これからは意識して、自分に“小さなごほうび”をあげてみよう! なんだか楽しい気分になってきた。
「習慣」を味方につければ、燃え尽き症候群にならない!
働く主婦の“シゴト”はエンドレス。疲れすぎて何もする意欲がなくなってしまうことが時々ある。
「働く主婦のみなさんは、本当に凄く頑張ってしまうんですよね。すべて完璧な人間はいないので、ひとつだけでも、自分がなりたい自分になっていれば充分だと思います。
まずは、仕事・家事・育児の中で、自分が何を頑張りすぎてしまうのか、ひとつ選んで欲しいですね。
どうしても仕事を頑張りすぎて家事が中途半端になってしまい、モヤモヤするのであれば、仕事のやり方を見直しましょう。
家事を頑張りすぎてしまい、毎日のお弁当づくりが大変になってしまっているのなら、家事のやり方を見直しましょう。
子どものおけいこの送り迎えが大変になっているのであれば、育児のやり方を見直しましょう。
意識や根性、才能は一切関係ありません。いかにラクに、なりたい自分になるかが、行動科学が伝えたいことです。
なぜかというと、意識や根性に頼ると、途中で爆発してしまったり、燃え尽き症候群になってしまうから。
頑張りすぎてヘトヘトになっている状態は、まだ習慣になっていないということです。意識や根性で乗り越えている可能性があるので、生産的になるようにやり方を見直しましょう」
ドキリ。根性で乗り越えようとする自分もまだまだいる。アラフォー世代は、昭和のスパルタ教育で育っているからかな。そのままでは、真っ白な灰のように、燃え尽き症候群になる日も遠くないのかも。
小さな波をジャンプすると物事を肯定的に捉えられる!
ではどうしたら、やらないといけないことが山積みでも、パニックになることなく、習慣にできるのだろうか?
「物事を全体的に捉えないで、小分けして捉えるのは、認知のトレーニングのひとつです。そうすると意外と“乗り越えられそう”だと思えるのです。
大きな波だと溺れてしまいそうだけど、小さな波に小分けしてジャンプすれば、意外と簡単なんだと、不思議と肯定的に捉えることができます。ハードルを低くして始めの一歩を進めることが大事です。
やらないといけないことが山積みで、パニックになったときは、まず何をするべきかを書き出してみてください。それを見て、冷静に判断して、今日やらなくていいことがあったら消してください。
例えば、洗濯は明日やればいいと思ったら、矢印を引いて明日と書き込みます。すると、今やらないといけないことは意外と少ないことに気がつき、気持ちが落ち着くはずです。そうすることで感情的に行動することが避けられます。
働く女性はTODOリストを仕事で活用していると思います。そのスキルを家事育児でも活用してください。そうやってパニックになるのを防いで欲しいですね」
その日の夜、仕事帰りに100円ショップに寄り、ホワイドボートを買って帰った。冷蔵庫に貼り付けて、やらないといけない家事や育児を書き出してみた。
そして、今やらなくていいことは線を引いて消していく。頭の中がスッキリして、いつもよりサクサクと家事がはかどった気がした。
家事や育児を“シゴト”だと思うと辛くなるので、あえてTODOリストを作ろうとは思わなかったけど、吐き出せる場所があるだけでもずいぶん違うものだ。
これからは、爆発しそうになったら冷蔵庫の前に立って、ホワイトボードに向き合おう。まずはそれを、私の“スモールステップ”にしてみよう。
1カ月続けられたら、気になってたスイーツを“ごほうび”として子どもと一緒に食べに行こう!
※ 次回は、「働く主婦が“やらないこと“を決める方法」についてご紹介します。
構成・文/kufura編集部 人物撮影/横田紋子(小学館)