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ジェーン・スーが語る仕事論「自分の良さは他人が見つけてくれる」もの

「今の仕事はやりたいことじゃない。もう辞めたほうがいいのかな」そんな悩みを抱える人は少なくないでしょう。とくにアラサーに差しかかると、「このままでいいのか」と不安になるものです。どう仕事と向き合えばいいのか、どこまで頑張るべきなのか……今回は、人気コラムニストのジェーン・スーさんに話を聞いてきました。

スーさんは、作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティなど多方面で活躍。ラジオ番組『ジェーン・スー 生活は踊る』(月曜〜金曜、TBSラジオ)にてパーソナリティをつとめるほか、新刊『今夜もカネで解決だ』(朝日新聞出版)や、原作を手掛けたコミック『未中年~四十路から先、思い描いたことがなかったもので。~』(新潮社)も話題になっています。

そんなスーさんの考える、仕事をするうえでの心構えとは?

やりたい仕事をしていなくても「自分はダメだ」と思わないで

——同年代の友人から「自分の望む仕事内容じゃなくてやる気が出ない……」という話を聞くことがあります。スーさんはフリーランスとして働く以前、新卒でレコード会社に入社されたときなどは、やりたい仕事ができましたか?

スー:レコード会社では自分の希望だった宣伝担当になれて、運がよかったと思います。ただ、宣伝の仕事をしているうちに制作にも興味が出て異動願いを出したんですけど、通りませんでした。辞めてから「営業の経験がないのは致命的だな」とも考えるようになりました。希望は叶っているけれど、全てが叶ったわけではなかった、という感じですね。

——やりたいことがない、やりたいことができていないと苦悩する人に、スーさんはどんなアドバイスをしますか。

スー:営業の仕事をしたほうがいいなというのはほかの業種で働いてみて改めて感じたことで、配属されてすぐにわかることではありませんでした。だから、焦らなくてもいいと思います。

既にやりたいことが明確で遠回りしたくないなら会社を辞めてもいいけど、希望する会社に入れなかったり部署に行けなかったりしたからといって「こんな状態じゃダメだ」と自分を責める必要はないと思います。

自分のやりたい仕事をやるための過程だ、ゴールに向かっている途中なんだと発想を転換してみるのはどうでしょうか。もちろん、仕事は生活のため、と割り切ってもいいし。それは悪いことではないです。

やりたいことより、得意なことを仕事にしよう

——スーさんはレコード会社を退職後、メガネ販売会社での商品企画などを経て、作詞家として活動したりネットにアップしていた文章をきっかけに雑誌でコラムを書くようになったりと、自分でキャリアを切り開いてきた方だという印象がありますが、いかがでしょうか。

スー:いろんな仕事をしましたが、どれも自分からと言い出したのではなく、信用できる人から「やってみたら?」と勧められて始めたんです。まさか自分がラジオのパーソナリティをするようになるなんて、想像もしていなかった。でも、声をかけてもらえたということは、やってみてもいいのかなって。

自分のやりたいことと得意なことは、イコールではないですよね。やりたいことを唯一の仕事にしてしまうと、それが得意ではないときにしんどくなります。得意なことを仕事にしたほうが、じつは風通しがよいんですよね。

信用できる人から、「あなたはこんな能力があるよ」「こんなことをしてみない?」と言われたら、鵜呑みにしてもいいと思います。もちろん、信用できない人の話に乗るのは危ないですけどね。

——「やってみれば?」と言われると、嬉しいと思いつつ「失敗したら恥ずかしいな」とか「お世辞を真に受けて、なんて思われないかな」と構えてしまいそうです。

スー:やるかやらないかは、私は「どっちのほうがおもしろいか?」という基準で選んじゃいます。生活に変化がないほうが幸せを感じやすい人もいるし、それはそれでいいことだけど、私は変化が好きなんです。

失敗したら……と考えないわけではないけれど、そこは年齢に応じて図太くなってきましたね。自分から言い出したわけじゃないし、うまくいかなくても紹介してくれた人の見込み違いだったんだ、と思えるくらいに(笑)。

30歳を超えたら素直さが大事!

——アラサーになると、新しいことを始めるときについ身構えてしまいますが、人から言われたこと素直に受け止めてやってみるのもひとつの手ということですね。

スー:嫌なことをはっきり主張しておくだけでなく、好きなもの、勧められたものに吸い寄せられていくことも大事かなと。

また、30歳をすぎたら、とにかく素直になることが大切だと思います。本来はただの性格ですが、いまはコミュニケーション能力が“資産”のようになっていると思うんです。もしコミュニケーション能力が高くない場合、それをカバーできるのが素直さなんじゃないでしょうか。

——コミュニケーション能力のひとつに「話を聞く力」がありますよね。スーさんはラジオでリスナーの相談にのっていますが、踏み込みすぎず、でも寄り添って聞いてくれる感じで、相談者との距離感が絶妙だなと思いました。相談にのるとき、どんなことに気を遣っていますか?

スー:物事を私の物差しで測って話すと相手を追い詰めてしまうから、適度な距離感で話すように心がけています。相談者さんが背中を押してほしいのか、止めてほしいのかを考えつつ、止めないといけないと思ったことはちゃんと止めて。

相談番組のパーソナリティを務めるようになって、他者の視点で物事を見る訓練ができたと思います。それまでは意見を押し付けてしまうことも多かったかもしれません。複数の視点を持つと、自分の気持ちもラクになります。

——そのほかに、相談にのるコツはありますか。

スー:相談内容が情報過多で混乱していることがあるので、まずは整理をすることですね。傷ついているのか、怒っているのか、悲しんでいるのか。話の中に色んな要素があるけど悩みの本質はどこなのかと探すようにしています。

——『ジェーン・スー 生活は踊る』(TBSラジオ)は、曜日によってお話するパートナー(アナウンサー)が異なりますよね。番組を聞いていると、スーさんだけじゃなく、パートナーの方も好きになってきました。

スー:それは嬉しいです。共演する方の魅力をリスナーに知ってほしい、という気持ちがあるので。

先ほど仕事のお話しをしたときに「勧められて」と言いましたが、良さって自分でみつけるものではなく、人がみつけてくれるものだと思うんです。「こういうところがいいよね」と言ってもらえたら、自分では意外なポイントだと感じても、他人から見るとそうなんだと受け入れて、行動に活かしてみると、いい結果に繋がるんじゃないでしょうか。

【新刊情報】

『今夜もカネで解決だ』(著:ジェーン・スー/朝日新聞出版)


『未中年』(原作:ジェーン・スー、漫画:ナナトエ/新潮社)

 

【番組情報】

※ TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』公式サイト

2017/5/23 BizLady掲載

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