構想1年…「チキンラーメン」と「天ぷら」には意外な関係が!
null「チキンラーメン」を発明したのは、日清食品の創業者・安藤百福さんです。10月スタートのNHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』は、安藤百福とその妻・仁子の半生をモデルにした作品なので、これから耳にする機会が増えそうですね。
「大阪府池田市の自宅の裏庭に建てた研究小屋で、1年間、1日も休まずインスタントラーメンの開発に取り組んだそうです」(以下、「」内は内田さん)
なかでも、一番苦労したのが麺の保存方法について。麺を長期保存するにはどうやって乾燥させればよいのか。また、お湯を注いですぐ食べられるようにするにはどうすればよいのか。そして、それらの解決のきっかけとなったのが、妻・仁子さんのある行動です。
「ある日、奥さんが台所で夕食の天ぷらを揚げている様子を見て、ひらめいたんです。熱い油の中に入れられた小麦粉の衣は、てんぷら鍋の中で泡を立てながら水分をはじき出している。“天ぷらの原理を応用すればいいんだ! ”と、安藤は早速、麺を油で揚げてみました。
すると、麺の水分が高温の油ではじき出され、ほぼ完全に乾燥して長く保存できる状態に。さらにお湯を注ぐと水分の抜けた穴からお湯が吸収されて麺全体に浸透し、元のやわらかい状態に戻ったのです。こうして麺を油で揚げて乾燥させる“瞬間油熱乾燥法”にたどり着きました」
お湯を注いでたった3分で食べられる「チキンラーメン」は、当時の常識では考えられない食品だったため「魔法のラーメン」と呼ばれたそうです。
「チキンラーメン」名前の由来知ってる?
nullラーメンといえば、しょうゆ、味噌、豚骨など、いろいろな味がありますが、なぜ“チキン味”なのでしょうか?
「開発当時、安藤家では裏庭でニワトリを飼っていました。時々、食卓にもあがっていたのですが、息子の宏基(現・日清食品ホールディングス㈱代表取締役社長・CEO)は、あるきっかけから鶏肉が食べられなくなりました。
しかし、鶏ガラでとったスープでラーメンを作ると、おいしそうに食べていたといいます。そのとき、安藤百福は即席めんのスープをチキン味にしようというアイデアが浮かびました。考えてみれば、チキンのスープは、どこの国でも料理の基本であり、宗教の観点からもチキンを食べない国は世界中のどこにもなかったのです。安藤の選択は理にかなっていたのです。
また、当時、家族総出で作業をしていて、安藤百福は家族にものを頼むときに『チキンのスープを運んでくれ』などと、絶えず『チキン』『チキン』と叫んでいました。なので、のちに商品名が『チキンラーメン』に決まったのは、自然の成り行きでした」
麺は国産チキンを香辛料でじっくり煮込んだ濃縮スープと、有機丸大豆のしょうゆなどで味つけされているそうです。
なぜ麺の形は丸なの?
null発売当初は、麺の形は四角でした。
「1960年に自動包装機(麺をパッケージに包装する機械)が導入され、大量生産が始まりました。このタイミングで、どの向きからでも包装できる丸型に変更されました。現在、麺は直径10.5cmの丸型で、どんぶりにも収まりやすいサイズ。1個分の重量は85gで、これを湯もどしすると、2.5倍の約210gに。一般のラーメン屋さんのめんは200g前後なので、ちょうどよい分量です」
そして、麺の中心には黄身がすっぽり収まる“黄身ポケット”と白身が収まる“白身ポケット”の2段のくぼみが形成されています。
「チキンラーメンと卵の相性の良さは発売当時から広く認知されていたと思います。テレビCMでも、1970年から、たまごを入れる食べ方が登場しています」
長すぎても短すぎてもダメ!「3分」が美味しい理由
null「チキンラーメン」はお湯かけ3分、お鍋なら1分で食べられま
「1番おいしく食べられる時間が3分だからです! 3分間は長くもなく、短くもなく、ちょうどいい時間といわれています。1分で戻る麺も作ることができますが、麺が薄くなったり細くなったりしてしまい、のびやすい麺になってしまうのです」
チキンラーメンの麺は「ランダムウェーブ」といって、熱湯を注いだ時にほぐれやすいようになっているんだとか! どんぶりに収まりやすいサイズ感だったりと、細部まで食べやすさにも配慮されていますね。
次回は、「焼チキン」や「アクマのキムラー」など、進化する「チキンラーメン」の世界を紹介します!
文/鳥居優美