目的はなくてOK
「“そうだ、今日は本屋に行こう!”とまるで服を買いに行くように本屋さんに“買い物”をしに行くような女性はおそらくいません。本屋さんに来る人というのは、ほとんどが偶然なのです」と、渡部さんは話す。
観光地化しているといっても過言ではない代官山の蔦屋書店でさえ「この本が欲しい!」という明確な目的を持って書店にやってくる人は少ないという。友人との待ち合わせだったり、「何か面白い本ないかな」とフラっとやってくる人の方が多いとのことだ。
そのようにしてフラっと入った書店では、“セレンディピティ”を起こす様々な仕掛けがなされているのをご存じだろうか?
仕掛けられた“嬉しい偶然”
「お客様の先回りをして偶然を仕掛けるのが私たちの仕事です。ただ本を置いている、いわゆる“陳列”しているだけではお客様に“ヒント”を見つけてもらえません。想像通りの場所に想像通りのものがあり、おおよそ見当がついてしまう状況は、感動もなく通過されるのが関の山です。
装丁や内容、ターゲット層、どういう人に読んで頂きたいかなど、上から下から表から裏から、多方面から本を見つめ、売り場に仕込んでいきます。スタートアップを考えている方には、イノベーターの本を。上司とうまくいかない部下のあなたには、質問力の磨き方を。全くアイディアが浮かばない時に、欲しかったヒントが手に入ると、水を得た魚のように、仕事がはかどったりすることもあるかもしれません」と、渡部さん。
書店には、思わず本を手にとってみたくなるような工夫が多くなされているということだ。
また、時にはコンシェルジュの方々に相談してみると、凝り固まった頭を解きほぐすような良書もお薦めしてくれるだろう。
あなたの脳が熱く“化学反応”を起こす本の選び方
『乱読のセレンディピティ』の著者で、御茶の水女子大学の外山滋比古名誉教授は、自分の好きなジャンルや得意分野をあえてはずして本を選ぶことをすすめている。自分にとっての“未知”の少ない想定内のことが書かれた本をあえて外して選ぶといいという。
<専門の本をいくら読んでも、知識は増すけれども、心をゆさぶられるような感動はまずない、といってよい。それに対して何気なく読んだ本に強く動かされるということもある。>
と著書の中で述べている。
次回、あなたが書店にいった際には、あえていつも足を踏み入れないコーナーに行き、書店員によって仕掛けられた“トラップ”にわざと引っかかってみよう。いつもファッション雑誌のコーナーで時間を費やすあなたは、ビジネス書コーナーで。自己啓発系が好きなあなたは、エッセイコーナーで。そこではあなたの脳がビリビリするような化学反応があるかもしれない。
以上、今回は“書店での運命の出会いを引き寄せるコツ”についてお届けしたがいかがだろうか?
読書の秋。欲しいものがなくても、書店に行ってみよう。今の仕事で悩んでいるあなたにとっての“ヒント”が偶然に手に入るかもしれない。
2014/10/01 BizLady掲載