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余命6カ月の夫は「家で死ぬ」ことを決めた。人気漫画家が綴る「幸せな死に方とは?」

漫画家の倉田真由美さんが、余命宣告された夫・叶井俊太郎さんを自宅で看取るまでを綴った物語『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』(小学館)。

すい臓がんで「余命6カ月」と宣告されながらも、その後1年9カ月生きた夫を倉田さんはどう支えたか? 生きる者の永遠のテーマでもある「幸せな死に方とは何か?」という問いに、光をくれる一冊です。

「家で死ぬ」ことを決めた夫と妻の640日間に渡る全記録

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著者の倉田真由美さん。2000年〜2013年まで週刊誌「SPA」(扶桑社)で連載された漫画『だめんず・うぉ〜か〜』が大ヒットし、「だめんず」という言葉は流行語にもなった。

2022年6月、夫がすい臓がんであることが発覚し、「もって半年、長くて1年」と余命宣告を受けた漫画家の倉田真由美さんは、最愛の夫が2024年2月に永眠するまでの記録をwebサイト『介護ポストセブン』で連載しています。

驚いたのは、日本では約半数の人が最期を「自宅で迎えたい」と望んでいるのに、7割近い人が病院で亡くなっているという現実。厚生労働省が作成した「諸外国の看取りデータ」によると、海外での在宅死亡率はスウェーデン51.0%、オランダ31.0%、フランス24.2%となっており、いずれも日本(13.4%)より高い結果になっているそうです。

日本では「家で死ぬ」ことが難しいとされるなか、夫の意志を尊重し、「家で看取る」ことを支え抜いた倉田さん。そのサポートは並大抵のものではありませんが、倉田さんは「夫が最期まで家にいてくれて本当によかったと何度も思います。こういう選択肢もあることを、ぜひ多くの人に知ってもらいたい。がんで余命半年と告げられても最期まで自分らしく生きた」と、綴っています。

最期まで大好きな「ファミチキ」を食べることができた

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夫の叶井さんの願いは、「痛いのは嫌」、「好きなものを食べたい」と、とてもシンプル。それゆえ、家族や医師と話し合い、抗がん剤などの標準治療は選ばず、対症療法の手術のみ受けることを決めます。

初めは「死ぬ時は病院で」と、叶井さんも倉田さんも考えていたそうですが、2023年9月、胆管のステント交換手術が1カ月間の長期入院になったことをきっかけに、叶井さんの考えは一変。

「自由がない」病院生活に嫌気がさし、「もう絶対に入院したくない。家がいい」と、最期まで家で過ごすことを決意します。叶井さんは、延命治療は希望せず、望んだことはひとつだけ。「家で最期を迎えること」でした。

人と関わることが大好きだった叶井さんは、亡くなる2週間前まで会社に行って好きな仕事を続け、大好物の「ファミチキ」や「カップ麺」を食べ、近所の書店やコンビニに倉田さんと手を繋いで出かけます。亡くなる前日もマグロやイカの刺身を食べ、シャワーを浴びて髪を洗い、髭を剃って寝るという、普段と何も変わらない1日だったそう。

倉田さんの記述によると、夫のことを綴った簡単な日記は、「半分くらい食べもののことで占められている」とのこと。その中でも、倉田さんは叶井さんが大好きだった「ファミチキ」のことが忘れられないと語っています。

 

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岸綾香
岸綾香

ライター&エディター。『女性セブン』(小学館)で約 20年、料理、家事、美容、旅、タレント取材など、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。『kufura』では2017年のローンチより、料理やヨガなどを中心に動画記事を350本以上作成。好きなものは絵本、美術館、音楽フェス、自転車。週刊誌で鍛えられた体力&根性で 40代から子育て奮闘中。

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