「完璧なタルト生地」を求めて
焼菓子好きのデルーカさんが、ニューヨークで美味しいフルーツペイストリーが見つからないと嘆いたのをきっかけに菓子作りを始めたHitomiさん。お菓子を焼いたことなんて数えるほどしかなく、知識も基礎もほとんどない彼女がいきなりタルトを作って、何度も何度も失敗を繰り返したと教えてくれました。
「お菓子作りを始めるなら作るものを1つに絞ってそれをまず100回作ってみたら?」とスパルタなアドバイスをデルーカさんからもらったHitomiさんは、タルト生地を極めることを決意し、来る日も来る日も夢中でタルトを焼いたそうです。まずは色んな情報を集め学びながら、小麦粉と油脂との割合を少しずつ変えて味比べをしたり、油脂にバターやショートニングなどを試したり、バターや小麦粉のメーカー別で比較もしました。
毎日タルトを焼き、下手をすれば出勤前と出勤後にそれぞれ1回、つまり1日2回焼くことも珍しくなく、課題だった100回はあっという間に過ぎ、Hitomiさんなりの「完璧なタルト生地」が出来上がったそうです。
タルト生地でパイは作れなかった
タルトが納得のいく出来に仕上がってから自然な流れで作り始めたのがアメリカン・パイ。
タルトと同様、フルーツなどのフィリングが入ったペイストリーなので、同じ要領で作ればいいのだと思っていたそうですが、それはもちろんそれは甘い考えだったようです。
フレンチ・タルトは繊細さが求められるのとは対照に、アメリカのパイといえば家庭的なお菓子。薄く使うタルト生地を、厚みを持たせて作るパイにそのまま使うと、硬くなりすぎる。バターの風味はちゃんと残しつつも、よりホロホロっとした食感を求め、試行錯誤を重ねたそうです。
また、タルトとパイの大きな違いといえば、上生地。もちろん例外もありますが、基本的にはフィリングを上下の生地で包むように焼くのがパイ。ラティス状などの模様を美しく見せるのもパイの大事な要素であり、そのために生地を寝かせる時間や、生地の扱い方にも注意を重ねたそうです。 そして代表的なアメリカン・パイといえば、もちろんアップルパイ。
「一見シンプルそうに見えますが、これも彼が納得のいくフィリング作りは一筋縄ではいかず、りんごの種類や切り方、合わせる材料などを変えて繰り返し焼きました。キャラメル味やバーボン味のアップルパイなども試しましたが、結局最後に行き着いたのは、この上なくクラシックなアップルパイでした」とHitomiさんは語ってくれました。こうして、デルーカ家のアップルパイが出来上がったそうです。
デルーカ家での美味しい食べ方
食べるときにはバニラのアイスクリームやホイップクリームなどと一緒にいただくのがアメリカでは一般的ですが、デルーカ家は、カットしたパイをトースターやオーブンでよく温めてから、液体のままの生クリームを少しだけかけて食べるのがおすすめだそう。
「我が家ではアップルパイだけでなく、季節毎の旬のフルーツを使ってさまざまなパイも作っており、作り続けるうちにパイの上生地のデザインも凝るようになりました。私の本業はデザインなので、こうして趣味のお菓子作りと仕事のデザインを重ねることができるのは、嬉しい限りです」と様々な素敵な上生地のデザインを見せてくれました。
「日本の皆さまに、我が家のアップルパイを楽しんでいただけることを願っています」