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自分らしく働ける「マイキャリ」って?サイバー女子が明かす仕事術

女性活躍について盛んに議論されていますが、「どうも自分にはしっくりこない」と感じている人は少なくないのではないでしょうか。「活躍っていうか、普通に働きたいだけなんだけど……」と。普通に働くと言っても、人によって理想は異なるものです。「オンとオフをきっちり切り替えたい」「プライベートの経験を仕事に活かしたい」「楽しくなくてもいいからストレスフリーな仕事がいい」……さまざまな思いがあるでしょう。企業で働く女性たちは、どんなビジョンを抱いているのでしょうか? リアルな考え方を知るべく、今回はIT企業で働く女性に話を聞いてみました。

答えてくれたのは、株式会社サイバーエージェントの子会社である株式会社CyberZの鈴村唯さん。広告主にスマートフォンの広告営業を行うアカウントプランナーです。

鈴村さんは、入社一年目にして社内の最優秀新人賞を受賞し、1年目でリーダーに昇格したという、華々しい経歴の持ち主。そう聞くと「バリキャリじゃん!」と思うかもしれませんが、本人は「私はいたって普通女子です」と語ります。

お話をうかがっていくと、仕事一辺倒ではない普通女子だからこそ見つけだした、マイペースなキャリア=「マイキャリ」の積み方が見えてきました。

自分はとくに夢がない……同期に引け目を感じたことも

——鈴村さんは、なぜサイバーエージェントグループに入られたのでしょうか。

鈴村:年功序列で給料が上がっていく昔ながらの企業より、実力次第で若手でもいろんなチャレンジができる環境で働きたいなと思ったんです。自由で風通しのいい社風に惹かれて入社しました。

——同グループは、仕事への意欲が高いキラキラ女子が多い企業という印象がありますが、実際もそうですか?

鈴村:そうですね。同期たちの多くも新卒入社時から「●歳までに起業したい」「事業責任者になりたい」などの目標を掲げていて、私は大きな夢や野望がないので、ちょっと引け目を感じるくらいでした。仕事はがんばりたいけど、明確なビジョンを持っていなかった私にとって、確かにキラキラして見えました。けど、同じものを目指そうとも思わなくて。

――それでいて、最優秀新人賞を受賞されたんですよね。「大きな夢はなかった」とのことですが、何がモチベーションになったのでしょう?

鈴村:半期に一度開かれるグループ総会で、優秀社員がステージの上で表彰されるんです。照明などの演出はライブみたいに華やかで、それを見た新人たちは「自分もあそこに立ちたい!」と、みんな新人賞に憧れます。自分を育ててくれる上司への恩返しにもなりますし。

私のモチベーションのひとつは、結婚後も働きやすい環境を作りたいということでした。産前産後はどうしてもブランクができてしまうので、独身のうちに成果を残して、仕事でかかわる皆さんと信頼関係を気づかなきゃ、自分の市場価値を上げておかないと、という意識が入社当初からあって。復帰したときに、替えがきかない責任ある仕事をできるような環境を作りたかった。

そのためには、「●●なら、この人」というようなタグを自分に付けたほうがいい。最優秀新人賞を獲って“実力のある若手女性社員”というタグが手に入れるためにがんばりました。

——「人に勝ちたい」という気持ちではなく、自分が心地いい環境を作ることがモチベーションになったんですね。

鈴村:自分のやりたいように働くためには、まずは社内で存在感を出さないと……と思って。寝ても覚めてもというくらい仕事に打ち込みました。でも、入社半年後の総会ではノミネートすらされなくて、上司に付き合ってもらって朝まで泣き明かしました(笑)。ただ、その半年間で、大きな気づきを得たんです。

頭脳労働でも……男性と同じような働き方は体力的に無理

——どんなことに気づいたのでしょうか。

鈴村:肉体労働じゃなくても、やっぱり女性と男性では体力に大きな差があることです。直属の上司は男性で、新人賞を獲ったことがある人でした。だから、「上司と同じくらい働かなければ賞は獲れない、新人で仕事ができない分は量や時間でカバーしなければ」と思っていたんですが、上司と同じ働き方では体力がもたない。精神的にはもっとやりたいと思っているのに、体がついていかないんです。ただがむしゃらにタスクをこなすだけじゃだめなんだと気づいて、仕事のやり方を変えました。

——具体的には?

