年々長くなっている平均寿命と平均余命…私たちの老後は今よりもさらに長生き?
風呂内さんによると、まずは日本人の平均寿命と平均余命をおさえておく必要があるそうです。
「セカンドライフ資金を考えるには、まず平均寿命と余命を把握しておきましょう。現在の平均寿命は男性80歳、女性87歳で、年々伸びています。平均寿命というのは、現在0歳の赤ちゃんが平均であと何年生きられるのかを計算しているものです。
一方、65歳まで生きた人があと何年生きられるのかという平均余命になると、さらにもう少し長くなります。現時点での65歳の平均余命は、男性は19.55歳、女性が24.38歳。つまり、89歳までは生きる可能性があることを念頭に老後資金を考えなければならないのです。
しかも、現在の65歳でこれだけ長いとなると、私たちがその年齢になる頃にはさらに平均余命が伸びているかもしれませんよね。『人生100年時代』と言われていますから、それくらい長生きした場合を想定して老後対策をした方がよいでしょう」
最低限の暮らしとゆとりある暮らしで、老後資金の算出方法は違う
次に、具体的な老後資金の算出方法を風呂内さんに教えていただきました。
「仮に89歳まで生きるとしたら、必要な生活費を概算する切り口はふたつ。ひとつ目は、最低限の暮らし。ふたつ目は、ゆとりある暮らしを希望する場合。定期的に外食や旅行などの趣味も楽しめるような暮らしです。
生命保険文化センターが行った意識調査によると、夫婦二人で老後の生活を送る場合、最低限の暮らしに必要と思われる額は月22万円、ゆとりある暮らしなら月34.9万円が必要という結果が出ています。
リタイアするのが60歳だとして、そこから89歳までの30年間で計算してみましょう。
最低限の暮らしだと7,920万円、ゆとりある暮らしなら1億2,564万円の資金が必要ということになります」
風呂内さんによると、上記の金額にさらに介護費と葬儀費をプラスした方がよりリアルな数値となるそうです。
「介護費が仮に月5万円で5年かかるとすると、5万円×5年×夫婦2人で600万円。葬儀費は平均200万円なので、200万円×夫婦2人で400万円。さらに、ゆとりある暮らしを望む場合は、ここに有料老人ホーム代2,400万円もプラス。介護費・葬儀費も合わせると計3,400万円が上記の老後生活費に加算されることになります」
老後はどれくらいのお金をもらえるの?
ここまでは老後の生活にかかる費用の目安を説明していただきましたが、ここからはもらえるお金の話です。上記の費用概算からもらえるお金を差し引いた数値が、自力で貯めなければいけない貯金額となります。
「厚生労働省の今年度データによると、夫の生涯収入の平均が月収43万程度だった場合、夫婦でもらえる金額は月22.1万円です。65歳から89歳までの期間で計算すると、総額は22.1万円×25年=6,630万円となります。
先ほど算出した必要資金からこの金額を差し引くと、最低限の暮らしで2,290万円、ゆとりある場合9,334万円の差額を自力で貯めておく必要があることになります。これは60歳でリタイアした場合の計算なので、65歳まで働いた場合だともう少し少なくて済むかもしれません。
しかも、これはあくまで概算値。実態はもう少しかかる可能性があります。総務省統計局が発表した『2016年家計調査報告 世帯主の年齢階級別家計支出』によると、実際にかかっている生活費は60代前半で月28.6万円、60代後半で月27万円、70代でようやく月24万円ほどになります。
これらはあくまでも平均の参考データなので、我が家の場合だったらどうかを自分で算出することも大切です。多くの人の場合、現役の時の生活費のだいたい7割くらいが目安となります」
老後資金の基本について風呂内さんにご解説いただきましたが、いかがでしょうか?
後編では、具体的にどのような対策をとればよいのかをお伝えします!
【参考】
※「生活保障に関する調査」/平成28年度 – 生命保険文化センター
※ 家計調査報告家計収支編 平成28年(2016年)平均速報結果の概要 – 総務省統計局
【取材協力】
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
風呂内 亜矢(ふろうち あや)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、一般社団法人みんなで作る良い行政サービス協会主任研究員。大手電機メーカー系SIer勤務を経て、2013年ファイナンシャルプランナーとして独立。現在はテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。著書に『その節約はキケンです—お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか—』(祥伝社)、『デキる女は「抜け目」ない』(あさ出版)、『図解でわかる! 投資信託』(秀和システム)等がある。公式サイト