世界の各地域にベテラン記者が少ない
「日本の海外ニュースにとって不利な点は2つ考えらます。1つは、日本の多くの企業と同様に、日本の報道機関の記者は異動が多く、各支局、各地域のベテランが少ない点です。実質的に欧米発の情報を日本仕様にして記事化するしかなくなってしまうのです。これでは、読者を引き込むような深さと明快さの双方を併せ持った記事は生まれにくいのではないのでしょうか」
ためしに、今日の国際ニュースをチェックしてみよう。欧米の報道機関が情報元となっているニュースの多さに気づくだろう。
欧米を基準にした視点で書かれていることが多い
「2つめは、欧米発のニュースは、欧米を基準に書かれている、という点です。そこに日本人の視点が中途半端に混入するので、視点が定まらない記事になる可能性があります」
つまり、日本では、欧米発のニュースを日本語の記事にするのがメインとなっているが、ニュースそのものが欧米視点ということになる。ニュースの内容が日本人にとってわかりづらくなってしまうのも納得がいく。
ニュースを読み解くトレーニング方法
さらに、海外ニュースを読み解く力のつくトレーニング方法について、鶴見さんにうかがった。
「海外ニュースを読み解く上で、読者の側の取捨選択が重要になります。はじめから海外すべてを見ようとすると消化不良になってしまいますから、どこでもいいので1つの地域に絞ってしばらくそこのニュースや情報だけに意識を集中してみてはどうでしょうか。
そうすれば、自分のなかでその地域についての視野が少しずつ広がっていき、短いニュースが何を意味しているのかもわかるようになってきます。そのように定点観測することで、他の地域のニュースを読み解く勘も養われるかもしれません」
以上、国際ニュースがわかりにくいワケについてお届けしたが、いかがだろうか?
先日、ジャーナリストの北丸雄二氏が、ラジオ番組でこんなことを話していた。
「1つのニュースに対し、いろんな情報、いろんな見方が世界中にあふれている。しかし、日本の新聞やテレビからは得られる情報がとても少ない。日本に入ってくるべきニュースが、日本語でブロックされている。これは知的な鎖国に近い」
天気予報で雲の動きを見て雨具を準備するように、海の向こうで起こっていることが、日本にどんな影響をきたし、それに対しどう対応するべきかを、自分で情報を集め、考察していく力を養っておきたい。
【取材協力】
※ 鶴見太郎・・・埼玉大学教養学部准教授 専門は歴史社会学・ユダヤ研究
※ 北丸雄二・・・毎日新聞記者、中日新聞(東京新聞)ニューヨーク支局長を経て、現在はフリーランスとしてニューヨークでコラム、時事評論、芸術評論など多岐にわたって著述活動をしている
2014/8/11 BizLady掲載