鈴村:仕事の“仕組み”を変えることにしました。自分に任された仕事は1から10まで全てひとりでやり遂げようとしていたのですが、それではキャパオーバーになってしまう。また、自分に何かあったら仕事がストップしてしまうので、企業にとっても損失ですよね。極論ですが、自分がいなくても仕事が回る仕組みが理想的だと考えて、工夫しました。

例えば、スケジュール管理。それまでは「締切はいつがいいですか?」と相手任せで組んでしまっていたんですが、ちゃんと2週間後くらいまで見通して予定を立てるようにしました。予定外の仕事を頼まれることもありましたが、そこはあえて引き受けて貸しを作り、自分がピンチになったときにお願いできる状態を作ったり。

——仕事に振り回されないシステムを作ったということですね。

鈴村:そうですね。数十ページの資料制作があったとしたら、全部ひとりで作るのではなく、ページごとに担当者を割り振って、クオリティチェックを自分でやるとか。“仕事を管理する”という意識が芽生えました。

休日に好きなことができるからこそ、仕事に打ち込める

鈴村:次にしたのは、オンとオフを分ける努力です。新卒からの半年間は土日も関係なく、いつも仕事のことで頭がいっぱいで、休みがあっても寝てばかりだったんです。

——社会人になりたてだと、ワークライフバランスを整えるのは難しいですよね。休日でも、頭のなかは仕事のことでいっぱい……なんてことにもなりがちです。

鈴村:はい。ずっと同じテンポで生活していたので、疲れもとれないし、モチベーションが下がることもありました。そこで、土日は仕事を忘れようと決めて、できるだけ外出して、意識的にリフレッシュするようにしました。すると平日も、「残った仕事は土日にやればいいや」という発想が一切なくなる。仕事の効率がよくなり、集中力も上がりました。仕事は好きだけど、休日に自分の好きなことをやれてこそ打ち込めるんだと実感しました。

——仕事の量が多いと、どうしても振り回されてしまう人もいますよね。鈴村さんは普段、どんなふうにコントロールしていますか。

鈴村:先ほども言いましたが、仕事上で貸し借りをすることですね。例えば、一緒に働いているママ社員がお子さんの体調が悪くて早退しなければいけないときは、その分、自分の役割じゃない仕事も率先して引き受け、スケジュール調整する。そのかわり、自分が何かあったらサポートをお願いするという、お互いに助けあえる働きやすい環境作りを心がけています。

「自分がやります!」だけでは真の意味で成長できない

鈴村:かと言って、「ただのいい人」にはなりすぎないようにしています。最初のころは、頼まれたこと、任されたことは何でも「やります!」と答えていましたが、自分のためにもならないし、そういう存在は組織にも求められていないと気づいたんです。

——仕事を断れず、ついつい引き受けてしまう女性も多いかと思いますが、きっぱり一線を引いたと。

鈴村:そうですね。ビジネスにおいて、自分の時間は貴重であることと、仕事は感情で動いてはならないんだ、ということに気づいて。仕事の役割分担の話もそうですが、仕事は個人プレーではなく、あくまでもチームプレーなので、組織として成果を出すことを徹底した日々でした。

自分で舵を切ることが、鈴村さんにとっての「マイキャリ」

——受賞の背景には、根本的な働き方を見直しがあったんですね。受賞後、環境はどう変わりましたか?

鈴村:ありがたいことに「若手女性といえば鈴村」と言われるようになって、それまで以上にさまざまな仕事にチャレンジできる機会が増えました。

——タグ付けに成功されたんですね。いろんな仕事をするなかで、どんなことが楽しいですか。また、これからキャリアを積んでいく上で大事にしたいことは?

鈴村:営業職なので、人が喜ぶことをするのが社内外を問わず好きですね。キャリア構築の上で大事にしているのは、自分で舵を切っていくこと。誰かに頼るのではなく、自分の手で充実させていきたいんです。

バリキャリ、ゆるキャリという言葉がありますけど、そのどちらかを選ばなくちゃいけないわけではないですよね。こういう働き方をしなくちゃならない、という決まりはない。私は、自分らしく働くマイキャリを目指しています。

新人賞をいただいたときのスピーチで「女性のロールモデルになりたい」と話したんですが、「鈴村さんみたいに、オンもオフも大事にする働き方なら、私もできるかも」と感じてもらえる存在になれたらいいな、と思っています。

2017/3/15 BizLady掲載

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