しつけの問題を先送りにしていると…
null子犬がいたずらを繰り返して留守番がうまくできなかったりしても、「大きくなれば自然に落ち着くだろう」と思いますよね。しかし2歳、3歳、5歳と年齢を重ねてもお困り行動が解決しないどころか、ますます問題が大きくなってしまうことも。
「悩みを先送りにして自然に解決することはほとんどありません。とはいえ家族が仕事や用事で家を空けるのは避けられませんよね。愛犬が留守番上手になれるように教えてあげましょう!」(以下「」内、北村さん)
犬の留守番の悩み1:いたずらをやめない
null「犬が家具やコードなどをかじるのは暇つぶしや遊び、ごみ箱をあさるのは食べ物探し。犬にとっては当たり前の行動で、叱られても悪いことだとは理解できません。反省しているように見えるポーズは、飼い主さんの怒りをやり過ごそうとしているだけ。その証拠に叱ってもいたずらを繰り返しているはずです。叱るよりも部屋を変えるほうが改善の効果あり!」
【いたずらをやめないときの対処法】
(1)ごみ箱の種類や置き場所を変える
ごみ箱をあされないようにするのがいちばん確実です。ごみ箱をふたつきに変える、犬が倒せない重量のあるステンレス製に変える、マグネット式に変えて高い位置につける、ごみ箱を置く部屋を決めてドアを閉める……など、犬と知恵比べのつもりで対策を。ゴミ箱以外もできるだけ片付けておきましょう。
(2)片付けられない家具には犬用の苦味しつけスプレーをかける
いたずらをされたくないものに市販の犬用の苦味しつけスプレーをかけます。
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乾くと効果が薄れるので、最初はこまめに吹きかけて湿らせておくのがポイント。出かける前にもシュッとひと吹きしておきます。
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シミになる可能性があるものには、食品用ラップやビニール袋で包んでから吹きかけるのも一案です。
(3)思い切りかじれるおもちゃを用意する
家具などの代わりに思い切りかじれるおもちゃを用意しましょう。手軽に買えるのは「コング」という丈夫なゴム製の知育玩具。ドッグフードをお湯でふやかしてやわらかくしてから中に詰めれば、夢中になってかじり続けます。留守番の時間が長い場合は、複数個を置いておくと長持ちします。
犬の留守番の悩み2:家を破壊する
null「椅子をかじるくらいのいたずらでは済まず、ドアに穴をあけたり壁紙を剥がしたりする犬もいますよね。ゴールデン・レトリーバーのような大型犬はもちろん、小・中型犬の柴犬やジャック・ラッセル・テリアもなかなかの破壊魔です。
やんちゃなタイプということもありますが、部屋をぐちゃぐちゃにするほど暴れる原因は運動不足かもしれません。散歩だけでは体力とストレスの発散には不十分なので、部屋や庭でできる遊びを取り入れましょう。『犬の留守番の悩み1』の対策と一緒に実践するのもおすすめ!」
【家を破壊するときの対処法】
「引っ張りっこ遊び」で効率よく体力を使わせる
長いロープのおもちゃを使った「引っ張りっこ遊び」で、犬を効率よく運動させましょう。獲物のように物陰からチラッと見せたり緩急をつけて動かしたりすると、狩猟本能がかき立てられて夢中になって遊びます。会社や学校に行く前の10分でも犬にとっては満足度の高い時間に。飼い主さんはあまり疲れなくて済むのもメリットです。
犬の留守番の悩み3:ひとりぼっちが心配
null「犬は家族や仲間と暮らしてきた動物なので、もともと留守番が苦手。とくにトイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドなどの小型犬は、ひとりぼっちの状況に不安を感じる“分離不安症”になりやすいのです。
留守中に限って吠えたり粗相したりする場合は、家族の不在がストレスなのかもしれません。家のドアや窓を集中して破壊する場合、家族の後を追って行こうとしている可能性も。対処法を紹介しますが、自力での対処が難しいと思ったら獣医師やドッグトレーナーに相談してくださいね」
【吠えや粗相が増えるときの対処法】
(1)コミュニケーションを兼ねた遊びで体力を使わせる
前項の「犬の留守番の悩み2」を参考に、家族が出かける前にコミュニケーションを兼ねた遊びでたっぷり運動させ、体力を使わせましょう。留守番が始まるころには心地よい疲労感でぐっすり寝ています。
(2)クレートで留守番させる
犬は身を守りやすい狭い場所を本能的に好むので、留守中はクレート(プラスチック製のハウス)がおすすめ。サイズは犬が中で立ったり寝たりできる大きさが目安です。
健康な成犬なら8時間くらいの留守番ができると思います。犬の睡眠時間は人間の約2倍なので、夜間と日中の留守番で8時間ずつ寝るくらいがちょうどいいのです。念のため飲み水は1日分より多めに用意してください。 8時間を超える場合は、クレートとトイレを置いたサークルの中で留守番させるのも一案です。
(3)クレートを使ったことがない場合は慣れる練習から
いきなりクレートに閉じ込めるとかえってストレスになります。犬が慣れていない場合は、クレートの扉を開けて自由に出入りできる状態で部屋に置き、なかでごはんを食べさせることから始めて少しずつ慣らしていきましょう。
いかがでしたか? 留守中のいたずらは、犬にとっても誤飲などの事故の危険があります。家族がいないときでも犬が安心して過ごせるように対処しましょう。
「そもそもどうして問題が起きるのかと言えば、違う種類の動物が一緒に暮らしているから。“人間”と“犬”で、姿形はもちろん習慣も何もかも違うので、不都合が起きるのは当たり前のこと。お困り行動の解決には飼い主さんが犬への理解を深めることが大切ですよ」
北村紋義 “ポチパパ”
ドッグメンタリスト(問題行動犬専門家)、ドッグスクールポチパパ代表。初めて迎えた犬の名前が「ポチ」だったことから“ポチパパ”という愛称で親しまれている。2012年から犬の保護活動をはじめ、多くの問題行動改善にも取り組む。犬と向き合う様子を配信するYouTube「ポチパパちゃんねる【保護犬達の楽園】」は、登録者数25万人を超える人気チャンネルになっている。
2023年6月1日に『ポチパパ流 犬のしつけ大全 お困り行動解決編』を発売。
ライター/編集者。レコード会社と出版社を経てフリーランスになり、雑誌、書籍、Webの制作を行う。得意分野はペット、防災、医療、PRなど。甲斐犬のサウザーとおもしろおかしく暮らす。愛玩動物飼養管理士1級/防災士/いけばな草月流師範。