「そんな仕事」と言われると純粋に傷ついたり、人の言葉に縛られたこともあった
――誇りを持って働いていても、例えば「どうせ誰にでもできる仕事でしょ」といったような、他人の価値観に苦しめられる女性はけっこう多いのではないだろうかと思います。AV女優という仕事も、一部の人たちから蔑みの対象として見ることがありますよね。紗倉さんはそういうとき、心の均衡どうとっていらっしゃいますか。
紗倉まな(以下、紗倉):働き始めた当初って、人からかけられた言葉を100%吸収しちゃうんじゃないかなって思います。私もそうで、例えば「そんな仕事してるなんて」と言われたとき、「私は誇りに思ってるけど、こんなことを言う人もいるんだ……」って純粋に傷ついて、悲しくなったり悩んだりしていました。
それでも、続けていると自分の誇りになるというか。続けることが、自分の仕事の重要さを立証しているようなものなんじゃないかって。
そして、だんだん慣れてくるじゃないですか、「そういう考えの人もいるな」と。そういう風に心をたくましくするためには、“やり続けることが大切”だと思いますね。
――やっぱり、憧れていた仕事の中でも挫折を感じたことはありますか?
紗倉:あります。「個人戦だ」と思って入った業界だったんですけど、やっぱり女の生きる世界というか……。スタッフさんは男性が多いですけど、戦うのは女の子しかいない。芸能人やタレント、モデルとは違って、この仕事は素っ裸で全部さらけだした状況で比べられたりする。女同士の戦いはこの世界にもあるんだなという感じで、ちょっと悩んだり葛藤のようなものがあったりしました。
偏見という壁が壊れたら、世界が広がる
――新刊『MANA~紗倉まなスタイルブック』の中では、AVへの“偏見という鉄製の分厚い壁”を、アイスピックくらいの小さい工具でほじくっているような気持ち……と書かれていますね。もし壁が崩れたらどんな景色があると思いますか?
紗倉:この仕事をしていて、インターネットやSNSでは自由に発言できる世の中になりましたが、一番大きなメディアであるテレビで何か意見を発信する位置には、私たちはまだいないのかな、と思うことが多いんです。
例えば肩書きだったら、「社会学者の○○さん」「タレントの○○さん」と並んでいたら、「AV女優」じゃなくて「セクシー女優の○○さん」という風に紹介されます。「AV」という単語が地上波に乗ることは少ないです。
もしも、そういう壁が1個壊れて、あんまり恥ずかしくないという風になって、「そういう仕事の人もいるもんね」という認識になれば、言葉を濁されたりすることもないし、自分の意見もいろんな人に知ってもらいやすくなる。そういう意味で、世界が広がるのかな、とはよく思いますね。
以上、紗倉まなさんが語る“周囲の仕事への偏見”との折り合いのつけ方でしたが、いかがでしょうか?
紗倉さんは、新刊の中で、“AV女優”という仕事についてもしかしたら身近な家族や恋人を傷つけてしまうこともあるかもしれず、罪深いことであるとしながら、
<自己表現の手段として、絵を描こうが文章を書こうが身体を酷使しようが、そこに本質的な価値の差異はないのではないでしょうか>
と述べています。
偏見の壁の向こうを見据えて、ラジオパーソナリティや執筆活動など様々な方法で自分を表現している紗倉さん。『MANA~紗倉まなスタイルブック』は、“働き女子”としての紗倉さんと、等身大の紗倉さんの魅力が満載です!
【書籍情報】
2017/3/4 BizLady掲載