確定申告が必要かどうかは「何を売ったか」がポイントに
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税理士の澤村さん曰く、確定申告をするかどうかを決める1つのポイントは、何を売ったかになるのだそうです。家の中にある不用品を売っていたならば、基本的に確定申告は必要ありません。
これらのものは「生活用資産」と言われるもの。これらをメルカリで販売することを「譲渡」と言いますが、譲渡で得た所得、つまり譲渡所得に関しては非課税になるからです。
生活用資産として考えられるのは、これまで使っていた洋服や雑貨、本、食器など、一般的に言われる「家で使っていたもの」です。メルカリユーザーの多くは家の中に眠っている不用品を出品していますから、生活用資産とみなされることが多くなります。
「生活用資産」の金額に注意
null生活用資産の中には例外があり、1組あるいは1個の販売価格が30万円を超えたら所得として認識する必要があります。例えば、昔買ったブランド品を売ったら40万円で売れた場合は、その年の所得とするのが基本的な考えです。
でもそのブランド品を買うためにはお金がかかっているはず。中古品になれば買った値段よりも販売価格が低くなることも多いですし、仮に価値が上がって買値よりも販売価格が高くなっても、買値は経費の扱いになります。仮に買値が10万円だったとしたら、40万円から10万円を引いて30万円が所得になるのです。
さらに譲渡所得には「特別控除」があります。これは所得から50万円を引ける制度。先ほどの30万円の所得から50万円を引くことができるので、結果的に譲渡所得はなくなり、確定申告の必要はありません。
ではいくらになったら確定申告が必要なのかというと、所得(売れた値段から、買った値段を引いたもの)が20万を超えた場合です。所得から特別控除の50万を引いても、なお20万円を超える譲渡所得がある場合、確定申告が必要になります。
ハンドメイド商品で利益を得ていたら?
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メルカリでハンドメイド商品を売っているユーザーも少なくありません。この場合は「事業性がある」とされて確定申告の必要性が出てきます。当然商品を作るための材料費、商品を送るための送料などは経費となりますが、利益が出ている以上申告をすることに。
ここで気になるのが、利益がいくら出たら申告になるのか? という点ですが、ここでも上記同様に所得20万円超が基準となります。つまり、売上金から経費を引いて20万円を超えたら確定申告をする必要があります。
ここまでで、ポイントのまとめをしておきましょう。
◾️メルカリで売ったものが生活用資産であれば譲渡所得となり非課税
◾️1個、あるいは1組の販売価格が30万円を超えると所得が発生するが、特別控除の50万円を引くことができる
◾️ハンドメイド商品の販売など事業性がある場合には、経費を引いて20万円を超える利益が出たら確定申告をする
夫の扶養に入っていた場合はどうなる?
nullメルカリユーザーの中には、夫の扶養に入っている人もいると思います。ここからは、夫の扶養に入っていてパートやアルバイトで働いている人を例にして確定申告の必要性について見ていきます。
アルバイト、パート等の収入がある人は年末調整をしています。年収103万円以下の場合は、年末調整が不要といわれることもありますが、年末調整は確定申告の代わりであるため、原則として、給与を受ける人全員が必要になります。
パートで働いている人は年末調整を受ける、受けないは自由。そして源泉所得税がなければ年末調整をしなくても結果は同じですが、103万円以下が不要という記述は、国税庁のQ&Aにも、年末調整を定めた所得税法第190条にも一切書かれていないのです。
俗説的に103万円以下は年末調整不要と言われることが多いですし、そのように認識されているケースは少なくありませんが、法律的な解釈でいうとそのようになっているとは言い難いです。厳密にいえば、年末調整を行わないと、基礎控除も受けられないことになります。
では、メルカリの売上がいくら以上になったら確定申告をするのでしょう。先ほどの20万円というラインは、特別控除や経費を引いて利益が20万円になったら確定申告をするという意味合いです。
これを逆に考えると、メルカリの売上-経費(所得)が70万円を超えると特別控除50万円を引いても確定申告をするラインである20万円を超えるので、申告をすることになります。
メルカリで利益を上げると夫の「控除」に影響する!?
null妻がメルカリで利益を得ている場合、夫の配偶者特別控除に影響が出る可能性があります。
「扶養」という言葉はよく耳にしますが、実は夫が配偶者控除という38万円の所得控除を受けるための「税法上の扶養」と、健康保険料、国民年金が免除される「社会保険上の扶養」の2つがあります。ここでは税法上の扶養について詳しくみていきましょう。
夫が配偶者控除を受けるためには、扶養に入っている妻の所得が48万円以下であることが条件になります。メルカリなどで得られる所得の場合、収入-経費-特別控除50万円が48万円以下になれば配偶者控除を受けることができるのです(ただし不用品などの生活用資産を売っているならば、配偶者控除を受けられない心配はありません)。
先ほどのハンドメイド商品の販売のように、人によっては48万円の所得を超えてしまうことがあるでしょうけれど、その場合でも所得133万円までは配偶者「特別」控除があります(配偶者特別控除は、夫の所得が900万円を超えると控除額に制限が出てくるので注意が必要)。
ということは、メルカリで事業性のある販売をしていても、利益が133万円以下であれば夫は配偶者特別控除を受けることができます。ただし配偶者特別控除は、妻の所得によって控除額が変化します。
国税庁:配偶者特別控除
確定申告をしなくても見つからない?
null確定申告をするとなったら所得を調べたり申告書の作成をしたりと、何かと手間がかかります。それに所得によっては夫の控除にも影響が出るので、申告をしないままでおきたい……と思ってしまう人もいるかもしれません。
たくさんの人が確定申告をするので、国税庁も全てをしっかりチェックできるかというと、それは難しい話ですし、申告しなくても見つけられない可能性もあります。でも、見つかったら大変です。
過去5年を遡って調べられ、未払い分には無申告加算税が課せられます。他にも延滞税もありますし、もし悪質だったと判断されると、重加算税といって、払うべき税金に30%上乗せされることもあるのです。後々これだけの税金が加算されてしまうと考えたら、きちんと支払っておいた方がよいといえるでしょう。
それに、国税庁に後からあれこれ言われ税金を支払うとなれば気分もよくありません。「一体いくら税金を払うんだろう」と不安な日々を過ごすくらいなら、最初から正直に申告をして、適切な税金を払った方が気持ち的にも楽だと思います。
今年のメルカリの使い方で注意したいこと
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夫の扶養に入らず、自身でビジネスとしてメルカリを使っているなら話は別ですが、夫の扶養に入っているならば、自分の納税額よりも夫の負担が増える可能性に注意を払う必要があります。
2025年度の確定申告に向けて、自身のメルカリでの収入はいくらが最適かを、専門家や夫ともよく話し合うとよさそうです。
税理士さんからのメッセージ
null納税は国民の義務であり、確定申告をやらなくてはいけない人は必ずすべきこと。申告書を作るのは手間ですし、税金を取られるのは嫌だなという気持ちは理解できますが、確定申告は自分のお金に国からのお墨付きをもらうための手続きともいえます。
せっかく努力して高収入を得たとしても、確定申告をしないで手元に残したお金は、いつ税務調査が入り、税額だけでなく加算税、延滞税などの罰金がとられるかわからない不安定なお金です。確定申告をし、適正な納税をすることで、手元に残ったお金は自分のために使ってもいい、安定したお金として取り扱うことができるのです。
税については色々な意見があるのは当然でしょうが、法治国家である日本に住むのであれば、税法に則って納税を行うルールは守っていかなければいけない。そういう気持ちが大切になってきます。

澤村 明浩(さわむら あきひろ)
税理士。関東信越税理士会氏家支部所属。真岡高校→静岡大学→栃木銀行(8年勤務)→前職である税理士事務所(7年9か月勤務)を経て、税理士として令和7年1月1日に独立。澤村明浩税理士事務所開業。

フリマアプリ・ネットオークションガイドとして、NHK「あさイチ」、フジテレビ「ノンストップ」などの情報番組に多数出演。『節約の達人 川崎さちえの ポイ活+クーポン+メルカリ スマホでおトク術』(インプレス)などの著書や、記事の執筆も手がける。
2003年、夫が子育てをするために、突然会社を辞める。翌月からの給料が0円になり、家にいながら、しかも空いた時間でできるオークションを開始する。ネットオークション歴20年以上、フリマアプリ歴10年以上の経験で培った独自の効率的な利用方法を発信し、オークションやフリマアプリの魅力を伝えている。